2月5日にアメリカ・ラスベガスで「UFC Fight Night:Lewis vs. Spivac」が行われた。同大会では、UFCファイターである平良達郎と木下憂朔、そしてROAD TO UFCバンタム級決勝戦で風間敏臣と中村倫也の日本人ファイター計4名が出場した。
今回の記事では、「平良達郎(12勝0敗) vs. ヘスス・アギラー(8勝1敗)」と「風間敏臣(10勝2敗) vs. 中村倫也(6勝0敗)」の試合を振り返り、2試合に観られた共通性を探っていこう。キーとなったのは、“スタートダッシュ”だ。
フライ級「平良達郎(12勝0敗) vs. ヘスス・アギラー(8勝1敗)」
まずは、「平良達郎 vs. ヘスス・アギラー」の一戦から。
プレリムの第一試合では、UFC3戦目を迎える平良達郎が登場。対するは、ギロチンチョークを得意とするヘスス・アギラーで、これが UFCデビュー戦だ。オッズでは、MMA12戦全勝の平良が圧倒的フェイバリッド。
試合は開始早々、アギラーの力のこもったカーフキックが平良の左足にヒット。平良はバランスを崩し、マットに手をつくと、ここをチャンスとみたアギラーが一気に距離を詰め、平良をケージ際へ追い込む。逃げ場を失った平良は、タックルに入って組み付くが。ここでアギラーが待っていましたと言わんばかりにギロチンチョークをセット。平良の首は、完全にアギラーの腕に入った。ただ、平良は、アギラーのガードの中には入っておらず、完璧なギロチンの体勢にはなっていなかった。平良はそこから冷静にギロチンを解き、マウントポジションに移行すると、流れるように三角絞めからアームバーを極め、試合を終わらせた。
ただ、アギラーのいきなりの攻めとギロチンについて、平良は「ギロチンで抱えられてびっくりしちゃいました」と素直に語っている。
アギラーに速攻で得意な形まで持っていかれそうになった平良だったが、冷静な対処で自分のペースに戻していき、見事な一本勝利でUFC3連勝を飾った。
RTUバンタム級決勝「風間敏臣(10勝2敗) vs. 中村倫也(6勝0敗)」
次は、「風間敏臣 vs. 中村倫也」のUFC契約をかけた大一番を振り返ろう。
風間は、PANCRASEを中心に活躍し、多彩な寝技で相手を極めるグラップラー。対する中村は、U-23で世界を制したレスリング力を持ちながら、打撃でもKOを量産するレスリングと寝技のハイブリッドファイター。試合前のオッズでは、中村が1.2倍、風間4.5倍と、中村が圧倒的フェイバリッドだった。
試合前インタビューでは、風間が「始まる前から空気感っていうのでどっちが先を取るかで、まず自分が取りたいと思ってます」と語り、どちらが先に試合のペースを握るかをポイントにあげた。(風間の試合前インタビューに関する記事はこちら→風間敏臣がRTUバンタム級決勝前に心境を語る ー“モノが違う男”中村倫也を超えられるかー)
試合は、わずか30秒で決した。
試合開始早々、風間が中村にプレッシャーをかけ、ケージ際に下がらせる。中村は、下がりながらも左のパンチや左ハイキックで風間を牽制。それでも、風間は、一切圧力を弱めず距離を詰めたが、ここで中村の右フックが風間にヒット。風間はフラッシュダウンのような形で尻もちをついたがすぐに立ち上がる。ただ、最初のような圧力は弱まり、中村のパンチを被弾。最後は、中村の左ストレートが顎を撃ち抜き、風間が大の字にダウンして試合が終わった。
いきなりプレッシャーをかけていった風間だったが、中村は怯むことなく的確に打撃を当て、風間のペースにさせなかった。確かに、風間が試合前に語った「空気感」で言えば、いきなり距離を詰めた風間に試合の流れが傾いたかのように見えた。しかし、試合の主導権を握ったのは、風間の動きにしっかり打撃を合わせた中村だった。
“PERFORMANCE OF THE NIGHT”に選ばれた2試合の共通性とは?
この2試合のフィニッシュは、サブミッションとKOでまったく異なるものの、試合展開としては共通性があった。それは、アギラーと風間が、見合う展開をほとんど作らず、自分から一気に距離を詰め、試合の主導権を取りに行ったことだろう。このような試合は、相手に考える暇を与えず即座に相手を飲み込む場合もあるが、冷静に対処され、流れが止まった場合、一気に逆転される恐れがある。
アギラーは、ギロチンのセットまでは良かったものの、極めきれず平良にギロチンを解除されると、そこからマウントに移行され逆転されてしまった。風間の場合も、一気に距離を詰め流れを作ったかに見えた。しかし、風間がフラッシュダウンしてプレッシャーが弱まると、中村に主導権が渡りそのまま試合を決められてしまった。
以上の2試合は、同大会のパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトに選ばれ、平良と中村には5万ドル(約660万円)のボーナスが与えられた。
この2試合がパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトに選ばれた所以は、勝者と敗者がともに見せ場をつくり、目が離せない展開を作ったことにあるかもしれない。
今後も、日本人選手がUFCの舞台で輝く姿に期待しよう。
※アイキャッチはUFC Japan公式Twitterより引用