「堀口恭司以来の倒せるフライ級」。それほどの逸材が伊藤裕樹である。
伊藤は、ボクシング仕込みの鋭い打撃で軽量級ながらKOを連発している。常に攻め続け、KOを狙う伊藤のファイトスタイルは観ているものをヒリヒリさせ決して飽きさせない。それもそのはずで、伊藤のフィニッシュ率は70%超えと、フライ級随一である。
今回は、そんな伊藤裕樹を徹底解剖し、彼を丸裸にしていこう。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
伊藤裕樹のプロフィール
名前 :伊藤裕樹
生年月日 :1997年4月17日
出身地 :愛知県 名古屋市
身長 :169cm
体重 :57.0kg
戦績 :14戦 11勝(6KO 2本) 3敗
階級 :フライ級
所属 :ネックス
獲得タイトル :初代THE OUTSIDER 50-55kg級王者
入場曲 :「IRON HORSE -No Mark-」
バックボーン :レスリング
公式HP :ー
Twitter :@yuki_mma
Instagram :yuki _mma
YouTube :ー
アパレル :ー
ファンクラブ :ー
今年でまだ25歳と伸び盛りの伊藤裕樹。前戦では、RIZIN沖縄大会で宮城友一と対戦し、2ラウンドTKO勝ちで圧勝。2022年もDEEPとRIZINですでに3試合行っており、DEEPフライ級グランプリへの参戦も決定している。
ハイペースで試合をこなす伊藤だが、その強さはいったいどこにあるのだろうか? まずは、彼の格闘技を始めるきっかけから見ていこう。
ボクシングとの出会いとアウトサイダー時代
ボクシングからアウトサイダーへ
伊藤が最初に始めた格闘技はボクシングだ。伊藤は小学校4年から中学3年までボクシングに打ち込み、第2回全日本幼年ボクシング大会で優勝するほどの実績を持つ。
高校に進学後は、ボクシングではなくMMAの練習を開始。MMAを始めたきっかけは、アウトサイダーにも出ている後輩の力丸選手に「一緒にやってみたらどう?」と誘われたことだ。そして、THE OUTSIDERへの出場が決定。アウトサイダーは、朝倉兄弟や金太郎を輩出したセミプロ団体で、各地の不良たちが荒々しい戦いでしのぎを削っている。
才能開花! 怒涛の連勝街道
伊藤は2016年に19歳でアウトサイダーデビューを飾る。初戦は、2ラウンドにTKO勝利で見事にアウトサイダーデビューを飾った。その後、50-55kg級初代王者決定トーナメントに参戦し、1回戦から順調に勝ち上がり、決勝にまで駒を進めた。決勝戦では、松元仁志を相手に1ラウンド54秒の秒殺KO劇を見せてトーナメント優勝果たし、弱冠19歳で初代THE OUTSIDER 50-55kg級王者に輝いた!
その後、伊藤は2018年までアウトサイダーで戦い、全戦全勝で戦いの場をDEEPに移した。DEEP参戦後も、負け知らずの伊藤はDEEP2連勝で藤田大和(当時、2勝2敗)と対決。藤田は、ボクシングアマチュア5冠を達成したボクシングエリート。MMA初戦では、あの“神童”こと那須川天心と対戦。また、後にDEEPフライ級暫定王者にまで駆け上がる。
試合は、1ラウンド終盤に伊藤がリアネイキッドチョークを極めて一本勝ち。これで伊藤は、アウトサイダーデビュー以降、怒涛の12連勝を飾り無敗をキープした!
プロ初黒星
12連勝中の伊藤は、2019年12月のDEEPで鮎田直人と対戦。打撃で攻めたい伊藤だったが、鮎田がうまく伊藤をゲージに押し込み試合をコントロール。終始グランドで支配された伊藤は、見せ場をつくれず判定負けでプロ初黒星を喫した。
RIZINデビューへ
衝撃! 秒殺のデビュー戦
初黒星から約1年3ヶ月後の2021年3月、伊藤の次なる舞台は日本最高峰のRIZINに決まった。対戦相手は、杉山廣平(当時、10勝5敗)に決定。杉山は、パンクラス9位につける実力者だ。
伊藤は、初の大舞台で朝倉兄弟や金太郎のようなアウトサイダーの先輩に続けるか?
試合は衝撃的なものとなった。
杉山が不用意に蹴りを出してバランスを崩すと、それを見逃さなかった伊藤が瞬時に距離をつめ、左ストレートを炸裂。杉山は腰から崩れ落ち、伊藤が追撃に行ったところレフェリーストップとなった。
伊藤はわずか33秒で杉山を葬り、RIZINデビュー戦初勝利を飾った。
DEEPで悲願のタイトルマッチへ
その後、DEEPに戻った伊藤は、2021年9月に藤田大和とのDEEPフライ級暫定タイトルマッチが決定。伊藤は藤田を2年前にリアネイキッドチョークで退けている。しかし、藤田は伊藤戦での敗戦以降は、破竹の5連勝をあげ暫定王者のベルトを手にしていた。藤田は、伊藤と対戦した頃はボクシングを活かしたストライカーだったが、近年はグラップラーにひけを取らないほどのグラウンド技術を身につけている。
伊藤は、「今回、DEEPフライ級タイトルマッチ、2年前の続きということで、もう1回絞め落として僕がチャンピオンになります」と豪語。対する藤田も「今回、初めてのメインということで、しっかりと気合が入って頑張ってきました。リベンジマッチですけど、いつも通りしっかりぶっ倒しに行きます」と闘志を燃やした。
伊藤は、藤田を返り討ちにしベルトを巻くことはできるのだろうか? この試合は予想外の大接戦となった。
1ラウンドは互いに打撃を当てる展開に。伊藤は得意の左ストレートを狙い、藤田はローキックを散らす。その後は、テイクダウンを許した伊藤だったが、立ち上がり左のパンチを出す。最終ラウンドは、伊藤もテイクダウンを仕掛け、藤田に背中をつけさせる。藤田は立ち上がると、今度は伊藤をテイクダウン。終了のゴングと同時に死力を尽くした両者は疲れ果てた様子でリングに崩れた。両者一歩も譲らない攻防となったタイトルマッチは判定へ。
5ジャッジ制となったタイトルマッチの結果は、2-3の僅差で伊藤の判定負け。伊藤の初のタイトル戴冠はならなかった。しかし、2人の実力は拮抗し、どちらが勝ってもおかしくなかった。
ここから伊藤は白星を重ね再び、タイトルに挑戦することはできるのだろうか?
“曲者”ナニワ男児とのワンマッチへ
敗戦からわずか1ヶ月後の2021年10月、伊藤の復帰戦がRIZINで決定した。対戦相手は中村優作(当時、16勝6敗)。中村は、日本拳法出身で、DEEPやDREAMでも活躍。RIZINでも、那須川天心やマネル・ケイプと対戦経験がある。
試合では、中村がガードをほぼせず、独特のステップで間合いを取り、伊藤を入らせない。そして、伊藤がじわりとつめてきたところに、中村がノーモーションの右ストレートをヒットさせ伊藤が真後ろにダウン。中村はすかさずパウンドに向かい、絶対絶命と思われたが伊藤は立ち上がってスタンドに戻す。中村に蹴り足を掴まれた伊藤は、バランスを崩し倒れるが、中村は深追いしない。そして、伊藤が立ち上がろうとしたところに、サッカーボールキックを豪快に決める。しかし、伊藤は怯まずスタンド戦に戻す。伊藤は、中村をロープ際まで追い込むと強烈な左フックを炸裂させ、中村がダウン。その後は、パウンドのパンチとヒジを雨のように降らし、審判が試合を止めた。
伊藤は、逆転KO勝ちでRIZIN2連勝を飾った! 試合後、マイクを握った伊藤は「愛知県から来た伊藤裕樹です。ちょっと最初のストレートでダウンみたいになったんですけど、滑っちゃって。相手が中村選手だけに。僕がフライ級のエースになるよう練習して強くなって帰ってくるので、大晦日もいつでも練習できるのでお願いします!」とショートノーティスで受けた試合だったにも関わらず大晦日出場を直訴した。
伊藤はこの流れに乗って、連勝街道を突き進めるだろうか?
プロキャリア初の〇〇負け
大晦日出場はかなわなかった伊藤だが、年明けの2022年2月ににDEEPでビッグマッチが組まれた。対戦相手は、元修斗フライ級王者の福田龍彌(当時、13勝7敗)。福田は、ムエタイをバックボーンに持つストライカーで、高いKO率を誇る危険な相手だ。また、現UFCフライ級ファイターの平良達郎と修斗でタイトルマッチも行っている。
しかし、伊藤の打撃もフライ級トップクラスの破壊力を持つ。ともに打撃を得意とするストライカー同士の「斬り合い」はどちらに軍配が上がるのだろうか?
試合は、お互いサウスポーでローキックを蹴り合いながら相手の出方を伺う。すると、福田がパンチのフェイントからタックルに入り、テイクダウンに成功。すぐに立ち上がる伊藤だったが、ゲージに押し込まれ膠着状態が続く。レフェリーがブレイクをかけ再び打撃戦へ。伊藤はコンパクトな打撃を放って福田にプレッシャーをかける。しかし、1ラウンドは伊藤の打撃を上手く殺した福田が試合を作った。
試合が動いたのは2ラウンド。伊藤はキレのある打撃でいきなり距離を詰め、福田に襲いかかる。伊藤のパンチがヒットし、福田が腰を落とす。しかし、福田のダメージは浅くすぐに交戦へ出る。伊藤はプレッシャーを強め、福田をゲージ際に捉えるとパンチの連打で勝負をかける。しかし、その刹那、福田の右フックが伊藤に炸裂。伊藤は、腰を落ともすぐ立ち上がり回復をはかるが、続けて福田の強烈な右のパンチが伊藤を追撃。伊藤は完全にダウン。福田は躊躇なく雨のようにパウンドを打ち落とし、試合を終わらせた。
伊藤はプロキャリア初のTKO負け。1ラウンドのように、組みつかれての時間の消耗を嫌った伊藤陣営が打撃で一気に決めにいった作戦は決して悪くない。敗因としては、1ラウンドで福田の打撃を見れなかったことだろう。逆に、福田は伊藤の打撃を1ラウンドで十分見ることができた。結果として、「勝ち急いだ」伊藤は、福田の返り討ちにあってしまったのだ。
しかし、伊藤のフライ級トップクラスなことに変わりはない。この敗戦から伊藤はさらに成長していくことができるだろうか?
6連勝相手に決死の復帰戦へ
前戦から3ヶ月後、伊藤の復帰戦はDEEPで組まれた。相手は、目下6連勝中と波に乗る関原翔(当時、9勝2敗)だ。関原は、RIZINにも参戦経験があり、直近では元DEEPストロー級王者の越智晴夫を撃破するなど快進撃を続けている。加えて、朝倉未来1年チャレンジのヒロヤも判定で敗っている。
伊藤は、関原の連勝を止めることができるのだろうか? この一戦は想像を超える壮絶な一戦となった。
試合は序盤、お互いに鋭い蹴りを放って打撃の距離を測っていく。伊藤はゲージ際に関原を追い込み、左ボディを叩き込むが、関原も左フックを打ち込む。伊藤の打撃にも、関原は怯まずヒザやフックで応戦。ケージ際では、お互いに当たれば倒れるようなフックの応酬を見せ、打撃戦はより激しさを増す。
続く2ラウンド、伊藤は矢のようなパンチで関原の顎を撃ち抜く。関原は、タックルに入り伊藤からテイクダウンを奪う。伊藤はすぐに立ち上がるが、関原はしつこく組みつきテイクダウンを狙う。スタンドに戻ると、今度は伊藤が関原をゲージに押し込み、テイクダウン。終盤は、打撃戦となるも、関原の打撃が当たり始め伊藤はペースを掴めなかった。
そして最終ラウンド、早速組みついた関原はバックを狙うが、ここは伊藤がうまく対処してスタンドへ。両者鋭いパンチを交錯させ一瞬も気の抜けない展開に。接近した伊藤はうまく関原のバックを奪うと、そのまま絡みつきバックチョークを狙う。しかし、絶体絶命の関原は体を駒のように回転させ、なんとかスタンド戦に戻す。試合時間残り40秒、伊藤と関原は作戦も駆け引きもない壮絶な殴り合いを展開。しかし、伊藤は、関原のパンチを正確に見切り、左右のパンチをヒットさせる。最後は、関原の顔面を真っ赤に染め上げた伊藤が猛ラッシュを仕掛けニアフィニッシュまで追い込むも、ここでゴングとなった。
壮絶な殴り合いとなった試合は判定へ。結果は3-0で伊藤の判定勝利。激戦後マイクを握った伊藤は、「予想以上にこんなしんどい試合になるとは思っていなかったので、ちょっと何を考えるか吹っ飛んじゃったんですけど、僕ここDEEPで2連敗中でどうしても勝ちたかったんで今回の試合勝てたことにはホッとしてるんですけど、こんな試合内容じゃフライ級の頂点に立つ男としてまだ全然相応しくないと思ってるんで、もっとこれからたくさん練習して、ジャパニーズMMAのフライ級を背負って行けるように頑張るんで、これからも応援よろしくお願いします」とコメント。
関原は、打撃やタックルの精度が高く難敵だったが、最後は伊藤が打撃力で押し切って勝利を手にした。ここから伊藤はフライ級の頂点に向け、どのような戦いを見せてくれるのだろうか?
灼熱の南国決戦
伊藤の次なる戦いの舞台は、RIZIN沖縄大会だ。対戦相手は、沖縄出身のファイター宮城友一(当時、17勝11敗)。宮城は、第3代GRADIATORライトフライ級王者で、キックボクシングでも20戦をこなしているファイターだ。2021年11月のRIZIN沖縄大会にも出場した宮城は、安谷屋智弘を1ラウンドで葬っている。
伊藤は、完全アウェイの状況を跳ね返し、勝利を掴めるだろうか? 今ゴングだ!
試合の口火を切ったのは伊藤。強烈な左ローキックで宮城を牽制する。ジリジリ宮城が距離をつめるが、伊藤はステップで距離を掴ませない。互いに打撃を見せながら探り合いを続ける中、宮城が不用意に近づいたところ、伊藤が左フックを叩き込み宮城がダウン。ダメージは浅くすぐに立ち上がる宮城。伊藤の追撃を許さなかった。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
試合が動いたのは2ラウンド。伊藤はショートアッパーで再びダウンを奪う。しかし、ここも宮城は素早く立ち上がり深傷とはならない。その後、宮城の蹴り足を掴んだ伊藤は、そのまま宮城を倒す。そこから、伊藤は飛び込んでパウンドを放ち試合は一気に激しさを増す。そのまま寝技の攻防に入ると、伊藤は腕十字や三角絞めの体勢をつくるが、宮城は芸術的なディフェンス力でこれらを回避。巧みなディフェンステクニックに会場のボルテージも一気に上がり、宮城を後押しする。しかし、最後は、伊藤の左ストレートが宮城を捉え、宮城がコーナーへかがむようにダウン。伊藤はすかさず獣のように襲いかかり、パウンドとヒザの連打で試合を終わらせた。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
伊藤は2ラウンドTKO勝利で、ベテラン宮城を撃破! 2連勝となった! 快進の勝利をあげた宮城は、「この沖縄アリーナでRIZINを感じられることが僕にとってすごくプラスになります。DEEPでフライ級トーナメントで優勝してまたRIZINに戻ってきます。また沖縄大会に呼んでください。めんそーれ!」と喜びのコメント。
この時、DEEPで16人の選手によるフライ級トーナメントの開催が発表されており、伊藤の出場も確定していた。伊藤は、沖縄での快勝の波に乗って過酷なトーナメントに参戦することになる。参戦メンバーには、RIZINでも活躍する村元友太郎や、大ベテランの越智晴雄、そして伊藤が敗れた福田龍彌らが決定している。伊藤はこの群雄割拠のフライ級をおさめられるか、今後の戦いにも大注目だ。
伊藤裕樹の知りたいトコ!
伊藤裕樹の彼女は?
伊藤裕樹は、端正な顔立ちでラRIZINでも屈指のイケメンファイターである。そんな伊藤に彼女はいるのだろうか?
結論から言うと、現在はいないようだ。しかし、2016年には美女格闘家の山崎桃子と交際していたようである。山崎は、伊藤と同じアウトサイダーの格闘家で55-60kg級の王者にまでなっているが、現在は別々の道を歩んでいるようだ。
今後の伊藤の恋愛事情にも注目していきたい。
伊藤裕樹の和彫タトゥー
伊藤裕樹と言えば、左肩から胸に入った和彫のタトゥーが印象的だろう。伊藤は自身のタトゥーに関して、「最初は龍とかにしようと思ったんですけど、龍はベタなんで鯉にしました」と語っている。
伊藤裕樹の乗っている車は?
残念ながら、伊藤裕樹がどのような車に乗っているかの情報は掴めなかった。
まとめ
これまで伊藤裕樹を見てきたがいかがだったであろうか?
伊藤は幼少期から培ってきたボクシング力を武器に、殺傷能力抜群のパンチで難敵を葬ってきた。また、テイクダウンされてもすぐに立ち上がり。お返しと言わんばかりに強烈な打撃を浴びせる。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
超攻撃的ストライカーとも評されるが、宮城戦では腕十字や三角絞めを見せるなど寝技の技術も確実に上がっている。今後、伊藤はトータルファイターとして、さらに強くなっていくのか。今後も目が離せない。
※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用