征矢貴の選手紹介記事 〜ドン底から這い上がる“松戸の不死鳥”のすべて〜

愛する者との別れ、原因不明の難病との戦い、幾多の障害を乗り越えて、強敵と対峙する征矢貴。

そんな彼の姿は多くの人に勇気を与え、病気や大きな壁と戦う人の支えとなっている。

格闘技界には“不死鳥” と呼べる程の不屈の闘志を持ったファイターは幾人もいるが、彼以上に絶望の底から何度も蘇って来たファイターはそうそういない。

当時の最年少でプロデビューした天才格闘家は、常に病気の恐怖と隣り合わせの中でも、確実に進化し前進し続ける。一体彼がどのようにして病気を克服し、ここまで強くなったのだろうか。今回“松戸の不死鳥” 征矢貴を丸裸にしていこう。


※https://jp.rizinff.com(RIZIN公式HPより引用)

征矢貴のプロフィール

名前 : 征矢貴(そや たかき)

生年月日 : 1994年10月15日

出身地 :  千葉県松戸市

身長 : 165cm

体重 : 57Kg

戦績 : 12勝5敗(9KO)

階級 : フライ級

所属 : パエストラ松戸

獲得タイトル : ー

入場曲 :     浜田省吾「MONEY」

バックボーン : 総合格闘技

公式 HP :   ー

Twitter : @Takaki_Soya

Instagram : 征矢貴

Youtube    ー

アパレル    ー

ファンクラブ  ー

キャリアも長く落ち着いた雰囲気がある事からベテランと見られることがおおい征矢だが、実は28歳と、まだまだ若手の部類に入る。ここからは征矢はどのような格闘人生を送り、RIZINのリングにたどり着いたのか、彼のデビュー前に遡って見ていこう。

野球少年からMMAファイターへ

なんとなく入ったパエストラ松戸

1994年10月15日、千葉県松戸市で征矢貴(そや たかき)は生まれた。

中学では野球に打ち込んでいた征矢だが、卒業後はやる事がなくなり、暇を持て余していた。そんなある日、たまたま自転車でパエストラ松戸の前を通りかかり、「なんか面白そうだな」と思って練習の見学に行ったのが全ての始まりだったという。

もともと格闘技の事は詳しくもなく、修斗という格闘技自体知らなかったという征矢だが、「見学した時に、先輩の扇久保さんがいて、こんな世界があるんだって感じたのを覚えています」と語っている。

扇久保とは言わずもがな、扇久保博正のことで、RIZINバンタム級JAPANグランプリ決勝であの朝倉海を降して、2021年のバンタム級の頂点に立った男である。

征矢は、中学時代の野球部でのハードな練習で培ったフィジカルと、天性の打撃センスであっという間に実力をつけていった。

そして、入門からわずか2年後の2011年、第8回東日本アマチュア修斗オープンバンタム級で優勝を果たした。あっという間に修斗の世界で頭角を現した征矢は、翌年2012年には17歳という、当時最年少の若さでのプロデビューが決まった。

デビューからの快進撃

そして2012年7月21日、パンチを自分のメインウェポンと考え、磨き上げてきたその拳がデビュー戦で炸裂する。

試合開始してわずか40秒過ぎ、対戦相手である伊藤貴昭の顔面に征矢の稲妻の様な右フックが一閃。この一発で試合が決まり、征矢は電撃KOでデビュー戦を飾った。

翌年、征矢は、6月から12月にかけて行われた、2013年度新人王決定トーナメント決勝戦に出場。なんと征矢はこのトーナメントを初戦から決勝戦まで全て1RKOによって勝利し、圧倒的な強さを見せて優勝を果たす。

しかも、決して相手が弱かったわけではない。このトーナメントの決勝で戦った福田龍彌は、後に修斗のフライ級王者にもなっている強者である。格闘技経験も少ない中で強者達を次々になぎ倒す征矢に、修斗界隈から大きな期待が寄せられた。

一流ファイターに苦戦する日々

2014年、これまで同程度のキャリアの選手に圧勝を繰り返してきた征矢はいよいよ修斗の本戦に出場。キャリアも実績も格上の菅原雅顕(まさあき)と拳を交えたが、まだ経験の浅い征矢は菅原の多彩な技に対応しきれず、敢え無く1R3分過ぎ、自らが得意とする右フックで逆にKO負けを喫した。

次戦では勝利はしたものの、得意としている必殺の一撃は炸裂せずにス・ギョンズンに判定勝利。

そして2015年9月には、VJTというイベントで、元パンクラスフェザー級王者、そして元DEEPバンタム級王者でもある、前田朗と対戦。

前田はここまでに50戦以上の試合を経験し、KOでも一本でも極める力を持つオールラウンドファイター。間違いなくここまでの征矢のキャリアで最強の相手である。

試合は前田が左右の強力なフックを振り回しながらグイグイと前に出る展開に。征矢は前田のヘビーショットを掻い潜りながら、カウンターやボディへの膝で応戦する。

2Rは一旦様子見のムードになり、両者やや集中力が切れた様子だったが、ラウンド中盤で一気に征矢がワンツーを放ちながら一気に距離を詰めると、前田が逃げきれずに金網を背にした状態で征矢の右ストレートを受けてフラッシュダウン。追い打ちに行くがグラウンドディフェンス力の高い前田にしっかりと守られてすぐにスタンディングへ。巧みにスイッチしながらタイミングをずらしていく前田を前に、苦戦しながらも互角の印象で最終ラウンドへ。

前田は作戦を切り替え、果敢にタックルを仕掛ける。2度目のタックルでテイクダウンに成功すると、征矢を完全にコントロール。目まぐるしく体勢を変えながら、隙が見えた場所にところ構わずパンチを入れ、打撃に意識を向けさせたところで肩固めを狙うなど、息もつかせずに攻め立てる。征矢は完全にグラウンドをコントロールされたまま試合は終了。

途中まではいい勝負だったが3Rの劣勢が響き0-3の判定で征矢が敗れた。

その拳に全てをかけて戦ってきた征矢はここに来て組み技、寝技のテクニシャンやオールラウンダー達との戦いに苦戦を強いられ、2016年前半は成績が振るわなかった。2月にはオニボウズに判定で敗れ、続く北原史寛とも互角に戦うが、勝ちきれずにドロー。

3戦連続勝ち星から遠ざかったが、同年の後半には復調を見せ、前年に征矢に敗れ、リベンジを狙って挑戦してきた梶川卓を強烈な右ストレートからのパウンドで1RKO。続く藤田ケオン寿大(かずひろ)戦は2-0の判定で勝利した。

2017年5月には元フライ級キング・オブ・パンクラシストの清水清隆と対戦。清水はタイトル獲得後に他団体で積極的に試合に出場するも、4連敗を喫し、パンクラスのタイトルを剥奪され、一時どん底に落ちていたが直近2戦で勝利し、復調を見せていた。両者不振を抜け出し、ここから勢いをつけたいという大事な試合だ。

この試合を足がかりにもう一段上のステージに登ろうとしていた征矢だったが、試合では3R序盤の清水の右フックによってマットに沈められた。

最愛の人との別れ

日本のトップファイターになるため、ここから這い上がろうという征矢に、あまりにも悲しい別れが訪れる。実は征矢はこの時すでに結婚していたのだが、その最愛の妻が、急性骨髄性白血病により亡くなってしまったのだ。最後まで治療の為に全力を尽くしていた征矢に、夫人はブログでこう言い残している

“いつもうちのやりたい様に決断させてもろて

我慢ばかりさせてん。

骨髄バンクにご協力頂いたのに

死んでしまうことをホンマに申し訳なく思っています。

修斗フライ級の

征矢貴の応援をこれからもよろしくお願いします

本当にありがとうございます。”

ブログから抜粋

今際の際まで格闘家としての征矢を応援しつづけた妻がこの世を去った後、征矢はその夫人の気持ちに応えるどころか、全ての気力を失い格闘技への情熱も一時失いかけた。

だが、何をするでもなく、自然にジムに足を運び、一生懸命練習に打ち込んでる仲間たちの姿を見ているうちに徐々に征矢の中に闘志が蘇って来た、そんな矢先に再び征矢は奈落の底に突き落とされる。

難病との戦い

実は18歳の時に痔ろうを患い手術を経験していた征矢。当時「若い人の痔ろうは、クローン病が隠れている可能性がある」と医師から説明を受け、手術の際に検査もしたが、その時は異常がなかったという。それから数年後、最愛の妻の死の直後に、医師に懸念されたクローン病を発症したのだ。

当時は妻の死から立ち直ろうと必死に毎日を生きていた時期で、3〜4時間程度の睡眠時間で格闘技の練習とスポーツジムのパーソナルトレーナーの仕事を両立していたという。この多忙すぎる生活のストレスも発症に関連していたのかもしれない。

クローン病はハッキリとした原因は未だ不明で、食欲不振や、腹部の強烈な痛み、便通や発熱など、様々な症状で患者を苦しめる難病だ。初めのうちはこの病気と戦いながら格闘家を続けようと考えていた征矢。そんなある日、「早く治して試合に出たい」と焦る征矢を見かねて、ボクシングトレーナーが「自分を許してあげなさい」と声をかける。

その言葉をきっかけに、征矢は少しずつクローン病の自分を受け入れられるようになり、「一度、全て手放そう」と、格闘家としての活動休止を決断した。

治療に専念する日々の中で様々な薬、治療法を試していくがなかなか改善が見られない。手術という最後の手段があったが、そうすると二度と格闘技は出来なくなるため、征矢は必死で治療法を探し続けた。そして大阪の、自己免疫によって症状を抑えていくという病院に行きつき、これまでの化学的な療法を一切やめ、漢方薬と鍼と抗ヘルペス剤での治療に切り替えた。

薬をやめたことによる壮絶な症状悪化が伴ったが、もう一度「試合に出る」という強い意志で征矢はその苦しみに打ち勝った。

その後、ついにクローン病は寛解(完治はしていないが症状はほぼ出ていない状態の事)し、征矢の心に再び格闘技への情熱が蘇り始めた。まさにここからが“松戸の不死鳥” 伝説の始まりだったのだ。

RIZINデビュー

不死鳥、衝撃の復帰戦

2019年、再び格闘技の道に戻ろうという征矢の元に、日本最高峰のMMAのリングRIZINでの復帰戦という、驚きのオファーが飛び込む。

対戦相手は川原波輝(なみき)、伝統空手出身の打撃の得意な選手で、リスクを取ってでもアグレッシブに打ち合うファイトスタイルは格闘ファンからも定評があり、ボクシングの得意な征矢とのマッチはバチバチのドツき合いを期待させる。

試合前の気持ちは聞かれると征矢は

「復帰戦が今の目標です。とにかくこの先、あと10年頑張るぞというモチベーションではないんです。ヘルニアで腰も痛いですし、身体も結構ぼろぼろなので、あと1試合、とにかく次の復帰戦に全部かけるという気持ちでなければ、なかなか毎日全力を出せませんので、今はそれしか考えていません。将来的にこうなりたい、どうなりたいというよりは、次、とにかく1試合、復帰をして、そこから考えようというふうに、今は思っています」とこの1戦に全てをかける意志を表明。

また、「クローン病を抱えながら格闘技を続けている人は非常に珍しいので、自分が頑張り続けることで、同じような病気を抱えている方に、少しでも勇気を届けられたらと思いますね。総合格闘技は、結果が全ての厳しい世界です。ファンの皆さんが認めてくれるような試合をして、これからも活躍し続けたいですね。年末に行われるRIZINにも出場できるよう、頑張ります!」と、同じ病気で苦しむ人々へ熱いエールを送った。

対する川原は

「自分が呼ばれたのは盛り上げろってことだろうから、征矢選手もKOが多いので、打ち合って倒しあえってことで理解しているので、僕はやる気満々で倒す気しかないですね」「みんなが求めているのははっきり言ってそれでしょう。両方ともKO率高いの当てられて、誰が寝技見たいねん? って僕は思う。エンターテインメントだし、多くのファンに観てもらうし、生きるか死ぬか、やるかやられるかの試合をみんな見たいんですよ。僕はそう理解しているんで、しっかりそれを遂行するだけですね」

と、真っ向から征矢と打ち合う事を宣言した。

試合は2019年6月2日に行われた。

ゴングが鳴ると静かに向き合うオーソドックスの征矢とサウスポーの川原。様子見でフェイントを出し合っていく中、征矢が瞬時に距離を詰めて放った左フックが大きな音を立てて川原の顔面にヒット。川原はマットに倒れ、征矢は追撃にいく。

軽量級ならではのマシンガンのような高速パウンドに何とか耐えながら立ち上がる川原。スタンディングでの拮抗した打ち合いの中で征矢が仕掛けてテイクダウン。コーナーに押し込んだ所で強烈な膝を川原の顔面に入れながら立ち上がる。やや焦りが見える川原。


※https://jp.rizinff.com(RIZIN公式HPより引用)

リードを取り戻すために果敢に攻めるが征矢はこの動きをしっかり見切ってかわしていく。そしてロープ際に追い詰められたところで、川原の左フックのモーション中に、閃光の様な右フックを川原の顎にヒット。まるで糸の切れた操り人形の様にマットに沈む川原。そこに間髪いれずサッカーボールキック! これに危険を感じ、レフェリーは慌てて試合をストップ。

征矢の衝撃のKO勝利で2年ぶりの復帰戦を飾った。

試合後、マイクを取ると「2年間いろいろあって、今ここにいるみんなも人生上手くいかない時、辛い時、沢山あると思うんですけど・・・うん。・・一緒にがんばりましょう」とあふれ出るたくさんの想いに言葉を詰まらせながらも、そのシンプルな言葉は多くの人の心に響いた。

進化する不死鳥

RIZINでの衝撃の復帰戦KO勝利、そしてクローン病と戦う格闘家という話題性もあり、一躍RIZIN軽量級の人気選手となった征矢は、この試合からわずか2か月後に再びRIZINのリングに上がる。

対するは村元友太郎。村元は征矢と同じ年に生まれ、同じく元野球少年で、野球部引退後に総合格闘技を始めるという、征矢と全く同じバックボーンを持つ選手だ。唯一違ったのは征矢が修斗に進んだのに対し、村元が選んだ舞台はDEEPだったということ。

試合前、征矢は「最終的には僕がKOで勝ちたい。相手の仕掛けを一つ一つ潰して、MMAが強いなと思われるような試合をしたいです。スピード対スピードの場面も出てくると思いますが、負けてないと思います」と、今回もKO勝利を目指すことを宣言した。

試合が始まると膝を出しながら勢いよく飛び出す村元。さらに猛烈なタックルを仕掛けてきて征矢をテイクダウン。スクランブルから立ち上がるが、さらに猛攻を仕掛け、激しい殴り合いの中で一瞬征矢はグラつくが効いてないとアピール。非常にスピーディーな展開の中でラウンド後半は征矢がテイクダウンに成功し、ガードポジションからパスしてマウントを完成。パウンド、肘と村元にダメージを与えていく。ラウンド終了間際には立ち上がって両者激しい打ち合いを見せて会場を沸かせる。

2R、村元がパンチからタックルを仕掛けるが征矢はこれをしっかり切る。征矢はじりじりとプレッシャーをかけて、距離が詰まった所で右のストレート、アッパーをクリーンヒットさせると村元はグラつき、コーナーに逃れる。征矢はここで一気にラッシュを仕掛け、左右の連打を村元の顔面に畳みこんだところで、レフェリーがストップ。征矢は復帰2連勝、どちらもKO勝利と、ファンにもRIZIN運営にも強いインパクトを与えた。


※https://jp.rizinff.com(RIZIN公式HPより引用)

試合後マイクを持った征矢は

「征矢貴です。戦うことが幸せで、日本のみんなが憧れているRIZINで戦えて本当に嬉しいです。医者から止められても、家族から言われても、格闘技はやめられないです。これから強くなるので、応援宜しくお願いします」

とまだまだ現役続行を宣言。

今後は更なるビッグネームとの試合が期待された。

不死鳥再び

だが、この連戦で無理をしたせいか、寛解していたクローン病の症状が再燃する。この病との戦い第2ラウンドは非常に長引き、寛解までに2年もの歳月を要した。

闘病生活を振り返って征矢は、「気持ちが落ちているときに、パラエストラ松戸の仲間が『待っているから』と声をかけていただき、元の場所に戻りたいと思いました。ファンからも休んでいる時に声をかけてもらい、勇気が出ました」と、みんなの声援が力になったと振り返る。ようやくトレーニングを始めようという時には、身体はやせ細り、体力も著しく低下していたため、ゼロから身体を作り直さなければならなかったが “松戸の不死鳥” はあらゆる障害を乗り越えて再びRIZINのリングに帰ってくる。

征矢は前試合から2年8ヶ月のブランクを空けて、RIZIN TRIGGER 3rdに参戦。対戦相手はRIZIN初参戦の中務修良(なかつかさのぶよし)。

中務は、元々はいじめられっ子で不登校だったが、はじめの一歩を読んだことがきっかけでボクシングを始め、レスリングも平行してトレーニング。その後にその両方のスキルを活かせるMMAの世界に足を踏み入れた。中務の戦績は8戦4勝と、圧倒的なものとは言えないが、特筆すべきはその内容で、なんと8勝中3KO 5一本、つまりフィニッシュ率が100%なのだ。

このアグレッシブさが買われてRIZINデビューを果たした中務。長いブランク明けとなる征矢はこの中務の勢いを止める事が出来るのか。

試合前、征矢は中務の印象を聞かれると

「レスリングがバックボーンで手足が長い印象ですね。KOのつもりで戦いますが、5分3ラウンドを戦うつもりです」と声を弾ませて語り、相手がどうこう以上に、試合が出来る喜びがその口調に表れる。

「10年やるかもしれませんが、次が最後になるかもしれないと思っています」と常に崖っぷちに立たされている人間だからこそにじみ出る、覚悟のこもった口調で語る。

試合は2022年4月16日に行われた。

ゴングが鳴るとすぐに中務がサウスポーの構えから左ハイを繰り出す。これは征矢がガードし、互いのカウンターを警戒しながら細かいパンチを出し合う。一瞬の隙をついて鋭いタックルを仕掛ける中務、しっかり見切ってこれを切る征矢。絶妙な間合いの中、互いの攻撃はなかなかヒットしない。

業を煮やした征矢が一気に距離を詰めて左のヘビーショットを放つと、中務は右フックで応戦。これをよく見ていた征矢は、自身も顔面にフックをもらいながらも強烈な右カウンターを中務の顔面にヒット。まったく予想できなかった中務はフラッシュダウン。中務はグラウンドに持ち込みたいが、征矢は素晴らしい反応でタックルを次々に切っていく。ラウンド終了間際に、征矢がボディへの右膝、右ストレート、ゴングとほぼ同時に強烈な右フックを見舞って1Rは終了。


※https://jp.rizinff.com(RIZIN公式HPより引用)

征矢が中務の持ち味を封じ、自分の土俵でしっかりと差をつけた印象だ。

2R、打撃戦がもつれてグラウンドになると、中務が肘を連打、これを嫌がり離れようした征矢を右足で思い切り蹴り上げる。征矢もノーモーションから空気を切り裂くような右ストレートを何発かヒットさせ、中務にプレッシャーをかける。中務のタックルを何度も切り、ガードポジションで上になってから立ち上がり、中務も立つように促すと、さっきのお返しだと言わんばかりに、立ち上がり際の中務の顔面に強烈な左ヘッドキック。さらにプレッシャーを強める征矢、中務をケージ際まで追い詰めると、軽量級とは思えない強烈な左フックで中務をノックダウン。この機を逃すまいと、抵抗する中務の上に殺気を漲らせたパウンドの嵐。かなり危険な状態に陥った中務を見てレフェリーが「ストップ!!」と声を張り上げて試合を止めた。


※https://jp.rizinff.com(RIZIN公式HPより引用)

試合後には「前回から3年ぐらい空いちゃったんですけど、いつもカードが発表される度に『征矢の試合を見たい』と言ってくださる皆さんのおかげで今日戻ってこれました。ヘルニアになろうと、クローン病が再発しようと、一緒に戦ってくださるファンの皆さんがいる限り僕は不死身ですので、応援お願いします。また会いましょう」と涙を浮かべながら語り、多くのファンに感動と勇気を与えた。

連勝ストップ、悔しい負け

試合後もクローン病の再燃は起こらず順調に調整をして来られた征矢は、約半年後のRIZIN RANDMALK 4に出場する。対戦相手は以前に征矢が破った川原波輝のジムの先輩、中村優作だ。中村は大阪出身ともあってユーモアに溢れ、試合前会見でもよくスベッているのだが、紛れもないフライ級の日本トップファイターの一人だ。ここ3戦で3連敗と不調だったが、風向きを変えようと前試合からわずか2週間という間隔で試合に臨む。

試合は2022年11月5日に行われた。

両者オーソドックスの構えで向かい合う。征矢がボディストレート、右カーフを連打すると、中村も負けずボディストレートからの右ロー。征矢は組んで中村を倒そうとするが、これに耐え、左右のパンチでレッシャーをかける。征矢は後半にテイクダウンを決められるがすぐに立ち上がり距離を詰めたところでゴング。

2R、前半に征矢は腰を低く構え、弾丸の様なタックルを仕掛け中村を金網に押し付ける。腰の強い中村は耐えるが、スタンドバックからの小外がけでテイクダウン。 立ち技の展開になると、拮抗した打撃戦になるが、征矢は鋭くキレのある中村のノーモーションジャブやストレートを何度も被弾してしまう。


※https://jp.rizinff.com(RIZIN公式HPより引用)

最終R、互いにボディストレートを放ち、距離が詰まると組み合いに。征矢はバックから引き込み、背後からパウンドに行くが、中村は背後にいる征矢に肘を連打。両者空いてる場所はどこでも狙うグラウンドでの乱打戦の中、試合は終了。


※https://jp.rizinff.com(RIZIN公式HPより引用)

勝負は判定にもつれたが、1-2のスプリット判定で中村に軍配が上がり中村は「よっしゃぁああー--!!!」と咆哮した。

試合後のインタビューで征矢は

「いやもうとにかく悔しいという思いですね。自分の弱さが出てしまったというか、悔いが残る試合をしてしまったのでとにかく悔しいです。中村選手上手かったな、想像以上にやりづらかったなという印象です。また強くなって戻ってきます。寝技の展開でも攻められるような状態を練習で作っていきたいです」と、敗戦の中からも今後の課題を見出し、さらなる成長を誓った。

連勝は逃したが、白熱した試合を見せてくれた征矢。もちろん彼がまた豪快なパンチでKOするシーンも見たいが、まずは彼がまたリングの上に、ケージの中に戻ってきてくれる事をファンは願っている。“松戸の不死鳥” 征矢はきっとまた我々に戦う姿見せてくれるだろう。そんな征矢貴からはまだまだ目が離せない。

征矢貴の知りたいトコ!

征矢貴に彼女は?

2017年に最愛の妻を無くして5年が経ったが、征矢は今も奥さんへの気持ちを大切にしているのか、新しい彼女の噂は一切なく。浅倉カンナとの対談やスパーリング、Youtubeのコラボなどは見られるが、この2人が噂されることも一切ない。一人で病気と戦い続けるのも精神的に辛い事もあるだろう。いつか彼を支え、一緒に病気と戦ってくれるパートナーの登場を願いたい。

扇久保博正選手と地獄の10R

扇久保のYoutubeちゃんねるに征矢が出演した際「地獄の10R」という話をしている。それは、まだパエストラジムに入って間もない、征矢がアマチュアの試合に出始めたぐらいの頃の話である。当時は東日本大震災の影響で、ジムに誰も来なくなってしまい、試合間近の扇久保はスパーの相手が居なくて困っていた。そこにひょっこり現れた征矢。「これいい“おもちゃ”見つけた」と扇久保は思い、「お前試合まで毎日来いよ」と征矢を毎日ジムに呼んでは5分10Rという地獄のスパーリングを連日続けた。新人の征矢はこの地獄の毎日に耐え抜いたそうで、扇久保はこの時「あ、コイツは上に行くな」と感じたという。

まとめ

ここまで“松戸の不死鳥” 征矢貴のストーリーを見てきたが如何だっただろうか。

野球少年時代を終えて何となくという気持ちで始めたMMA。すると、征矢の秘めた才能が開花し、17歳の若さでプロのリングへ。一流選手を相手に苦戦をしながらも実績を積み上げている最中、最愛の妻の死とクローン病の発症。征矢はリングから遠ざかるが、2年後にRIZINのリングで復帰を果たし奇跡の復活KO勝利。その後も病気と戦いながらRIZINのリングで戦い続けている。

彼の戦う姿に多くのファンが元気づけられ、病気や苦しみと戦う勇気をもらっている事だろう。征矢が勝利し片手を高らかに挙げている姿ももちろん見たいとは思うが、多くのファンの願いは、彼がまた無事にリングに戻ってきて、全力を出して戦う姿、そして試合後に優しく微笑む姿を見せてくれる、という事に尽きるだろう。必ずまたその日が来ると信じて、これからも皆さんと征矢貴を応援していきたい。

※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用