渡部修斗の経歴紹介、彼女も父親も総合格闘家のMMA一族

「どんなに警戒していても、極まってしまう寝技」そんな夢のような技を駆使し、日本の格闘技界で勝利を量産している1人のファイターがいる。

彼の名は“渡部修斗”。渡部が仕掛ける「リアネイキッドチョーク(RNC)」という技は、どんな相手であれ、息の根を完全に止め、失神へと追い込んでしまう。魔法を連想させるほどの強さから、この技についた異名は「マジカルチョーク」。これを武器に、渡部はRIZINの舞台まで駆け上がってきた。

しかし、渡部が今日まで歩んできた道のりは、決して平坦ではない。「待望のタイトルマッチでの敗北」や「RIZIN参戦後の屈辱的な連敗」など、一見輝かしく見える渡部の人生の舞台裏には、数えきれないほどの「挫折」が隠されていたのだ。

では、一体どのようにして渡部は困難を乗り越え、トップファイターへと上り詰めたのだろうか。その答えは、渡部の人生の歴史を紐解いていくことで、自然と見えてくる。

今回の記事では、渡部の生い立ちから、格闘家としても歩み、さらには今後の展望について紹介する。まずはプロフィールから見ていこう。

渡部修斗のプロフィール

 

画像2: 入場

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2022/04/16/8f6150c6e69e49d3ffb4eb8266f38677666d4227_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

名前     : 渡部修斗

生年月日   : 1989年2月27日

出身地    : 栃木県足利市

身長     : 173cm

体重     : 61.0kg

戦績     : 37戦 24勝(2KO)7敗5分け

階級     : バンタム級

所属     : ストライブル新百合ヶ丘

獲得タイトル : 初代NEXUSバンタム級王者

入場曲    : DAN DAN心魅かれてく

バックボーン : 柔道、レスリング

公式HP     : −

Twitter      : @shooto_wa

Instagram   : −

YouTube     : https://www.youtube.com/channel/UClT_hYRKVxNc97Mqq_9kgng

アパレル   : −

ファンクラブ : −

柔道・レスリングを経て総合格闘家へ

MMAに魅了されたレスリングエリート

栃木県足利市で生まれた渡部。父親に「見学だけだから」と言われ道場に連れて行かれたことをきっかけに、小学5年生の時に柔道を習い始める。その後、中学で柔道部に入部すると、またも父から「柔道が強くなるためには、レスリングも必要だ」と言われ、部活と並行してレスリングにも取り組むようになる。

中学では最終的に柔道よりもレスリングで好成績を収め、スポーツ特待生として足利工業大学附属高校へ進学。さらにレスリング部では主将まで務め、心身を鍛え上げていた。

その後、大学進学を機に上京した渡部。この時に、MMAという競技に出会うことになる。2009年当時は、「HERO’S」や「DREAM」といった格闘技団体の試合が人気を博し、テレビでも放映されていた。渡部は2009 年の大晦日に、Dynamite!!にて開催された魔裟斗の引退試合に足を運び、生で格闘技の迫力を目撃した。

それは渡部にとって、衝撃的な経験だった。格闘技の試合をテレビで見るのとは違い、試合を盛り上げるための会場の演出や、煽られたファンの熱気は言葉では表現できないほど凄まじく、そして何より、リングで戦っているファイターの姿が眩しかった。「自分もプロになって、こんな試合がしたい」そんな憧れを漠然と抱いた渡部は、即座に吉祥寺のジムへの入会を決めた。

大学卒業後は小学校の学童クラブやフィットネスジムに勤務しつつ、MMAの練習を重ねた渡部。そしてついに、2012年4月、パンクラスの舞台でプロデビューを果たす。

ついにプロデビューへ

判定決着なしのルールで行われたデビュー戦は、序盤から終盤まで、渡部が対戦相手のバックを取り続け圧倒するも、時間切れ。引き分けという結果で渡部のプロキャリアはスタートした。しかし1ヶ月後にSWATに参戦すると、高橋辰也を相手に1ラウンド1分18秒でのチョークスリーパーを決め、一本勝ち。これ以降、SWATと、その上位団体であるZSTを中心に、渡部は戦いを繰り広げていく。

2012年9月、SWATバンタム級トーナメントへの参戦を決めた渡部は、1回戦から得意のチョークスリーパーを決めるなど、盤石の試合運びを見せ、見事に決勝まで勝ち上がる。初タイトルをかけた決勝戦の相手は、伊藤盛一郎。伊藤は後にZSTフライ級王者になるなど、実力は折り紙付きのファイターだった。しかし、いざ始まった試合では、1ラウンドで得意のチョークスリーパーを極めた渡部が圧巻の勝利。次世代を担う1人のファイターとして、渡部は一夜にして注目を集めるようになった。

ここから渡部は4年間、ZSTを中心に14試合に出場し、順調にキャリアを進めていった。この期間で負けたのは、たったの2試合のみ。得意のリアネイキッドチョークはもちろん、三角絞めや裸絞めといった他の寝技にも磨きをかけた渡部は2016年、ついにZSTのタイトルマッチへ挑むことになる。

※画像URL:http://efight.jp/wp-content/uploads/2016/04/DSC5898.jpg(イーファイトより引用)

ZSTのタイトルマッチへ

当時のZSTバンタム級には、絶対王者・柏崎剛が君臨していた。柏崎はプロデビュー以来、無敗街道をひた走り、気づけば前人未到の15試合連続で負けなしという記録を樹立。そんな最強の相手を前にして渡部は、「今の柏崎を止めるのは僕しかいない」と語り、堂々の勝利宣言をしてみせた。渡部にとって「ZSTのチャンピオンになること」は、プロデビュー当時からの大きな目標だった。並々ならぬ覚悟を胸に、渡部は試合のリングへと上がった。

1ラウンド、先にテイクダウンに成功したのは渡部。すぐに柏崎も立ち上がったが、再び渡部は首を取って上を取り返すなど、一進一退の緊迫感溢れる展開が続く。2ラウンドに入ると、さらに2人の戦いは激化する。渡部がテイクダウンを奪い、フロントチョークを仕掛けると、さすがのチャンピオン・柏崎も苦しい表情を見せる。しかし柏﨑も王者の意地を見せ、ロープ際で何とかリバースに成功し、一気に攻勢へ。渡部も足関節で対抗するが、スタミナの消耗が激しく、有効打は打てない。柏﨑はさらに強烈なパウンドを連打し、ここでレフェリーが試合をストップ。

白熱の攻防の末、渡部は敗北。念願のタイトル獲得の夢は、叶わなかった。ただ、絶対王者・柏崎をギリギリまで追い込んだのも事実。寝技を効果的に使い、果敢に攻める渡部の姿勢は、格闘技界でも徐々に評価されるようになっていた。

次なる舞台、NEXUSへ

柏崎に敗戦した後、渡部は一度環境を変え、新たな場所でキャリアを形成する道を選んだ。そんな時に出会ったのが、Fighting NEXUSだ。NEXUSは、まだ歴史が浅い団体だったが、2018年には初代バンタム級王者決定トーナメントの開催も決まるなど、徐々に規模を拡大していた。

そして、渡部はその初代バンタム級王者決定トーナメントへの参戦を決意。優勝候補筆頭と評されていた渡部だったが、各団体の推薦選手の出場も決まり、暗雲が立ち込める。例を挙げれば、香港のMMA大会「V-combat」の初代バンタム級王者の風間光太郎や、総合格闘家の山本喧一の息子であるDAIKIなどが参戦を決めており、激戦必至の大会として注目を浴びていた。

1回戦で諏訪部哲平、準決勝では竹本啓哉を下すなど、順当に駒を進めた渡部。決勝進出を果たして迎えた相手は、ジェイクムラタだった。ジェイクは2014年にパンクラスでプロデビューし、その後は修斗、DEEPと渡り歩き、実績を積み上げてきた歴戦の猛者。準決勝では風間光太郎を破るなど、まさに決勝戦の相手に相応しいファイターだった。

※画像URL:http://efight.jp/wp-content/uploads/2016/11/nexus01.jpg(イーファイトより引用)

NEXUSの頂点を懸けた一戦は、渡部が再三のテイクダウンを奪い、優位に試合を進める展開となる。卓越したグラウンドコントロールでジェイクに攻撃を許さず、さらにはパウンドを浴びせて攻め続けた渡部。得意のチョークスリーパーで一本勝ちとはならなかったものの、3-0のフルマークでの判定勝ちを収め、悲願の王座戴冠を果たした。試合後、渡部はベルトを手にすると、父・渡部優一氏をリングに上げ、男泣き。格闘技人生で最高の喜びを噛み締めた。

NEXUS王者としてのプライド

その後、2019年にはDEEPの舞台へ参戦。渡部にとっては、日本のメジャー団体への初挑戦だった。ZST、NEXUSで積み上げた自信を胸に臨んだDEEP初戦では、小林博幸を相手に、1ラウンド1分22秒で必殺のマジカルチョークを極めて圧勝。その後も、倉信洋一郎を破るなど、NEXUS王者としての貫禄を見せつける結果をDEEPでも残した。

そして迎えた2019年11月、ついにNEXUSでのタイトルマッチ、渡部にとっては初の防衛戦の開催が決定した。挑戦者は、咲間”不良先輩”ヒロト。その名の通り咲間は、10代の頃から数々の悪さに興じ、実際に薬物中毒で投獄されたこともある。そんな波瀾万丈の人生を歩みながらも、咲間は厚生を果たし、格闘家としてタイトルマッチにまで上り詰めてきた。「不良の優等生狩り」とも揶揄されたこの試合を前に渡部は、「狩られるつもりはない。むしろ首を切ってみせる」と語り、NEXUS王者としての自信をのぞかせていた。

Fighting NEXUSバンタム級タイトルマッチがついに幕を開ける。1ラウンド、オーソドックスの構えからジャブを細かく打っていく咲間に対して、渡部は飛び膝を仕掛け、ケージ際へと追い込む。そのままテイクダウンを取り、渡部は咲間のサイドポジションを奪う。咲間は果敢に抵抗するが、渡部はそれをもろともせずにパンチを放ち続け、ダメージを蓄積させる。その後、咲間のバックに飛び乗った渡部は、両足をかけて4の字ロック。左腕を首に食い込ませ、瞬く間に極めにかかると、咲間はタップせず失神。渡部が王者の意地を見せ、1ラウンド 3分48秒での一本勝利、初防衛に成功した。

※画像URL:https://gonkaku.jp/system/images/attachments/000/017/425/medium/YO1_8003.jpg?1574947370(ゴング格闘技より引用)

このタイトルマッチでの勝利を機に、渡部の元にはRIZINからのオファーが届く。RIZINは、言わずと知れた国内最高峰の格闘技団体。NEXUS王者として、RIZINでどのような戦いを見せてくれるのだろうか。

RIZIN参戦後の戦い

デビュー戦の相手は、元UFCファイター

2020年8月、RIZIN初参戦の渡部の対戦相手は、井上直樹に決まった。井上は幼少期から格闘技を学び、DEEPでのデビュー後、驚異の10連勝を遂げた才能溢れるファイター。さらには、日本人最年少の19歳でUFCと契約を結ぶなど、日本のバンタム級でもトップを争う選手だ。

そんな井上との対戦を前にして渡部は、「待っていたファンの人達に、良い試合を見せるためにしっかり準備してきた。僕の名前を覚えてもらえるように、試合を一生懸命、全力で頑張りたい」と素直な意気込みを語った。果たして勝つのは、グラウンドの攻防を得意とする渡部か、破壊力のある打撃が持ち味の井上か。注目を集めた試合がついに始まった。

1ラウンド、渡部は強烈なタックルを仕掛けるが、井上は足を後ろに引いてこらえ、テイクダウンには至らず。一旦ブレイクした後、渡部は再びタックルに出るが、井上は強靭な腰の力で持ち堪える。さらに井上は一歩引いてタックルを切ると、渡部の背後へ回って一気にスリーパーへ。必死な渡部の抵抗も虚しく、そのまま井上が極め切って一本。渡部のRIZINデビュー戦は、1分40秒での敗北という無念の結果に終わった。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2020/08/09/1c18620dcaf8ae8b20429341859baeb6289e4898_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

試合後はインタビューなく、足早に会場を後にした渡部。持ち味を出せずにほろ苦い初戦となった渡部は、果たしてRIZINの舞台で勝利を挙げることができるのだろうか

若き天才との一騎討ち

2021年3月、RIZINに戻ってきた渡部の相手は、修斗の若き天才・田丸匠に決まった。田丸は修斗で年間MVPを獲得し、満を持してRIZINに参戦するファイター。田丸は“打投極”の全てにおいてバランスよく戦うことができ、ONE Championshipでストロー級王者となった猿田洋祐や、RIZINに参戦中の魚井フルスイングといった強者を撃破したことがある。

そんな田丸との対戦を控えた渡部は試合前、「いい練習をして、最高の準備をしてきた。やる気に満ち溢れているけど、あんまり気負いすぎず、良い状態。田丸選手は勝負どころで強い選手だと思います。すごくスイングをし合う試合になるんじゃないかな」と語り、冷静に試合展開を分析していた。

渡部にとって再起をかけた運命のRIZIN 2戦目がいざ幕を開ける。1ラウンド、グラウンド勝負をしたい渡部は、田丸の左ミドルを捕まえ、そのまま体勢を崩しテイクダウンへ。マウントを奪った渡部だったが、田丸は落ち着いて下から腕十字を仕掛け、反撃に出る。そのまま両者はスタンドに戻ると、渡部は再度タックルを入れるが、田丸はカウンターを合わせて膝をヒット。さらに田丸は渡部のバックを奪い、パンチを浴びせる。田丸のペースで試合は進み、1ラウンドが終了した。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2021/03/21/547a29e000f37acb27cf791762943df019fb79d8_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

2ラウンド、反撃に出たい渡部は、またも田丸のミドルをキャッチしてテイクダウン。そのままバックに回ると、田丸のスタミナを削るべく、地道にパンチを入れ続ける。これが功を奏したのか、田丸の動きは徐々に鈍くなっていく。そしてラウンド終盤、完璧に田丸の動きを封じていた渡部はそのまま必殺のマジカルチョークへ。これが見事に極まり、田丸はタップ。鮮やかな一本勝利で渡部はRIZIN初勝利を挙げた。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2021/03/21/ddb689e04a3d8f84b34408a22e3fe4bf5d49fb85_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

試合後、勝利した渡部は目には涙が浮かぶ。リング上で渡部はマイクを持つと、「試合前の勝敗予想とか見て全部、自分が負けるって書いてあったのが悔しくて。だけど、ジムの代表や練習仲間が『絶対勝てる』って言ってくれて、それを信じて今日まで頑張りました。みんなに感謝しています」と語り、勝利の喜びを噛み締めていた。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2021/03/21/bc68c2cbc78040b1f6fcfd78efed15938e7fad17_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

また、今回の試合内容がRIZIN側から評価され、渡部には2021年6月から開催される、バンタム級ジャパングランプリへの出場権が与えられた。このグランプリは、朝倉海や扇久保博正、井上直樹といったトップファイターがこぞって参戦する、いわば日本バンタム級の頂上決戦。果たして渡部は、どのような試合を見せてくれるのだろうか。

RIZINバンタム級JAPANグランプリへの挑戦

2021年6月、RIZINバンタム級JAPANグランプリの1回戦に挑む渡部の相手は、朝倉海に決まった。朝倉は言わずと知れた人気選手で、グランプリの優勝候補の筆頭でもある。2020年の大晦日に堀口恭司に敗れて以来の試合だが、新たに体を作り直し、心機一転してこのトーナメントに臨む意気込みだ。

前回の田丸戦と同様に、この試合も下馬評では、誰もが朝倉の勝利を予想していた。そんな状況に渡部は「自分も相手も想定していないような展開に持ち込みたい」と語り、番狂わせを予感させた。

渡部にとって格闘技人生最大の挑戦、バンタム級グランプリトーナメント1回戦が開幕した。1ラウンド、序盤からタックルを仕掛けたのは渡部。グラウンドに持ち込んで朝倉の攻撃を封じたいところだったが、タックルはことごとく切られ、渡部は流れを掴めない。その時、朝倉は突進してくる渡部との距離を少し開けると、すぐさまサッカーキック、さらに数発パウンドを打ち、また距離を取る。

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パンチを狙う朝倉と、タックルを仕掛ける渡部。どちらに試合の流れが傾くのかが注目され始めたその時、朝倉の強烈な打撃力が牙を向いた。渡部は四つ組みに飛びついて、ギロチンを仕掛けるが、朝倉は首にかかった渡部の手を外し、左手一本で渡部をリングに押さえつける。そのまま朝倉は、殺意剥き出しの強烈なパウンドを連打し、渡部の動きが完全に止まる。その様子を見たレフェリーが割って入り、試合がストップ。優勝候補・朝倉の圧倒的な強さの前に、渡部はなすすべなく散ることとなった。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2021/06/13/b4cff641ce10e9eac89389b8fe5a99fd51d7e8c9_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

試合開始から、積極的にレスリングで勝負に出るも、TKO負けを喫した渡部。試合後のインタビューでは「自分が思っていた結果にならなかったが、落ち着いて試合ができた。いつも通りの自分が出せたと思う」と語り、あくまでも実力を出し切った上での乾杯を認めていた。この試合後、実は渡部は引退も考えた。圧倒的な力の差を見せつけられたことが1つの原因だろう。しかし、渡部は少し時間を置いた後、冷静に気持ちを切り替え、練習を再開した。

ベテランファイターとしての意地

朝倉に敗戦した後も、渡部はRIZINのリングへ上がり続けた。2021年10月、渡部の次なる相手は内藤頌貴に決まる。内藤は、元ONE王者・内藤のび太の弟。修斗の舞台で実績を積み上げた内藤の持ち味は、会場を燃え上がらせる、駆け引きなしの真っ向勝負だ。試合前、渡部は内藤のことを「とにかくガッツがある選手。サウスポーの左ストレートが特に強力で印象深い」と評価していた。

しかし、この試合は渡部がベテランとして、経験値の違いを見せつける。1ラウンド、サウスポーに構える内藤に対して、前に出てプレッシャーをかける渡部。開始早々、渡部はシングルレッグを決めると、そのまま内藤を持ち上げテイクダウン。そこから渡部は抵抗の隙を与えず、一気にダースチョークで絞め上げる。これが見事に極まり、1ラウンドで試合終了。得意の寝技を炸裂させた渡部が、RIZIN 2勝目を挙げた。

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試合後、マイクを取った渡部は「これがマジカルチョークです。朝倉海選手に負けて、このまま格闘技を離れようかと思ったんですけど、まだやり残したことがある。これからも応援よろしくお願いします」と語り、現役続行を宣言した

RIZIN4戦目は、白熱した接戦に

2022年4月には、須藤拓真と対戦。須藤はここまで5戦全勝・全一本勝ち、しかも全て足関節という特異なスタイルのファイター。渡部は試合前、「しっかり勝って自分の道をこれから切り開いて行きたい」と意気込みを語っていた。キャリア36試合のベテラン・渡部と若手の須藤の対戦に注目が集まる。

1ラウンドから両者は、ローキックでの攻防を見せる。ラウンド中盤、須藤がタックルに入ると、渡部は前方で受け止め、さらにフロントチョークを極めに行くが、これは失敗に。グラウンドの展開で、渡部がマウントを取り優勢になるも、須藤も下からヒジとパンチを放ち応戦。互角の勝負が続き、1ラウンドが終了。

2ラウンド、須藤がついに得意の足関節技を見せる。カーフキックを放つ渡部だが、須藤に手を掴まれ、そのままグラウンドへ。そして潜り込みをした須藤は、渡部の足を掴んで一気に足関節を狙う。渡部の危機が続くが、ここでタイムアップ。2ラウンドが終了した。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2022/04/16/493e26d9b78de541b9b05d2691e57b4d5e0ea300_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

勝負の3ラウンド、決着をつけたい須藤は、タックル、バックキック、イマナリロールと立て続けに攻め、渡部に主導権を渡さない。しかし、渡部も冷静に須藤の攻撃を切り、決定打は許さない。最後は、腕十字を狙った須藤の組みから渡部が逃れ、執念のパウンドを打ち込んだところで試合が終了。決着は判定へともつれ込んだ。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2022/04/16/d968be98e9d37155ff46ad5dd05d473f1ca97cc6_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

運命の判定はスプリットの2-1になるも、軍配は須藤に上がった。渡部にとっては痛いRIZIN 3敗目となった。試合後、渡部は「自分に対してすごく情けないというか、ガッカリ」と言葉少なげに語り、会場を後にした。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2022/04/16/12fa2d7e4798abe4ace2f218697e70e6b202f396_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

渡部は現在32歳。この年齢や近年の勢いを考えると、渡部がRIZINの頂点に立つことはそう簡単ではない。実際、バンタム級では王者・堀口恭司を筆頭に、朝倉海や井上直樹、扇久保博正といった猛者が揃っている。まさに”群雄割拠の戦国時代”が到来していると言っても過言ではない。

ただ、渡部にはトップ戦線に食い込むだけの精神力がある。その精神力とは、一言で言えば「MMAが好き」という、格闘家としての原点にある想いだ。「好きだから格闘技をやっている」とインタビューでも度々答えている渡部だが、それは本当のようだ。年齢を重ねようが、ジムではひと時も休まずに練習に汗を流し、貪欲に成長を求めている。

どんなに厳しい試合の前でも、不思議と番狂わせを期待させてくれる渡部。もしかしたら、誰にも想像できないような成長を見せ、RIZINで旋風を巻き起こしてくれるかもしれない。今日も渡部は練習に励んでいる。これからの渡部の活躍に、目が離せない。

渡部修斗の知りたいトコ!

彼女はいるの?

渡部の試合には、いつも女性のセコンドがついている。彼女の名前は、青野ひかる。実は青野と渡部は付き合っている。出会いは4年前。渡部が指導者として携わっているジム「ストライブル新百合ヶ丘」に、青野が入門してきたことをきっかけに、2人は親交を深め、交際へ。今は2人でRIZINの舞台に立つことを目指しており、それが渡部の現役続行のモチベーションにもなっている。

※画像URL:https://pbs.twimg.com/media/ED8F-AcUYAExjEd?format=jpg&name=large(マリアパのツイートより引用)

渡部の趣味は?

渡部の趣味は、「スイーツ巡り」と「ペットショップ巡り」だ。リング上で戦う姿からは、全く想像ができない趣味だが、その熱は本物。自身のYoutubeチャンネルでは、スイーツパラダイスにて、美味しいケーキを頬張る渡部の可愛らしい一面が見られる。

渡部の父は、修斗の元王者?

実は渡部の父親は、修斗初代ウェルター級王者の渡部優一なのだ。将来的に修斗をやらせたいという思いから息子に「修斗」の名を付けた、と巷で言われることが多いが、実際は違う。「修斗」の言葉には、「人生にある様々な斗い(たたかい)を修めることで人として成長していく」という意味が込められている。その意味合いに心惹かれた父親が、息子に修斗の名をつけたのだ。

まとめ

元修斗世界王者の父親のもとで育ち、学生時代は柔道とレスリングに励んでいた渡部。大学時代に、K-1の伝説・魔裟斗の引退試合を生で観戦すると、図らずも人生最大の衝撃を受けた。即座にMMAのプロを目指すことを決意した渡部は、ジムで鍛錬を積み、ZST、NEXUSを中心に活躍。特にNEXUSでは、バンタム級チャンピオンにまで上り詰めた。

RIZIN参戦後は、強敵・井上直樹や朝倉海に敗北を喫するも、修斗王者の田丸を見事に撃破。トップ戦線に食い込めるかどうか、渡部にとっては今が瀬戸際と言えるだろう。

※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2020/08/09/4dd7196d01494279be7cb95560a6a39d59360a03_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

渡部は今日も大好きな格闘技をするためにジムに通い、練習に汗を流している。「続けられる限りは格闘技を続けたい」そう明言している彼は、ベテランと言われようが、若手に劣らない勢いで、これからも格闘技を盛り上げてくれることだろう。今後の渡部の活躍に、目が離せない。

※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用