石渡伸太郎の選手紹介、〜名勝負製造機、RIZIN漢塾塾長のすべて〜

今や朝倉兄弟、那須川天心、ボンサイ柔術など、新たなスターの活躍によってかつてのK-1、PRIDE全盛の輝きを取り戻しつつある格闘技界だが、その格闘界の冬の時代を支え続けた漢、石渡伸太郎。この名を知る者は決して多くはない。現役時代は、7年に渡ってパンクラスバンタム級の頂点に立ち続け、多くの強豪外国人をも退け、団体の威信を背負って堀口恭司と伝説の死闘を繰り広げた。

日本人の強さと大和魂を世界に、そして何よりも後に続く国内の若き格闘家達に見せ続け、今もその背中をRIZINトップファイター斎藤裕や平本蓮らが追いかける、”RIZIN漢塾 塾長”と呼ばれる男である。

今の格闘技ブームの礎を築き、現役を引退してからも尚、格闘技界を支え続ける石渡が、どのような激動の格闘人生を送ってきたのか。今回は石渡伸太郎を丸裸にしていこう。

画像1: 試合内容
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2020/06/12/78e1b11792dfdf4f1cee49318408a3276a6557d6_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

石渡伸太郎のプロフィール

名前:  石渡伸太郎

生年月日: 1985年2月21日

出身地:大阪府・大阪市

身長: 169cm

体重: 61.0kg

戦績 :    26勝9敗(KO 9 SUB 2) 4分

階級 :   フェザー級⇒バンタム級

所属: CAVE

獲得タイトル : バンタム級 キング・オブ・パンクラス

入場局: FIRE BALL 「SUPERSTAR」

バックボーン : 柔道(黒帯弐段)

公式HP : ー

Twitter: @caveshinta

Instagram: caveshinta

YouTube: 石渡伸太郎 Shintaro Ishiwatari

アパレル : ー

ファンクラブ : ー

今年で37歳となった石渡伸太郎。現在も”RIZIN 漢塾 塾長”として、格闘技界にしっかりとその存在感を残している。彼がプロ格闘家としてどのような人生を送り、漢塾塾長と呼ばれるまでになったのか、まず石渡のプロデビュー前から見ていこう。

柔道一直線からプロの総合格闘家へ

大阪府大阪市で生まれた石渡は中学から柔道を始め、高校、大学と柔道一直線の学生生活を送るが、柔道での自身の限界を感じ始め修斗道場・GUTSMANの門を叩く。後に「入る場所を間違えた」と言うほどGUTSMANでの練習は厳しく、時には練習がイヤで帰るほどだった・・という情報があったが、実はこれは間違いで、同じ道場で練習していた桜井マッハ選手がイヤで帰っていたそうだ。笑

その後、アマチュアで8戦7勝。全日本修斗選手権準優勝という、堂々たる成績を引っ提げてプロのリングに上がっていくのだが、2006年3月3日のプロデビュー戦は2RTKOで敗戦。初っ端からプロの洗礼を受ける事となったが、ここから石渡は、9戦して2分を含む無敗で連戦連勝。しかもその多くが1RでのKO勝利という内容で、徐々に周囲から注目が集まり始める。

しかし2009年3月20日、後にUFCで大活躍する事になるジョン・チャンソンに、チョークスリーパーで一本を取られ連勝が途絶える。

次戦でも土屋大喜に1R0:20秒で瞬殺されてしまった石渡は、闘いの幅を広げるために、ボクシングやムエタイ等の新たな攻撃の要素を取り入れていく。

その後SRCのトーナメント大会に出場し準々決勝まで駒を進めるが、中原太陽に3-0の判定で敗れ敗退。しかしその間にも必死に鍛錬し、格闘技と向き合ってきた石渡の努力が、その後の主戦場となるパンクラスで実を結ぶ事になる。

パンクラスで無敵の王者に

闘いの舞台をパンクラスに移した石渡は、2011年8月7日のパンクラス初戦こそドローであったが、次戦は手塚基伸を判定で破ってキング・オブ・パンクラス挑戦権を獲得。

パンクラスでの試合わずか3戦目で、2011年12月3日、すでに二度キング・オブ・パンクラスを防衛している井上学と拳を交える事になる。

試合が始まると1Rから石渡が前に出る。柔道で培った強靭なフィジカルと、ムエタイ、ボクシングで必死に磨いてきた打撃の技術が見事に融合し、井上を打撃で圧倒していく。

2Rに入っても井上に石渡の強烈なパンチが入り、動きが一瞬止まるなど、石渡の攻勢が続く。終盤で井上がテイクダウンし、細かいパウンドを浴びせるがここでゴングが鳴る。

その後も打撃では石渡がやや優勢、井上がテイクダウンを狙うも、きっちり防がれて試合は終了し、2-0の判定で石渡がバンタム級キング・オブ・パンクラスに輝いた!

その4ヵ月後には早くも初防衛戦が行われ、赤井太志朗を判定の3-0で破り見事タイトル防衛を果たす。勢いをつけた石渡はここから修斗での試合も含む3連勝、手塚との試合からは怒涛の6連勝! 名実共にパンクラスバンタム級を代表する選手となり、団体の威信を背負って、あの男と死闘を繰り広げる事となる。

伝説の一戦

2013年6月22日。この日、日本格闘界の歴史に残る一大イベントが行われた。日本初の試み、当時の”パンクラス現役王者”石渡と、”修斗バンタム級王者”堀口恭司、両団体を代表する男たちが、意地と威信を賭けて闘う。

ルールは5分5Rと非常に過酷なものだ。石渡はこのルールについて試合前に「どちらかが死ねっていう事」と命をかけて闘う事を覚悟していた。

この試合は今でも多くのコアな格闘ファンに語り継がれる伝説の試合となる。

1R序盤から試合は大きく動く。堀口が一気に距離を詰め、ラッシュをしかけるがスリップしバランスを崩す。その隙を見逃さず石渡が堀口の首に手を回し、スリーパーホールドの形に。一瞬これで試合が決まるかと思われたが、石渡は極めきれずに堀口の首に回した腕をほどき、その隙に堀口はなんとか立ち上がる。

石渡は再び距離を詰めていき堀口を抱えテイクダウン、金網に堀口を押し付けて塩漬け状態になったが、そこから堀口は驚異の身体能力を見せる。何と、上から押さえつけている石渡の身体ごと回転させ立ち上がってしまったのだ。堀口はそこから強烈なフック、膝と一気にラッシュをしかける。しかし石渡は猛攻をかいくぐりながら距離を詰め、組み合ってから再びテイクダウン。

必死に逃れようとする堀口、そして何があっても離さない石渡。ラウンド終了10秒前、石渡は敢えて堀口を離し打ち合いに持って行くが、ここで堀口からカウンターに遭いラウンドが終了する。

2Rが始まると、堀口は石渡のタックルを警戒し、距離を取って石渡の隙を伺う。そして石渡の右フックに絶妙なタイミングで右カウンターを入れ、そこを突破口にハイキックからの猛烈な左右のフック・ストレートでラッシュをしかける。しかし石渡もその剛腕をブンブン振り回し、一旦堀口を遠ざける。石渡の額には激しい鮮血。しかし、それがどうしたと言わんばかりに石渡はグイグイと距離を詰め、堀口のローに合わせて渾身の左ストレートをヒットさせ堀口はマットに転がる。

ここからは打撃とグラウンドが入り乱れての大混戦。戦略も駆け引きもない、命を賭した

男と男の勝負だ。2R後半、大振りの右フックをダッキングでかわした堀口の首を石渡が取り、フロントチョークの体勢に入るがここでも堀口は凌ぎきり、2Rは終了。

3R、既に限界を超えた闘いを続けている両者、思うように身体が動かせず、試合の流れも停滞する。しかし3R後半、疲れてガードが下がってきている石渡に、堀口のハンマーの様な大振りの右がヒット。堀口は更にラッシュを仕掛けるが、石渡が組みついて堀口の動きを止める。3R終了間際、グラウンドから立ち上がろうとする石渡の背後に回り、堀口が完全にスリーパーを極め、「石渡もこれまでか!?」 という所でゴングに救われ3R終了。

4R、既に立っているのもやっとな両者、試合は完全に膠着状態に。石渡が柔道家らしい綺麗な投げを見せる場面もあるが、極めきれる力は残っておらずスクランブルに。両者決定的なチャンスが無いまま最終ラウンドへ。

最終ラウンド、試合は急展開を見せる。堀口のタックルフェイントからの右フックが、石渡の顎を完璧に捉えたのだ。ここを最後のチャンスと見た堀口は、全ての力を振り絞って命がけのラッシュをかける。ハイキックを織り交ぜながら息もつかせぬ左右のフック、石渡は一旦倒れこむがそこに堀口は容赦なく追撃を加える。

しかし石渡のどこからそんな力が沸いてくるのか、パウンドの嵐を浴びながらも再び立ち上がり、意識があるのかもわからない中、必死に両腕を振り回す。その腕の振りに合わせて堀口はカウンターを決め、石渡は完全にグロッキーに。

とっくにレフェリーストップがかかってもおかしくないのだが、石渡のあまりの気迫と闘志に圧倒され、レフェリーも止める事が出来なかったのだろう。。だがグロッキー状態の石渡に堀口がダメ押しのワンツーを入れたところで、ついにレフェリーストップ。日本格闘史に残る死闘が幕を閉じた。

敗れはしたが、この一戦に全てを賭けて闘った石渡の生き様に、多くの称賛が集まった。

この一戦からも多くの事を学んだのだろう。石渡は更に力をつけ、大きく前進していく。

パンクラスの絶対的守護神

その後の石渡のパンクラスでの活躍はもはや伝説と言っても過言ではない。今やRIZINでもトップファイターの仲間入り目前とされるアラン”ヒロ”ヤマニハ、DEEP二階級王者大塚隆史、次々と日本のトップ選手が敗れ、もう誰も止められないかと思われたビクターヘンリー等、錚々たる強豪達を次々に撃破。ほとんどの試合は判定という事からも、圧倒的な攻撃力があるというわけではないかもしれないが、1発でも多く相手選手にヒットさせようと、ヨレヨレになっても最後の最後まで、驚異の粘りで拳を振り続けた結果だろう。

また、ノンタイトル戦でジョナサン・ブルッキンズに一度は敗れるも、タイトル防衛戦ではきっちりリベンジしてベルトを守りきった。

そして2017年5月28日。5度目の防衛戦で最強の挑戦者、ハファエル・シウバを迎える。シウバはこれまでここまでパンクラス全勝。あのビクターヘンリーをも下した選手という事で、ヘンリー戦で苦戦を強いられた石渡は若干劣勢と見られていた。

実際の試合でも序盤は1R、2R共にシウバが優勢。スタンディングでも防戦を強いられ、寝技でもドミネートを許し、周囲に石渡の王座陥落を予感させた。ところが、3Rに入ってから石渡が猛反撃、グラウンドで上になると激しいパウンドを浴びせシウバの体力を削っていく。4Rもスタミナが切れ始めたシウバのタックルを潰し、肘やパウンドを喰らわせて圧倒。最終ラウンドも石渡が次々に有効打を奪い、石渡が優勢のまま試合終了。

序盤リードされていたポイントを残り3ラウンドで奪い返し、見事に3-0の判定で逆転勝利を果たした。

https://www.pancrase.co.jp/chronicle/standard/009.html
※画像URL:https://www.pancrase.co.jp/chronicle/standard/img/009/000.jpg(PANCRASE公式より引用)

石渡の魅力はこの長丁場での強さにあると筆者は感じている。序盤いかに劣勢であっても、一見スタミナ切れのように見えても、休むことなくひたすら拳を振り続ける。一度「この勝負、もらった」と思ったはずが、なかなか決められないと対戦相手も焦ってくるものだ。その焦りからスタミナを消耗し、反して石渡は更にギアを上げて来る。どんな過酷な試合の最中でも消える事の無い闘志は、消耗戦になるほど相手を圧倒し、「こいつはもう何ををやっても倒れない」と思わせ、心を折っていくのだ。戦績を見るとそれはより明白になる。なんと判定に持ち込まれた時の戦績は18戦15勝3敗と凄まじい勝率を誇っているのだ!

この泥臭いながらも、熱い闘志にまみれた石渡のファイトが ”RIZIN漢塾 塾長”と呼ばれる所以だろう。

事実上パンクラス最後の試合で最強の敵をうち破った石渡は、さらなる強敵を求めてRIZINのトーナメントに参戦する。

RIZIN参戦へ

RIZINで再び宿命のライバルと激闘

ハファエルとの試合後、堀口恭司がRIZINへの参戦を表明したため、堀口にリベンジを果たすべく石渡も参戦を表明。堀口も出場するRIZIN WORLD GRAND-PRIX 2017に出場する事になる。しかし、トーナメントの組み合わせ的に、決勝まで進まなければ堀口と闘う事は出来ない。石渡は20171年10月15日、堀口が見守る中アクメド・ムサカエフを迎えての一回戦に臨んだ。

1R前半は石渡が押していたが、途中でムサカエフからのローブローが入り、試合が中断。再開するも、流れが変わり、ムサカエフに強いプレッシャーをかけられて、やや石渡が不利な状況に。

しかし2R以降は、やはりムサカエフのスタミナが落ちていくのに反して、石渡の動きは冴えていき、終始石渡のペース。ムサカエフが仕掛けても石渡は完全にムサカエフの動きを封じ、試合終了間際にはテイクダウンからパウンドやローキックで確実に有効打を重ね、グラウンドでもムサカエフを支配して試合終了。3-0の判定で石渡が勝利した。

石渡はRIZINのトーナメント二回戦に進出。対するはケビン・メッシ。

ゴングが鳴り、両者が拳を合わせた瞬間に、メッシは空を切り裂くような回し蹴りを2度放つ。しかしこれは間一髪で交わし、冷静に相手を見ながら石渡が放った右フックがヒット。その後はグラウンドの展開になり、顔面へのパウンドやショートパンチでメッシを削っていく。その後再びスタンディングに移り、メッシが放ったローキックの戻りに合わせて、石渡の強烈な右フックがメッシの顎にクリーンヒット。完全に意識を失った倒れ方をしたため、追撃前にレフェリーストップが入り、石渡はたった一発のフックで試合を終わらせてしまった。

そしていよいよ2017年12月31日。格闘技冬の時代を支えてきた石渡が、ついに大晦日の大舞台でその勇姿を全国の格闘技ファンに披露する日がやってきた。

この日は準決勝と決勝の2試合同時開催。

つまり準決勝でスタミナを失うと次戦に響くので準決勝の勝ち方も重要になってくる。

対するは奇しくも、2014年12月31日に拳を交え、タオル投入によって石渡に1RTKOで敗北した、大塚隆史である。3年前の雪辱に燃え、石渡をしっかり研究しているのはもちろん、3年前の勝負以降、7戦6勝1分と無敗でここまでやってきて絶好調の大塚。前回のように簡単に倒せはしないだろう。

1Rが始まると始めはお互い様子を見ていたが、石渡のワンツーに対して放った大塚の完璧なカウンターフックが顔面を捉え、石渡は尻もちをつく。そこに一気に畳みかけようと大塚はパウンドを狙っていく。しかし石渡は無理やり立ち上がり、逆に大外刈りで大塚をテイクダウンし、強烈なパウンドを容赦なく叩きつける。パウンドも強烈だが、この時の石渡の形相も凄まじい。これは、完全にキレてる! あまりの気迫に大塚は何も出来ず防戦一方。そんな大塚に対し、滅多にやる事のない顔面踏みつけまでやる石渡。一体何が彼をそんなにキレさせたのか。その後も石渡は猛攻を続けるもKOまでには至らず2Rへ。

この時の事を振り返って石渡は「なんて言うんですかね、腹立ったんですよね」と、珍しく理不尽にキレていた事を暴露している。

だがインターバルで大塚はラウンドガールをガン見していただけに、まだ余力は残っていそうだ。

2Rは立ち技を中心に試合は進み、石渡が次々に有効打を与える。立ち技では不利と見た大塚がテイクダウンを狙うが、石渡の完璧なタックルディフェンスに阻まれ、自分の展開にはもって行けない。このまま石渡ペースで終わるかと思ったら、2R終了間際に大塚の蹴りが石渡の急所にクリーンヒットし、石渡は悶絶。ムサカエフに続き今大会で2度目のローブロー、これはツイてない・・。

3Rは両者共に突破口を見出せずにいたが、試合終了1分前に大塚の右ストレートに合わせて、石渡が強烈なカウンターフックを大塚の顔面に叩きこむ。たまらずマットに座り込んだ大塚に、文字通りの嵐のような猛攻をしかける。しかし大塚もタフな選手だ。どんなに打っても倒れないばかりか、試合終了間際には、ほぼノーガードで石渡と打ち合い、観客を沸かせた。ゴングが鳴ると、両者お互いの健闘を称えあったが、大塚は敗北を確信したのか、悔しそうにマットを踏みつけた。結果は、3-0で石渡の勝利。ついに大晦日の大舞台でRIZINのトーナメント決勝出場を勝ち取ったのだ。

宿敵との再戦

そして今大会最大の標的、堀口恭司もまた、強敵マネル・ケイプとの死闘を制して決勝に上がってきた。舞台、役者ともに揃い、いよいよ因縁の対決が始まる。

ゴングが鳴ると、前回散々殴り合ってお互い手の内がわかっているだけあって、しばらくはお互いに様子見をする展開に。1R中盤で石渡の左膝が堀口の鎖骨の当たりにヒットし「バチン!」という音が会場にこだまする。しかしなんと堀口はその足を取ってそのまま抱え上げ、軽々とバスターで石渡をテイクダウンしてしまう。

後日談で堀口は「この膝は全然入っていないです」と語っているように、派手な音がした割には効いていなかったようだ。

テイクダウンされた石渡は、なんとか逃れようともがく間に回転してうつ伏せになってしまい、堀口にバックマウントを取られてしまう。そこに堀口が容赦なく鉄槌の雨を降らす。この拳を後に石渡は「脳みそを直接殴られてる感じ」と表現している。そんな鉄槌が雨の様に振ってくるんだからMMAは恐ろしい。

実は石渡はここで意識が飛んでいるのだが、殴られて意識を戻され、また殴られて飛ぶという、危険な状況に陥っていた。しかしそんな状況下でも、石渡は無理やり立ち上がる。堀口もとんでもないが、石渡もやはり怪物である。ここで立ち上がる石渡に多くの人は驚いていたが、堀口だけは「石渡さんは立ってくるな」と思っていたという。そして、これだけのダメージを受けていながら、石渡は下がる事無く前に出て堀口に反撃を試みる。ここで一旦ゴングが鳴る。

ダメージがあまりに大きく後が無い石渡は、2Rが始まると一気に勝負をかけ前に出る。しかし堀口は冷静にその動きを見極め、石渡が出した右フックと全く同じタイミングで右フックを叩きつけ、石渡はマットに沈む。間髪入れずに追撃する堀口を慌てて審判が止めて、宿敵堀口へのリベンジは失敗。石渡のTKO負けとなり、堀口恭司がRIZINバンタム級トーナメントの王者となった。

最後の間髪入れない追撃について、堀口は「また立ってくるなと思ったんで石渡さんが」と語っていた。それだけ堀口も石渡の折れない心と打たれ強さに脅威を感じていたのだろう。

ちなみにこの後、石渡は一時的に記憶喪失になり、「俺誰と闘ったの?大塚?」と堀口と闘った事さえ覚えていなかった。堀口の打撃の恐ろしさを痛感つるエピソードだ。

度重なる激闘、そして引退へ・・

この敗戦からしばらく石渡はリングから遠ざかるが、1年半のブランクを経て、再びRIZINの舞台に舞い戻ってくる。

2019年7月28日RIZIN.17。相手は佐々木有流迦。実は佐々木は5年前に石渡への挑戦者として名乗りを上げたが、無視されてしまったという。佐々木にとっては因縁の相手であり、ずっと挑戦したい相手だっただけに気合が入る。


※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2019/06/21/67b240c489d1b6409716c1d4103a78e76ebbf7e7_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

ゴングが鳴ると、いきなり佐々木が膝を出して飛び込んでくるが、それ以降はお互い距離を計っていて大きな試合展開はない。中盤に入ると石渡が動き出す。左の強いローを入れた後に佐々木の左に鋭い左カウンターストレートを決め、佐々木がたまらず組みつくが、逆にテイクダウンを奪い石渡が上から攻め続ける。途中で佐々木が上になり、グラウンドを支配するが、大きなチャンスは1R終了。

2Rに入ると佐々木は、石渡の右フックを交わして石渡の足を取り、寝技勝負に持ち込む。グラウンドではやや佐々木に分があるか、石渡は佐々木にコーナーに押し込まれ、自分の動きが出来ない。なんとか離れてスタンディングでの闘いに持って行くが、石渡が放ったローに佐々木が強烈な左カウンターストレートを決め会場はどよめく。しかし2R後半、石渡が一気に距離をつめて放ったフックが佐々木の顔面を捉え、佐々木はマットに尻もちをつく。そこに一気に石渡が膝、パウンドで畳みかけ、首に腕を回しながらノースサウスポジションへ。その体勢から肩固めを決め、佐々木はタップ。石渡の試合では珍しく一本勝ちを極めた。

RIZIN史に残る名勝負へ

そして見事な復活を遂げた石渡に対し、扇久保博正が次の挑戦者として名乗りを上げる。

その挑戦を受け、佐々木戦の5ヵ月後、同じRIZINの舞台で二人は拳を交える事になる。

1R、石渡は扇久保のテイクダウンを警戒し、距離をとって闘うが、ローキックを取られ、テイクダウンされる。寝技も上手く、フィジカルも強い扇久保にグラウンドで苦戦するが、得意の根性で無理やり立ち上がり、会場を沸かせる。その後、コーナーで飛び込みながらフックを打つ扇久保に膝を合わせ、扇久保に膝をつかせるが、扇久保もタフな選手、すぐに立ち上がり、そこから猛反撃にでる。両者熱くなり、激しく打ち合うが、セコンドからの「ちょっと落ち着こうか!」という声に反応し両者一旦距離を取る。1R終了間際、石渡がキレのある左ストレートをヒットさせ畳みかけようとするがここでゴング。

2Rも拮抗した打撃戦が繰り広げられるが、両者とも非常にタフな選手のため、互いに大きなダメージは見られない。扇久保はグラウンドの展開に持って行きたいが、石渡にうまく避けられ、そのままラウンドは終了する。

3Rに入ると一気にお互い距離を縮め、扇久保はタックルから石渡の足を持ち上げようとするが、石渡は足を持たれたままマットに手をついて踏ん張る。そこに扇久保が強烈な蹴りを顔面に入れて石渡はマットに転がるが、またすぐに立ち上がる。そこに扇久保が飛びついてグラウンドに引き込むが、結局下からは攻めきれずに再びスタンディングへ。業を煮やした扇久保は、石渡の左フックへのカウンターボディを皮きりに、一気に勝負を決めようと猛烈なラッシュを畳みかける。石渡もそれに対抗し腕を振り回すが、それに対する扇久保のカウンターパンチが次々にヒット。これにキレた石渡が鬼のような形相で左右のフックを扇久保の顔面に叩きつける。この反撃に対し扇久保も更に熱くなり、両者戦略も駆け引きも捨て、壮絶な打ち合いに。最もシンプルな、どっちが強いのか、どっちの闘志が勝るのか、という激闘に、客席からは大きな歓声が起こる。

両者ヨレヨレになりながらも前に出て打ち合う。終盤には扇久保は自らを鼓舞するように雄たけびを上げながら拳を振る。しかしタフな両者は倒れる事なく勝負は判定へ。拮抗した試合だったが、惜しくもスプリット判定で石渡の敗北となった。

現役最後の挑戦、RIZINバンタム級トーナメント参戦

度重なる激闘の末に石渡は首のヘルニアに悩まされるようになり、再び1年半近く試合から遠ざかる。

しかし、漢・石渡は、ボロボロになっていく身体をもう一度奮い立たせ、再度RIZINのリングに戻ってくる。

かつて決勝まで勝ち残ったRIZINのトーナメントへの再挑戦である。

2021年6月13日に行われたトーナメント一回戦で当たったのは井上直樹。

前試合で”RIZINバンタム級四天王”の一人、元谷友貴から一本を奪い、優勝候補として大注目されている若手選手だ。

1Rが始まると、両者相手の間合いに入らないように距離を計り合う。徐々に互いの間合いが縮まり、石渡の手が出始め、試合が動き出す。井上が石渡をコーナーに追い詰め、出した左に、石渡も右で反応し、両者相打ち。石渡のパンチは井上の顎を揺らし井上は一瞬グラつく。そこに追撃を仕掛ける石渡。しかし石渡の左フックに、井上はカウンターの右フックを出し、石渡の顔面を捉える。今度は石渡がグラつき、今度は井上が猛追、慌てて避けようとしてマットに転がった石渡を、井上の長い足から繰り出される無情のサッカーボールキックが石渡の顔面を打ち砕く。即座にレフェリーはストップをかけ、1R1:58秒でのTKO負けとなってしまった。

これまで殆どの試合で、生死をかけた死闘を繰り広げてきた石渡。身体もボロボロになりながら、不屈の魂と闘志だけでここまで突き進んできたが、これだけの激闘をいつまでも続けられるものではない。試合後、ついに石渡は引退を表明。2021年9月19日、RIZIN30において引退セレモニーが行われた。引退の挨拶では「本当に幸せな格闘生活でした」と語り、大観衆に労われてのセレモニーとなった。

現役からは退きはしたが、SNSやYoutube、そして後進の育成も精力的に行っており、”RIZIN漢塾 塾長”として今もしっかりと存在感を放っている。そんな石渡伸太郎からは、まだまだ目が離せない。

石渡伸太郎の知りたいトコ!

石渡伸太郎の奥様は誰もが羨む美人妻!?

石渡の事を検索すると、必ずサジェスト欄に「妻」という文字がセットで出て来る。それほど多くの人に注目される石渡の妻とはどんな女性なのか。画像で検索してみると、出て来る出て来る、噂に違わぬその美しい女性の画像が。

https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1913105
https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1913105

お名前を「麗」さんと言い、「日本酒おばんざい 梵」という小料理屋さんを経営しているという。度々メディアにも取り上げられ、あの「島耕作」の作者弘兼憲史先生も、麗さんに惚れこんで足しげく通ったという。こんなステキな奥さんをゲットした石渡選手は恋愛に対しても不屈の闘志を持っているに違いない。

麗さんとの間に一人娘を授かり、度々SNSにも娘さんが登場している。

石渡・妻 vs 扇久保・妻

RIZINのリングでは記憶に残る熱い死闘を繰り広げた石渡と扇久保。実は扇久保の妻・京香さんも美人妻として名を馳せているが、なんと石渡の美人妻・麗さんと京香さんが、RIZIN CONFESSIONで対談対決を果たしている。といっても険悪なモノではなく、京香さんが麗さんに格闘技の妻としての心構えを聞く、というもの。途中で京香さんが、女性格闘家のRENAや浅倉カンナのモノマネをする場面では、麗さんがやや困惑する場面もあったが、格闘家の妻としての苦悩と努力を語る場面もあり、ファンの胸を打つ対談となっている。

コメディ色の強いYoutubeチャンネル

試合での石渡はまさに「漢の中の漢」という感じだが、Youtubeチャンネルはかなりコメディタッチなモノとなっている。石渡の漢塾塾生のアキラを、バナナ大好きなゴリラ的なキャラにして出演させたり、当時芸能界の裏側を暴露して話題になっていたガーシーの真似をして格闘会の裏側を暴露するとし、しょうないネタを世に送り出すなど、秀逸な企画も多く、演出力もかなり高いと見える。

アンチの多い平本連の入塾や、石渡のセコンドとしての指示が物議を醸したり等の理由でアンチも多く、コメント欄もなかなかエキサイティングである。是非石渡のYoutubeチャンネルもチェックしてみてほしい。

https://www.youtube.com/channel/UC9mvevuZL9baKdOfcurW4Xw/videos

まとめ

ここまで石渡伸太郎のストーリーを見てきたが如何だっただろうか?

格闘技冬の時代を必死に走りぬき、現在も国内外で大活躍する超一流選手達と激闘を繰り広げ、現在では多くの若き格闘家達が彼の背中を追いかけ、RIZINの舞台を目指し日々鍛錬している。

時期的なものもあり、彼の魂が震えるほどの名勝負の数々は、当時の多くの人たちの目に触れる事はなかったが、石渡の魂は確実に次の世代へ受け継がれ、そして”RIZIN漢塾 塾長”を継承する者がいつか必ず現れる事だろう。

今のこの格闘技ブーム、そしてRIZIN群雄割拠の時代に、漢塾塾生達がどうやってトップファイターに食い込んでいくのか、これからも石渡と彼らの活躍を皆さんと見守っていきたい。

画像1: 試合内容
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2020/06/16/58fc623bacaedf5c40dcdc58b2ef5adc6374a64d_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)
※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用