「RIZINバンタム級随一の逸材」、それは“忍者レスラー”太田忍で間違いないだろう。
2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、レスリング・グレゴローマンスタイルで銀メダルを獲得し、2019年の世界選手権では金メダルを獲得。太田は、トップレスラーとして世界に名を馳せる。
そんな太田は、2020年にMMAへの転向を発表し、その年の大晦日にRIZINデビューを果たした。レスリングをバックボーンに持つMMAファイターは多くいるが、レスリングで世界一を獲った太田ほどレスリングを極めたものは数少ない。太田はそれほどまでにずば抜けた素材を持っている。同じジムで練習する、RIZINバンタム級JAPANグランプリ覇者の扇久保は、太田の実力を「バケモン」と評する。
今回はそんなバンタム級No. 1の逸材、太田忍を徹底解剖していこう。
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2021/12/31/b29b8bcba362a4c36c9f6a36429ebe81a666cc74_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)
太田忍のプロフィール
名前 :太田忍
生年月日 :1993年12月28日
出身地 :青森県三戸郡五戸町
身長 :165cm
体重 :61.0kg
戦績 :4戦 2勝(1KO) 2敗
階級 :バンタム級
所属 :パラエストラ柏
獲得タイトル :リオデジャネイロオリンピック銀メダル、世界選手権優勝
入場曲 :ー
バックボーン :レスリング
公式HP :ー
Twitter :@shinobu _ota _mma
Instagram :shinobu _ota _mma
YouTube :太田忍Otashinobu
アパレル :ー
ファンクラブ :ー
今年でまだ29歳と伸び盛りの太田。2022年7月のRIZIN.37では、バンタム級トップファイターの元谷友貴と対戦し、判定までもつれ込む熱戦をするも敗北。トップとの壁を知ることとなった。現在、MMA戦績2勝2敗となっている。
では、太田はレスリングでどのような結果を残し、MMAに挑戦したのだろうか?
エリートレスラー、太田忍の光と影
レスリングの天才として活躍
青森に生まれた太田は、小学校1年生の時からレスリングを始める。すると、すぐに才能を開花させ、全国少年大会で4連覇を達成。中学生になると、全国中学選手権で連覇を果たし、天才レスラーとして名をあげた。
高校からは地元の青森を離れ、山口県の柳井学園高等学校に進学。しかし、そこで太田はフリースタイルでタイトルを獲得できない挫折を味わう。太田はここで新たにグレコローマンスタイル挑戦を決意。レスリングは、世界レスリング連合によって大きく二つのスタイルに分けられている。一つがフリースタイルで、もう一つがグレコローマンスタイルだ。フリースタイルは、全身のどの部位を攻防に用いても構わない。その一方で、グレコローマンスタイルは、腰から下の攻防を禁じられ、上半身の攻防のみで戦う競技形式である。
太田は、グレコローマンスタイルでその実力を発揮し、2011年のおいでませ!山口国体で優勝、全国高校選手権でも連覇を果たした。高校でグレコローマン転向以降、圧倒的な成績を残した太田は、グレコローマンスタイルの強豪である日本体育大学に進学。
日体大進学後も太田の勢いは止まらず、2年時にアジア選手権2位、3年時にハンガリー・グランプリで国際大会初優勝を飾り、4年時には天皇杯優勝という成績を残す。海外では、素早い身のこなしから「ニンジャレスラー」の異名をつけられるほどとなった。
リオデジャネイロ・オリンピック出場へ
2016年3月に大学を卒業した太田は、さらなる成長とオリンピック金メダルを目標に、ALSOKに入社した。3月のリオデジャネイロ・オリンピックアジア予選に出場した太田は、順調に勝ち上がり決勝へ。決勝では、中国のワン・ルミンと対戦し敗れてしまうも、2位までに与えられるオリンピック出場権を獲得した。
同年8月に、太田は念願のオリンピックに出場し、59キロ級で試合に挑んだ。初戦では、ロンドン五輪55キロ級金メダリストのハミド・ソリアンに勝利する金星を挙げる。準決勝ではロンドン五輪55キロ級銀メダリストのバイラモフにフォール勝ちして決勝へ。決勝の相手は、2015年の世界選手権覇者、キューバのイスマエル・ボレロモリナとなった。しかし、太田は投げを決められ、テクニカルフォール負けを喫する。
初出場で銀メダルという堂々の活躍をした太田だったが、「悔しいです。金しか狙っていなかったので、もう一回日本に帰ってしっかり練習します」と悔しさを滲ませた。4年後の東京オリンピックでの雪辱を誓った。
金メダルは逃した太田だったが、グレコローマンスタイルでのメダル獲得は、2000年のシドニーオリンピックの永田克彦以来の快挙となった!
オリンピックメダリスト vs. 最強の後輩
太田はメダル獲得後も活躍。2018年に出場したアジア大会では、60キロ級で優勝し日本人勢唯一のメダルを獲得。しかし、この頃あるライバルの存在が銀メダリストの太田の立場を危うくしていた。その男の名は文田健一郎。太田より2歳下で、しかも日体大の後輩だ。
※画像URL:https://img.olympicchannel.com/images/image/private/f_auto/t_s_w860//t_s_img_ratio_16:9/primary/nqtenxoehrc3reyqvmcv(オリンピック公式HPより引用)
文田は、先輩の太田がリオデジャネイロ・オリンピックに出場した際に、「練習相手」としてブラジルに同行していた。オリンピックで太田の活躍を目の当たりにした文田は、「今は敵わない。でも、いつかは」という気持ちを胸に太田と同じ60キロで急成長をとげた。リオ五輪以降、文田は全日本選手権での優勝を皮切りに、2017年のアジア選手権優勝、全日本選手権優勝、世界選手権優勝といつしか太田を超える存在となっていた。
2人はともに、卒業後も練習拠点を日体大において鎬を削ってきたが、徐々に距離を取るようになり一緒に練習をすることは無くなった。2人は、「先輩・後輩の練習仲間」から「ライバル関係」へと完全に変わっていた。
そして、2019年9月、いよいよ東京オリンピックの出場枠を懸けた全日本選手権が始まる。東京オリンピックに出場するには、この全日本選手権で優勝して世界選手権への切符を取り、世界選手権で優秀な成績を収める必要がある。当然、世界選手権60キロ級の日本代表枠はたった一つ。オリンピック銀メダリストの太田と、世界選手権覇者の文田による日本代表選考は「世界一熾烈」と評された。そして、この東京五輪代表選考を懸けた全日本選手権では、両雄がともに勝ち上がり、下馬評通りの決勝となった。
世界選手権への切符を勝ち取れるのは太田か? それとも文田か?
60キロ級の代表権を獲得したのは、文田だった。太田は、判定1-4で敗れ東京五輪内定を懸けた、世界選手権大会への出場はかなわなかった。太田は、世界選手権に出る文田に対し「負けろと思っています。自分が出たいから」と率直な気持ちを吐いた。世界選手権で、文田が負けた場合は、12月の日本選手権で東京オリンピック出場者が決まることになる。
60キロでのオリンピック出場が厳しくなった太田は、大きな決断をする。太田は、60キロ級でのオリンピック出場を諦め、67キロ級への階級アップを選択。おそらく、後輩の文田の強さを誰よりも知っている太田は、文田が世界選手権で負けるはずがないという確信があったのだろう。
太田は、階級アップの最初のステップとして、非オリンピック階級の63キロ級で世界選手権の代表選考プレーオフに出場。太田は優勝を果たし、世界選手権への出場権を手にした。63キロの世界選手権でも順調に勝ち上がった太田は、決勝の舞台へ。決勝でも前年の世界選手権覇者であるロシアのステパン・マリャニャンを敗った太田は、世界選手権優勝を果たした! 一方の文田も、オリンピック階級の60キロ級世界選手権で、決勝まで進み東京オリンピック内定を決めた。
これ以降、2人のライバル関係は大きく変化。太田が階級をあげたことで、2人が対戦することはなくなったため、互いにアドバイスを送り合い再び2人で切磋琢磨するようになったのだ。よって、2人の3年間に及ぶライバル関係には終止符が打たれた。
ここから太田は、オリンピック階級である67キロ級での東京オリンピックを出場に挑む。
大一番で人生初の、、、
63キロ級では世界王者となった太田だが、オリンピックに出るにはさらに体重を67キロまで上げなければならない。太田は、身長165センチと67キロの階級ではサイズが小さい。太田はサイズ不足を補うため、食事と過酷なウエイトトレーニングで体重を増やし、フィジカル強化を行った。そして、わずか3ヶ月で67キロの体を作り上げ、2019年12月の全日本選手権にエントリー。オリンピックに出場するには、この全日本選手権での優勝が必須で、その後3月のアジア予選で出場枠を獲得する必要があった。
急な階級変更ではあったが、レスリング関係者はオリンピック出場経験のある太田の優勝は固いと口を揃えた。しかし、この全日本選手権で誰も予期せぬ大波乱が起こる。
太田は初戦で井ノ口崇之(自衛隊体育学校)と対戦。決して手強い相手ではなかったが、太田は0-8という大差のスコアでテクニカルフォール負けを喫した。67キロ級での太田の挑戦は、初戦敗退というまさかの結末に終わり、太田の東京五輪出場は完全に消滅。太田は試合後、「『勝てるだろう』『大丈夫だろう』と心の中に隙があったからああいう結果になった。こんな試合をしては東京五輪の『と』の字もない」と悔しさを滲ませた。
こんなにも早々に太田が姿を消すことは誰も予測できなかっただろう。ただ、一番驚いていたのは他でもない太田自身であった。20年にも及ぶ太田のレスリング人生で初戦敗退など一度たりともなかったし、練習では井ノ口に1ポイントも取られたことがなかったという。太田は、「ああ、こんな終わり方するんだなと思いました」と率直な心境を語った。
太田は、今後について「まだ何も考えられない」とコメント。太田は、このままレスリングを続けパリ五輪を目指すのか? それとも新たな地で第2章を始めるのか? 太田の答えは後者だった。
RIZIN電撃参戦! なんでもありの総合格闘技へ
太田が求めたのはレスリングのマットではなかった。太田は、2020年11月のRIZIN.25で、血の気の漂うリングの上に立った。そこはより華やかでより過酷な総合格闘技のリングである。太田は、この日RIZINへの電撃参戦と、ベテランファイター所英男との大晦日での対戦が発表された。
太田は、総合格闘技ファンへの挨拶として、スーツを身にまといリングに上がった。マイクを握った太田は、「始めまして、レスリング界から来ました太田忍です。大晦日RIZINで所選手と対戦することを聞いた時は、正直驚きました。というのは、ずっと小さい頃から戦いを見てきた、自分自身本当に好きな選手だったので戸惑いもありましたけれど、試合となると別なので勝てる準備をしていきたいと思います。最近総合格闘技を練習していて、いろいろな人とやらせてもらって、総合で勝つのは難しいと本当に感じているので、少し不安はありますがしっかり準備して負けるつもりはないので、大晦日の試合で勝って次につなげたいと思います」とコメント。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
話している途中、緊張で言いたいことが飛んだという太田だったが、自分の気持ちを率直に述べた太田らしい挨拶だっただろう。太田は、26歳でレスリングと所属していたALSOKをやめ、MMA一本で勝負することを決めた。練習を共にする元フェザー級キング・オブ・パンクラシストの田村一聖は、太田を「出来ます。めっちゃすごいですね。びっくりしました」と話し、太田のポテンシャルの高さを絶賛している。
太田の世界一を取ったレスリング力はMMAでどこまで通用するのだろうか?
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
MMAの洗礼と厳しさ
太田のプロ初戦の相手は、所英男(当時、34勝30敗)だ。所は、43歳の大ベテランでDREAMやHERO’Sの時代から日本格闘技界を支えるグラップラーである。所といえば、2005年にノゲイラをバックハンドブローで敗る大金星で一躍有名になった、「記録」よりも「記憶」に残る男だ。この試合は、典型的なレスラーとグラップラーの一戦のため、太田にとって相性は悪い。レスリングで倒すことができても、その後の極めやパウンドがなければ、所のグランド地獄に飲み込まれる可能性があるからだ。
しかし、ここで勝てば太田は一気にバンタム級戦線に参戦できる。勝つのは、世界を獲った太田のレスリングか? それとも、所が熟練のグラップリングで絡め取るか? 注目のデビュー戦が今始まる。
試合は序盤、いきなり所の右ストレートが太田を捉え、ダウン。しかし、所は深追いせず太田もすぐに立ち上がる。太田は、パンチを振りながらところに接近し、MMAの試合ではじめてタックルを見せテイクダウンを奪った。しかし、所は抵抗する様子を見せず下になり太田を誘う。「猪木アリ」の状態が続き、太田は所を攻めあぐねる。その後、所の下からの顔面蹴り上げをくらい太田は吹っ飛ばされる。グランドの展開から右手をとった所は、腕十字を極めにかかるが太田は所を持ち上げバスターで解除。しかし、この展開で太田の右腕は伸びてしまったという。
1ラウンドは劣勢ながらなんとか凌いだ太田。続く2ラウンド、太田はタックルを決め所を倒す。しかし、所は素早く蛇のように両足を太田の首に巻き付け太田の右腕を狙う。右腕をとった所は回転しながらポイントをずらし、一気に極めにかかる。太田はたまらずタップし、試合終了。
太田はデビュー戦を白星で飾れず、結果としてMMAの洗礼を浴びる形に。そして、負傷した右腕を庇いながら呆然とリングを後にした。試合後、太田は「27(歳)でMMAデビューして本当に下向く時間はないので足りないことを補って強くなっていきたい」と前向きに語った。
白星でデビュー戦を飾れなかった太田だが、次戦こそ初勝利をあげることはできるのだろうか?
元K-1王者と負けられない一戦へ
2020年の大晦日の敗戦から約9ヶ月後、太田の2戦目が決定。対戦相手は、元K-1王者の久保優太となった。久保は、元K-1ウェルター級王者で、日本人無敗だったジョーダン・ピケオーにも勝利した日本屈指のキックボクサー。今回がRIZINでのMMAデビューとなる。オリンピック銀メダリストの太田とK-1王者の久保という異色のマッチメイクに、大きな注目が集まった。
太田は、今回から以前のKRAZY BEEからパラエストラ柏に移籍。パラエストラ柏は、バンタム級屈指の実力を持つ扇久保博正やレスリングの得意な浅倉カンナらが所属する名門だ。特に、代表の鶴屋浩氏は選手からの信頼も厚く、指導力にも定評がある。その鶴屋は、オリンピアン太田を「今まで色んなすごい選手指導してきましたけどもこれ以上の選手はいない」と絶賛。いよいよ、世界一のレスラー太田がそのベールを脱ぐ時が来たのか? 久保との異種格闘技戦が今始まる。
ゴングの途端、いきなり太田がタックルに入る。しかし、それを読んでいたかのように久保の前蹴りが太田にヒットし、太田はいきなりピンチを迎える。しかし、太田はすぐに久保に組みつきテイクダウン。これ以降は太田の独壇場だ。太田は久保の打撃を殺し、何度もテイクダウンを決めてグランドに引きずりむ。太田は、肩固めやネックロック、パウンドと終始久保を削り続けた。
結果は、3-0の完勝で太田の判定勝利。太田はMMA初勝利をゲット! しかし、試合後、太田は「決めたかった~」と嘆きながら会場を後にした。「しょうもない試合した」と連呼した太田には、初勝利の嬉しさより悔しさが勝ったようだ。
才能開花!? 元王者と大晦日決戦へ
太田の次戦は、格闘家なら誰しもが憧れる2021年大晦日に決定。対戦相手は、元修斗環太平洋王者の祖根寿麻(当時、23勝20敗)に。RIZINではMMA4戦4敗と結果が出せていない祖根だが、経験豊富で決して侮れない相手だ。太田にとっては、来年からバンタム級戦線に乗り込んでいく上で、絶対に落とせない相手とった。
カード発表記者会見で太田は「去年は所英男選手でデビューしましたが、今回の対戦相手、祖根選手ということで、正直、役不足です。この前の久保さんとの試合はちょっとタラタラやってしまったので、1Rでしっかり決着を付けたい」と豪語。MMAの大先輩、祖根を役不足と切ってみせった。この試合は、太田のバンタム級査定試合と言える、この一戦で太田はどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか?
試合は1ラウンド、太田は不用意に近づいてきた祖根をつかみガブリのような体勢に。しかし、太田は祖根の背中に手をクラッチできておらず、逆に自分の両脇を刺された状態だった。これではテイクダウンは難しい、誰もがそう思った瞬間。太田はその状態のまま背中をそらし、祖根を投げてテイクダウン。これにはベテランの祖根も「この展開から投げられるんだというのがあって」と舌を巻いた。完全に太田ペースとなった試合は、その後も祖根を投げて、強烈なヒザを叩き込んだ。
試合が動いたのは2ラウンド終盤。スタンドの展開から太田が見事なバックハンドブローを祖根にジャストミート。祖根がたまらずダウンすると、太田は無慈悲なまでにパウンドやヒザ蹴りで削り、最後は落雷のような踏み付け2発を決めて試合を終わらした。
太田は満足そうな顔で勝利のバク転を決めた。マイクを握った太田は、「会場のみなさん、大晦日、判定じゃダメだよ、KOじゃなきゃ。会見でデカいこと言って、1R KOって言ったんですけど、2R掛かっちゃいました。もっともっと頑張ります。祖根選手、大晦日まで1ヵ月しかないのに試合して頂いて本当にありがとうございます。」とコメント。最後は、RIZINバンタム級JPグランプリに出場している扇久保にエールを送ってリングを降りた。
太田は、この祖根戦でカブりからの投げや、強烈なパウンド、フィニッシュの踏み付けなど存分にポテンシャルを発揮し、一気に評価を上げた。格闘ファンも太田の一方的な戦いぶりに驚愕。
いよいよ2022年からは、熾烈を極めるバンタム級トップファイターとの対戦があるだろうが、太田はそこでもその強さを発揮できるだろうか?
「飛び級試験」の合否はいかに?
2022年7月、太田のプロ4戦目はあの大物ファイターに決まった。バンタム級四天王とも呼ばれた、“DEEPのファンタジスタ”元谷友貴だ(31勝9敗)。元谷は、昨年のバンタム級トーナメントでダークホースの瀧澤謙太にまさかの敗戦でベスト4には入れなかった。しかし、その後大阪の人気ファイター金太郎、朝倉海を苦しめたアラン“ヒロ”ヤマニハを撃破する活躍で波に乗っている。元谷は、間違いなくRIZINバンタム級トップ層の1人だ。今回の試合は、太田にとって「飛び級マッチ」と言える。
記者会見で太田は、「この試合をしっかりクリアすることによって、バンタム級のトップ戦線にどんどん絡んでいけると思うので、しっかりと敬意を持ってボコボコにしたいと思います。元谷選手、よろしくお願いします!」と闘志を燃やした。
実は、太田と元谷はKRAZY BEE時代に練習をしたことがあった。その当時は、太田がMMA転向したてということもあって、元谷に子供扱いされたという。太田がその当時から見違えるほど成長したことは間違いないが、元谷も寝技だけではなくボクシングスキルも向上しているため、決して一筋縄ではいかないだろう。
太田がタックルで来ることは疑いようがないが、元谷が世界一のタックルをどう防ぎ攻めに転じるかに注目が集まった。太田の「飛び級試験」が今始まる!
試合は、いきなり元谷の強烈なカーフキックで幕を開ける。太田は距離を計りながら両足タックルを決める。すぐに元谷は蹴り上げを見せて立ち上がるが、太田はすかさずフロントチョークの体勢に入る。しかし、これは浅く極まらない。その後も太田はタックルとヒザで攻め、元谷もパンチと飛びヒザで応戦した。1ラウンドは、太田がやや優勢に試合を進める。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
続く2ラウンド、太田は元谷のフックを浴びながらも元谷に組みつきコーナーで塩漬けにする。しかし、離れ際の攻防で元谷のムチのようなフックを被弾し、明らかにダメージの見える太田。このラウンドは、太田が組みついても元谷を削れず、逆に打撃を的確に当てた元谷に削られる展開に。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
最終3ラウンド、太田は得意のタックルで勝機を見出す。しかし、太田は首を抱えられそこからの展開を作れない。ここで元谷のフロントチョークを体を回転しながら回避した太田は、元谷を下にしてグラウンドに持ち込む。しかし、ここは元谷のフィールドでもある。元谷は、三角絞めや、アームロックを次々に仕掛け、“寝技のデパート”と称される寝技技術を余すことなく発揮する。太田は元谷の寝技を回避することに手一杯となり、その後もグラウンドで上を取られるなど苦しい展開に。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
結局、太田は1ラウンド以外見せ場を作れず判定へ。結果は、0-3で太田の判定負け。太田は、組み力では引けを取らなかったものの、打撃と寝技でトップとの差を見せつけられ、金星をあげることはできなかった。
試合後、太田は「1Rは自分のしたいことができたけど2、3Rは完全にペースを持っていかれた」と振り返り、悔しさを滲ませた。しかし、今後については「すぐにでもやりたいと思っている。今回は負けたけど全然諦めてないので、トップになりたいという気持ちには変わりない」と闘志をあらわにし、雪辱を誓った。
今回は、トップ選手相手に自分の戦いをさせてもらえなかった太田。太田のレスリング力はバンタム級でもずば抜けていることは間違いないが、そこからの展開や、打撃の精度にはまだまだトップと差があった。しかし、いきなりトップ層と戦えるのは太田への期待の現れでもある。今後、太田ががトップとの壁をどう打ち破りさらなる成長を遂げるのか、今から楽しみで仕方がない。
太田忍の知りたいトコ!
平本蓮とバチバチの舌戦展開!?
太田は、持ち前の華と過激な言動で注目を集める平本蓮と舌戦を展開している。2021年10月ごろ太田は、自身のインスタライブで平本戦について聞かれ、「盛り上がるんだったら、階級を上げてフェザー級で戦ってもいいよ」と回答。一方の平本は、太田をどんぐりと揶揄し「どんぐりマジで興味ない」とツイート。
どんぐりまじで興味がない https://t.co/9YBqiCt3Hl
— 平本蓮 REN HIRAMOTO(24) (@REN_MMA) October 1, 2021
どんぐり呼ばわりされた太田は、「ファンからDMきて知ったけど、、 おれも”弱い者いじめ”はしたくないし 興味ないから、どうぞ逃げ続けてください。」と応戦。
ファンからDMきて知ったけど、、
おれも”弱い者いじめ”はしたくないし
興味ないから、どうぞ逃げ続けてください。— Shinobu ota / 太田忍 (@shinobu_ota_mma) October 1, 2021
しかし、これだけでは収まらず、大晦日の祖根戦後、太田に寄せられたファンからの「2月平本オファーきたら受けますか?66.0契約」という質問に太田は、「二日酔いでやってもいいよ!😂」と回答。
https://twitter.com/shinobu_ota_mma/status/1478674983203512332?s=20&t=kiHRVi7-MAEFRm8Iu3RQ6g
この平本を舐めきった太田のツイートに、平本もすかさず「やっぱオリンピック挫折した奴は器が小さいな 俺ならインフルエンザでもやってやるよ」とアンサー。
やっぱオリンピック挫折した奴は器が小さいな
俺ならインフルエンザでもやってやるよ https://t.co/FvmbFcmlxt— 平本蓮 REN HIRAMOTO(24) (@REN_MMA) January 5, 2022
これに対し太田も「インフルエンザのウイルスにすら 勝てねーだろ! 2連敗😂😂」と挑発的なツイート。
https://twitter.com/shinobu_ota_mma/status/1478691057638735873?s=20&t=GkBiz2QpyEeAKYiGFdvgMw
太田と平本の舌戦はまだまだ続きそうだが、2人がTwitterではなく、リングで交わる日は来るのだろうか? 太田にとってストライカーの平本は相性抜群だが、平本の打撃も決して侮れない。実現すれば、大注目のカードとなること間違いないだろう。
ALSOK時代の収入事情! 世界選手権優勝は〇〇万円
太田は自身のYouTubeでALSOK時代の練習時間や収入事情について暴露している。まず、ALSOK時代の練習量については、週6回で朝・晩の2回で3部練習の日も含めれば、週に12〜15回と語っている。また、アルソックでの勤務時間については1日4時間という。
そんなレスラー時代の太田の月収は月100万円! それに加えて、世界選手権で優勝した時は特別ボーナスで500万円を受け取ったという。
太田がMMAに転向した熱い思い
太田は、自身のYouTubeでレスリングからMMAに転向した熱い思いを語っている。理由としてはまず、幼い頃からMMAを見ていて興味があったこと。そして、リオで銀メダル、世界選手権で世界一を獲ったものの、反響や知名度の上昇は思ったほどではなかったこと。
そんな時にRIZIN CEOの榊原信之らとの会食中に、「MMAやってみないか」というオファーがあった。世界選手権での優勝で一区切りついたと考えていた太田は、次なる道として「ありだな」と率直に感じたという。
加えて、太田は「レスラーのセカンドキャリア」に対する不満もあった。世界選手権で優勝したり、オリンピックで活躍したりする選手はたくさんいるが、皆現役生活を終えると地元に帰るか、大学の指導者になるかで派手なセカンドキャリアを歩む者は少ない。それでは、レスラーを目指す若者は増えていかない。太田は、「レスリングで成績残したら、オリンピックで金メダル取ったら、あいつみたいになれるんだっていう選手になりたい」と語っている。
太田はレスリング後の輝くための方法としてMMAを選んだ。しかし、それは同時にレスラーを目指す若者たちに、レスリング後の選択肢を作ることであり、レスリングの可能性を見せることなのである。
太田が今後、RIZINのチャンピオンを獲って、さらに上のベルトも獲る事ができれば、レスリングから格闘技を始める子どもたちも生まれてくるに違いない。太田の活躍は、未来のレスラーたちの憧れとなれるのか? その答えは太田自身が握っている。
まとめ
ここまで“忍者レスラー”太田忍を見てきたが、いかがだっただろうか?
一見すると、太田の成績は、レスリングでオリンピック銀メダル、世界選手権優勝など輝かしく映るが、その裏には後輩レスラーへの敗北や、オリンピック代表選考初戦敗退など多くの悔しさも味わっている。決して順風満帆ではなかっただろう。
そして、太田は次なるステージとしてMMAを選んだ。それは、自分のためであると同時に、MMAで成功し若手レスラーたちのお手本となるためでもある。太田は2021年大晦日の祖根戦でレスラーの恐ろしさを見せつけ、MMAファイターとしての才能の片鱗を見せつけた。
太田のずば抜けたフィジカルとレスリング力は、同じMMAファイターも舌を巻く。あのRIZINフェザー級トップ選手、朝倉未来も「相当ポテンシャルある。UFCとか行ける可能性一番持ってるんじゃないかな」と太田を絶賛。やはり、太田の持つ素材はピカイチと言えるようだ。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
前戦ではバンタム級トップファイターの元谷友貴に敗れたが、トップとの差を肌で感じられたのは大きかったに違いない。今後、太田がどのように足りない方部分を修正し、バンタム級の猛者たちとわたりあっていくのだろうか? 伸びしろしかない太田の成長にこれからも目が離せない。
※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用