ホベルト・サトシ・ソウザの選手紹介 〜“シン柔術マジシャン”のすべて〜

「UFCじゃない、ここはRIZINだよ!」

このセリフを聞いて、思い起こすのはあの選手だけだ。そう、初代RIZINライト級王者、ホベルト・サトシ・ソウザ。試合でのフィニッシュ率は圧巻の100%で、RIZINでも一本勝利を量産し向かうところ敵無し状態となっている。

そんなRIZIN最強王者のサトシは、一体どのような格闘家人生を歩み、今に至るのか? 今回は、“シン・柔術マジシャン” ホベルト・サトシ・ソウザを徹底解剖していこう。

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※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2022/04/17/ca79dd8e191c5ee5f550e101aa8449cde19020dd_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

ホベルト・サトシ・ソウザのプロフィール

名前     :ホベルト・サトシ・ソウザ
生年月日   :1989年9月19日
出身地    :ブラジル サンパウロ
身長     :180cm
体重     :71.0kg
戦績     :15戦 14勝(4KO 10本) 2敗
階級     :ライト級
所属     :ボンサイ柔術
獲得タイトル :初代REALスーパーライト級王者、RIZIN初代ライト級王者
入場曲    :A vida é tipo roda gigante
バックボーン :ブラジリアン柔術(黒帯)、柔道
公式HP     :ー
Twitter      :@Toshijj
Instagram   :robertosatosi
YouTube         : ホベルト・サトシ・ソウザ Roberto Satoshi Souza
アパレル   :ー
ファンクラブ :ー

今年で33歳のサトシは、2022年4月に唯一の黒星をつけられたジョニー・ケースにタイトルマッチでリベンジを果たし、2度目の王座防衛に成功。現在、RIZIN5連勝中で誰も手がつけられない状態となっている。

では、サトシは、バックボーンであるブラジリアン柔術とどのように出会い、プロ格闘家となったのか? そのストーリーを紐解いていこう。

ボンサイ柔術との出会いと、MMAでも磨かれる才能

柔術の天才、サンパウロに誕生

サトシは、ブラジル人の父と日本人の母との間に生まれた五人兄弟の三男。父、アジウソン・ソウザは、自らボンサイ柔術を創設し、サトシも幼少期から柔道とブラジリアン柔術の英才教育を受けた。裕福な家庭ではなかったが、父のアジウソンは、地域住民に無償で柔術を教え周りから尊敬されるような人物だった。

ちなみに、ボンサイ柔術の由来は、ボンサイは手入れが大変だが、手をかければ美しく、強くなることから名付けられている。よって、一人一人の個性に合わせて指導していくという意味合いがある。

サトシは、柔術一家の中でメキメキと実力をつけ、6歳の頃から試合に出るようになった。また、世界で当時大ブームだった日本の「PRIDE」を観るのが大好きで、いつかやってみたいという気持ちを抱くようになった。

その後、兄たちが出稼ぎで日本に出向くと、サトシもその後を追って18歳で日本へ旅立った。

ここからサトシの日本での物語がスタートする。

過酷な工場労働を救ったある人物

サトシがブラジルから来日した先は、静岡県の磐田市だった。サトシも、他の日系ブラジル人達に混じり早速工場の仕事に就いた。しかし、その環境は過酷で、早朝から深夜まで蒸し暑い作業場で重たい鉄の加工を行う仕事だった。日系ブラジル人の職場は、まさに「3K(きつい、汚い、危険)」を体現していた。

サトシ兄弟は、柔術の時間もまともに取れず体重を減らしながら働き続けた。そんな厳しい状況で、とある人物がサトシ達の運命を大きく変えた。その名は、坂本健氏。坂本氏は、日系ブラジル人が集う柔術サークルに通っていた人物で、そこでソウザ兄弟のずば抜けた実力を目の当たりにした。そこで、「この才能を埋もれさせてはいけない」と確信した坂本氏は、彼らが柔術の指導者として仕事ができる道を模索。坂本氏の支援によって、浜松にボンサイ柔術の支部として「ブルテリア格闘技ジム」がオープン。サトシ兄弟は、工場作業員としても働く傍ら、坂本氏のおかげで柔術の指導者という仕事を得たのである。

ここからサトシは、柔術の腕をさらに上げ数々の大会へ出場していく。

輝かしい柔術キャリア

サトシは、2006年ごろから本格的な柔術の大会に出場し始める。2006年、2009年、2010年には柔術の世界大会で優勝。他にも、アジア柔術選手権や、ヒクソン・グレイシー杯、ヨーロッパ柔術選手権などにも出場し、タイトルを総なめするなど輝かしい実績を残した。

また、実はサトシは青帯時代にあのUFCライト級王者、チャールズ・オリベイラ(33勝8敗)と6回ほど柔術の試合をしている。結果は、サトシの全勝でオリベイラを圧倒。

現在UFCで11連勝中と無類の強さを見せているオリベイラとRIZINライト級王者のサトシが対戦する可能性はほぼないが、もし実現すればと思えば胸が躍らないファンはいないだろう。

こうして、輝かしい実績を残したサトシは、いよいよ総合格闘技へ挑戦する。

圧倒的なMMAデビュー

サトシがMMAに挑戦したのは2013年、24歳の頃である。サトシのデビュー戦は、中国で開催されたReal Fight Championship。サトシは、デビュー戦を1ラウンド一本勝ちで飾ると、次戦も1ラウンド一本勝ちで才能の片鱗を見せる。

2015年には同団体のREALスーパーライト級王座決定トーナメントに出場。一回戦では、元DEEP王者でK-1にも出場経験のある上山龍紀と対戦。サトシは、1ラウンドに三角絞めで圧勝。その後もKOと一本勝という圧巻の内容でトーナメントを制覇し、初代REALスーパーライト級王者を戴冠。

サトシは、王者戴冠後も2連勝し、デビューから7戦全勝という圧巻の戦績を残した。

そして、いよいよサトシは、日本の最高峰RIZINへの出場を叶える。

日本の本場、RIZINデビューへ

KO、一本負けゼロの難敵との衝撃デビュー戦

サトシは、柔術での輝かしい実績とMMA7連勝という文句なしの戦績をひっさげ、2019年4月にRIZINデビュー。初戦の相手は、DREAMやPANCRASEで活躍してきたベテランの北岡悟(当時、42勝19敗)。北岡は、42勝のうちKO勝ち0で一本勝ち20という日本を代表するグラップラーだ。しかも、北岡はMMA67戦でKO負け、一本負けゼロの強敵。

サトシは、試合前のインタビューで「正直あまりMMAは好きじゃないけど。本当にちょっとお金のため」と赤裸々に語っている。できればMMAはやりたくない。しかし、サトシは今後生まれる自分の子供のため、家族のためにMMAで稼ぐことを決めたのである。

この一戦は、サトシにとって2019年に開催予定のRIZINライト級グランプリの出場をかけた査定試合でもあり、落とせない一戦となる。

試合は、1ラウンドから北岡が打撃で主導権を握る。サトシも蹴り技で応戦するが、北岡の打撃で顔からの出血。1ラウンドは北岡が優勢に試合を進めた。試合が動いたのは2ラウンド。北岡がタックルからグラウンドに持ち込むと、サトシは流れるようにバックチョーク、腕十字を繰り出すが、北岡も流石のディフェンスで凌ぐ。そして、かなり息づかいが荒くなってきた北岡に、サトシは左右のフックでぐらつかせ、追い討ちの連打で倒すとすかさずレフェリーストップ。サトシのKO勝ち!

サトシは、これまでフィニッシュされたことがなかった北岡を柔術ではなく、まさかの打撃でKOする圧巻の勝利。試合後のリングインタビューでは、「ごめんねみんな、この試合、極めがあると言ったけど、北岡選手が強くて難しかった! 私も子供の頃からPRIDE見てたから、私の夢。私と生徒たちと友達と奥さんもいるから、絶対世界一になる! みんな応援ありがとうございました!」とコメント。世界一という大きな目標を宣言し、RIZINに新たな風を巻き起こした。

RIZINという大舞台でも、その力を遺憾無く発揮したサトシは、自身のポテンシャルの高さを見せつけ、一躍ライト級注目の選手となった! サトシは次戦でどのような戦いを見せてくれるのか?

ハードパンチャーとヒリつく2戦目とあの伝説のマイク

衝撃デビューからはや3ヶ月後の2019年7月、サトシの次戦が実現。相手は、元UFCファイターの廣田瑞人(当時、18勝10敗)。廣田は、DEEPや戦極など王座を獲得し、UFCでも活躍した日本屈指のストライカー。2017年には、あのUFCフェザー級の絶対王者、アレクサンダー・ヴォルカノフスキーと3ラウンド判定まで戦った経歴を持つ。

この試合でサトシの柔術テクニックがお披露目されるのか、ライト級屈指の好カードに注目が集まった!

試合は1ラウンド、サトシは高速タックルを決め、廣田をグラウンドへ引き込む。しかし、ここは廣田がうまく対応し「猪木アリ」の状態からスタンドに戻す。サトシは、再び高速タックルを仕掛けるが廣田にうまく切られる。しかしその直後、サトシは飛び込み気味に強烈な右ストレートを放ち廣田がダウン。すかさずサトシがパウンドの雨を降らせるとレフェリーが割って入って試合終了。サトシの2試合連続KO勝ち!

勝利者コールにサトシは、満面の笑みを浮かべ雄叫びを上げた。リングインタビューでは、静岡のジムの創設に尽力してくれた坂本氏の母親が亡くなられたことに触れ、勝利者トロフィーを坂本氏の母親に捧げると涙を浮かべながらに訴えた。いつだってお世話になった人にはリスペクトを欠かさないサトシの人間性が大いに垣間見えた一幕だ。

そして、あの伝説のマイクが満員のさいたまスーパーアリーナに響き渡る。

「次からもっと柔術使いたい。絶対にみんなに見せたい。UFCじゃない…ここはRIZINだよ!」

今も色褪せることなく受け継がれるこの名台詞は、アリーナを熱狂させサトシの存在感をより一層強めさせた!

RIZINでもスターダムの階段を登り始めたサトシ。戦績も9勝無敗のパーフェクトレコードで、いよいよあのトーナメントに名乗りをあげる。

予期せぬ展開!? RIZINライト級グランプリ開幕

あれほどハイレベルで熱狂を生み出したトーナメントは、後にも先にも、RIZINライト級トーナメントだけだろう。人類最激戦区と言われるライト級のトーナメントには、錚々たる顔ぶれが揃った。Bellatorの超強豪のパトリッキー・“ピットブル”・フレイレをはじめ、UFC4連勝男、ジョニー・ケースにMMA11連勝中のトフィック・ムサエフ。日本からも川尻達也に上迫博仁と実力者が参戦した。

サトシも9勝無敗という文句なしの戦績で出場権を獲得。抽選の結果、サトシの相手は優勝候補のジョニー・ケース(当時、27勝6敗)に決定。ケースは、レスリングをバックボーンにしながら強烈な打撃を持ち合わせる元UFCファイター。前戦では、サトシも戦った北岡悟を1ラウンドでボコボコにし、病院送りにしている。

果たして、サトシはこの危険な相手に勝利を収め、トーナメントベスト4が集う大晦日への切符を手に入れられるか? 2019年10月、RIZIN.19で世界を知る「ホンモノ」相手にサトシの真価が問われる。

試合は1ラウンドから動く。寝技に持ち込みたいサトシは、早速タックルに入るも、圧倒的なレスリング力を誇るケースが切ってトップポジション。しかし、サトシは、持ち前の「これぞ柔術」という下からの仕掛けでケースの左腕を狙う。ピンチに思われたケースだったが、サトシの頭上を曲芸師のようにくるりと回ってエスケープ。このハイレベルな技の攻防に会場のボルテージも一気に上がる。しかし、この後試合は誰も予期せぬ衝撃の最後を迎える。

スタンドに戻った両者。サトシは再びタックルに入ったところ、ケースは下がりながらコンパクトに右フックを決める。サトシは、タックルの勢いのまま倒れ込むと、マットをたたいてギブアップをアピール。レフェリーが試合を止めた。

一体何が起こったのか? あまりにも一瞬の出来事に会場も静まり返る。

真相は、ケースの右フックがサトシの左目に入り、サトシが試合続行不可能となってしまったのだ。サトシのデビュー戦からの連勝は9でストップし、初黒星を喫した。

試合後、サトシは「ごめんね、日本。よくない試合が一番悲しいね。(中略)RIZINのベルト獲るから絶対。また日本に持ってきます」と涙を浮かべながらコメント。

試合でサトシは、得意の柔術を見せるも、寝技のディフェンスに特化したケースが上回り敗北。サトシは、2019年初の大晦日の舞台に立つことはできなかった。自身も想定しなかったであろう負傷によるギブアップ負けという悔しさを味わったサトシは、いかに強くなって再びRIZINに戻ってくるのだろうか?

RIZINのお祭り男と再起戦へ

サトシは年明けの2020年2月RIZIN.21の浜松大会で柔術エキシビションマッチに出場。この試合は、サトシと日本柔術界の第一人者、中井祐樹率いる5名の選手によって行われ、10分以内に5人全員から一本取れればサトシの勝利となる。サトシは、8分4秒で全員から一本を取り、見事に勝利。

試合後のインタビューでは、「ごめんね、みんな10月の試合負けた。ごめんね、RIZINのベルトが今日本にない。でも私は諦めない、いつも応援ありがとう。RIZINのベルト絶対日本に戻る。いつもありがとう、みんな!」とコメント。先のライト級トーナメントは、アゼルバイジャン出身の都フィック・ムサエフが優勝しトーナメント優勝のベルトを手にしていた。サトシは、再びベルトに対する熱い思いを口にし、その奪還をRIZINファンに誓った。

しかし、新型コロナウィルスの影響もあって、サトシの試合間隔は大きく空いた。サトシの復帰戦が決まったのは、敗戦から約10ヶ月後の2020年8月。対戦相手は、“お祭り男” 矢地祐介(当時、21勝9敗)だ。RIZINの初期から活躍する矢地は、レジェンド五味隆典を降したり、朝倉未来とも激闘を繰り広げたりするなどRIZINでも人気の選手だ。

2連敗は避けたいサトシは、RIZINの人気選手を食って敗戦からの成長を見せられるだろうか?

試合は1ラウンド、矢地が関節蹴りを放ってサトシを牽制。サトシは、矢地にロープを際に追い込むとタックルに入りテイクダウン。すぐにマウントを奪ったサトシは、矢地に無慈悲なパウンドを叩き込み試合を終わらせた。

三度、柔術ではなく打撃で仕留めたサトシは、復帰戦を圧倒的な勝利で飾った!

リングインタビューでは「みんなほんとにありがとう。10月恥ずかしい試合、でも今は大丈夫だから、このチャンスをRIZIN本当にありがとうございます。(中略)今度は世界で見せたい。私の弟みたいな、66㎏強い人いるから、#クレベルin RIZIN、彼はいい試合をするからお願いします。」とコメント。サトシは、練習仲間で10年以上苦楽を共にしたクレベル・コイケをリングに上げ、RIZINへの参戦をアピールした。そしてこれ以降のクレベルの活躍ぶりは、誰しもが知るところだろう。

ライト級トーナメント終了後のRIZINライト級は、「柔術界の至宝」ホベルト・サトシ・ソウザを中心に回っていくことになる。

日本の隠れ実力者に挑む

ベルト獲得を望むサトシだったが、新型コロナウィルスの水際対策でライト級戦線の外国人選手が来日できず、サトシの試合も決まらなかった。結局、2020年のMMAの試合は矢地戦のみに終わってしまう。

しかし、年が明けた2021年の最初のナンバーシリーズRIZIN.27でサトシの出場が決定。対戦相手は、日本の隠れ実力者である徳留一樹(当時、20勝10敗)。徳留は、UFCにも出場経験のある元ライト級キング・オブ・パンクラシストだ。ONEで連勝中だったが、自ら契約を解除しRIZINに参戦した。徳留はバックボーンを柔道としながらも、打撃のセンスも光るオールラウンダーである。

元ONEライト級王者の青木真也は、徳留を「身体的素質と一撃がある」と評する。試合予想では「最初にどっちが前に出てリングの主導権を取るかだ」と述べた。

悲願のライト級タイトルマッチに向け絶対落とせないサトシは、日本のトップ同士の戦いを制することができるのか?

試合が始まると、徳留が前に出てリングの中央を取る。サトシは、パンチの交錯から徳留に組みつかれ、テイクダウンを奪われる。一見、徳留が理想通りに試合を進めたかに見えたが、サトシにとっては全て想定内だった。サトシはグランド状態から徳留の一瞬の隙を見逃さず、蛇のように両足を徳留の首に巻きつけ絞めあげる。徳留は、なす術なくタップアウト。サトシの三角絞めで一本勝利となった!

サトシは、RIZINの舞台で初の一本勝利を掴み、圧倒的な内容でタイトル戦を一気に引き寄せた!

試合後、徳留は「寝技ではレベルが違いすぎるわ。あんなの取られたことないですね」とコメントし、サトシの寝技技術に驚愕した。

そして、いよいよサトシ念願のタイトルマッチが「あの男」と実現することになる。

東京ドームで悲願の初代ライト級王者へ!

2021年6月、ついに新型コロナウィルスの水際対策が緩和され、外国人選手のRIZIN出場が可能となった。そして、格闘ファン待望のRIZIN初代ライト級タイトルマッチ、「トフィック・ムサエフ vs. ホベルト・サトシ・ソウザ」の対戦が決定! ムサエフにとっては、ライト級グランプリを制して以降、1年6ヶ月ぶりのRIZIN帰還となる。

「コーカサスの死神」の異名を持つムサエフは、18勝3敗(14KO)で目下14連勝中の“バケモノ”だ。ムサエフのファイトスタイルは、「狂気の拳」と言われるパンチで相手をなぎ倒し、パウンドの雨を降らせる超攻撃型。サトシが敗れた強敵ジョニー・ケース相手にも、ムサエフはパウンドアウトで葬っている。

サトシは、ムサエフに対して「彼は1ラウンド打撃が強い。だから本当に1ラウンドが一番危ない」と話し、ムサエフの打撃を警戒。しかし、「ワンチャンスだけ相手がくれたら、絶対極めることができる」と自分の柔術テクニックへの自信を口にした。

サトシがグラウンドに引き込みムサエフを寝技で封じるか? それとも、ムサエフが狂気的な打撃でサトシを一気に飲み込むか? RIZIN初の東京ドーム大会で、初代ライト級王者を決める決戦が今始まる!

張り詰めた緊迫感が会場を包む中1ラウンドが開始。両者見合いながら距離をはかる。すると、静寂を切り裂くようにサトシがタックルに入る。しかし、ここはムサエフがしっかり切ってスタンドへ。スタンドに戻ると、ムサエフはスイッチしてサウスポーへ。サトシは、この時を待っていた。後のインタビューでサトシは、ムサエフが強い右を打てないサウスポーに切り替わる瞬間を狙っていたと語る。狙い通りタックルに入ったサトシは、ムサエフに離されそうになるも、しつこく組みつき下になりながらグラウンドへ引きずり込む。すると、目にも止まらぬ速さで足をムサエフに巻きつけ、三角絞めの体勢に! 苦悶の表情を浮かべるムサエフは、何もできずにタップアウト。サトシは、トーナメントの覇者をわずか72秒で葬った!

サトシは満面の笑みでリングを走り、セコンドについた兄のマルコス・ヨシオ・ソウザと抱き合った。日本国旗を掲げコーナーポストに登ったサトシは、東京ドームの大歓声を浴び勝利を噛みしめた。

サトシは、RIZINライト級のベルトをその腰に巻き、マイクを握った。「ほんとに嬉しい。私のジム、私の仲間、神様、いつも信じてる、日本、約束に来たよ。RIZINのベルト戻ったよ! お父さん、見て、できたよ。ちょっと時間が掛かったから今日一緒にいない。私の生活、変わった、できたよ。ほんとにありがとう。いつもみんな応援してくれて、たくさん来たから本当にありがとう。」と涙のコメント。

ジョニー・ケース戦での敗北以降、「RIZINのベルトを日本に戻す」と言い続けてきたサトシは、見事に有言実行を果たし初代RIZINライト級チャンピオンに輝いた。強打のムサエフ相手に良いパンチを一発ももらわずに完勝したサトシは、その名を世界に轟かせた!

RIZIN王者となったサトシは、今後どのような活躍を見せてくれるのだろうか?

初の大晦日で初の防衛戦へ!

王座戴冠から約半年後、2021年の大晦日にサトシの初防衛戦が決定。相手は、約1年半前にKOで勝利した矢地祐介。当初は、サトシが唯一の黒星をつけらえたジョニー・ケースとされていたが、新型コロナウィルスの流行によって消滅。矢地は、2021年に修斗王者、川名TENCHO雄生とDEEP王者、武田光司という日本のライト級トップ選手を撃破し勢いに乗っている。

矢地は、日本屈指のグラップラー青木真也に教えをこい「仮想サトシ」で寝技対策を徹底。また、最近の2試合では巧みな打撃で試合をコントロールし、勝利をつかんでいる。1年半前の矢地とは別人のように強くなっており、サトシも決して侮れない。

サトシは、初の大晦日の舞台で王者としての初陣を勝利で飾れるか? 今ゴングだ。

試合開始直後、ゴングと同時に矢地が飛び蹴りで仕掛ける。対するサトシも飛び蹴りでディフェンス。サトシは矢地の飛び蹴りを予想していた。そして、タックルに入ったサトシは、矢地をグラウンド地獄に引き込む。サトシはグランド状態で様々な技をかけ一本を狙うが、矢地はミスなくディフェンスし1ラウンドは終了。

そしてサトシにとっては、北岡戦ぶりの2ラウンドに突入する。サトシは、早速ニータップからテイクダウンを奪う。サトシは、パウンドを当てながら極めを狙う。なんとか凌ぐ矢地だったが、サトシが足をかけて三角の体勢を作るとそこから矢地の右腕を伸ばしフィニッシュ! サトシは王座初防衛を果たした!

グランド状態から次から次へと技を繰り出すサトシの技術に、矢地も「多彩だったわ」と肩を落とした。試合後、マイクを握ったサトシは「嬉しい。私のRIZINデビューの時から私の夢がベルト、ベルトが日本に返ってきたから本当に嬉しい。榊原社長、頼みがあるね。堀口選手と同じぐらいになりたい、ベラトールで戦ってWチャンピオンになりたい。それみんな面白くないですか? いつもみんな応援してくれてありがとう。私本当に嬉しいです。みんなありがとうございました!」とコメント。

サトシは、アメリカ屈指の格闘技団体であるBellatorとRIZINの2団体王者を目指すことを宣言。これは未だ“史上最高のMade In Japan”堀口恭司しか成し遂げていない偉業である。しかし、今のサトシならば十分に成し遂げるポテンシャルがあるだろう。2022年以降のサトシは、夢の2団体王者に向けどのような活躍を見せてくれるのだろうか?

因縁の相手とリベンジマッチへ

サトシの次戦は2022年4月にあの因縁の相手と決まった。そう、唯一の黒星をつけられた“非情の貴公子”ジョニー・ケースである。ケースは、RIZINライト級トーナメントでサトシを降しベスト4に進出するも、トフィック・ムサエフに敗れている。その後は、新型コロナウィルスの影響もあり来日できず、プロボクシングの試合に出場して3連勝するなどボクサーとして活躍していた。

試合前インタビューで、ケースはサトシについて「非常にスキルが高くて、世界的なアスリートだと思うけど、競技者として素晴らしいけど、彼は“ファイター”ではない。心の中の情熱、この競技に対する強さというものを持っていない。それを最初の試合で僕が証明した。今回も証明する。」と挑発的なコメント。

サトシにとっては、キャリア初のリベンジ戦であり、2度目の防衛戦ということで絶対に落とせない一戦だ。サトシは、あの敗北以降、自分自身がすごく変わったと明かしている。加えて、初代RIZINライト級王者となったことがサトシにプライドを持たせ、より強くさせていることは間違いない。

屈辱の敗戦を味わった相手に、サトシはリベンジを果たせるだろか? 2022年4月、RIZIN.35のメインカードに抜擢された両雄の戦いが今始まる!

サトシは、奥さんとマネージャーの助言で金髪に染め上げ試合に挑む。試合がスタート。サトシが寝技に持ち込む展開が予想されたが、サトシはケースの土俵である打撃戦を展開し、臆することなくパンチを振るう。サトシが右フックをヒットさせると、ケースも左フックを当てていく。そして、ついに遠い間合いからサトシがタックルに入る。ケースは、サトシの足を拾い上げ、サトシをひっくり返す。サトシは、クローズドガードの状態からケースにオモプラッタを仕掛けるも、ディフェンスされスタンドに戻る。ケースも当たればひとたまりもないような鋭いパンチでサトシに襲いかかる。

※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)

そして、試合時間残り約2分。サトシが遠い間合いから片足タックルに入る。そこから目にも止まらぬ速さでケースのバックを奪う。ケースは振り落とそうと試みるも、その刹那でサトシは両足をケースに巻きつけ三角絞めの体勢に入る。もうここまでされれば、ケースに勝ち目はない。サトシは、ケースの右腕を極め、ケースが苦悶の表情を浮かべながらタップアウト。

※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)

サトシは、圧巻の内容で見事にリベンジ戦を制した! マイクを持ったサトシは、「RIZINライト級王者、ホベルト・サトシ・ソウザです。本当にありがとう。(中略)僕を少しイラつかせたのが相手がハートがないと言ったことです。それは本当ではありません。日本でのMMAを盛り上げていきたいですし、RIZINの力をもっと見せていきたいです。もっと練習して強くなる、ベラトールのベルトも獲りたいから、これからも頑張ります!」とコメント。

※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)

サトシは、ケースに「情熱や熱さがない」と挑発されたことに反論し、「日本のMMAを盛り上げRIZINの力を見せる」と熱い思いを口にし、さらなる飛躍を誓った。

唯一の負けを払拭したサトシの次の対戦相手は、一体誰になるのだろうか? 人類最激戦区であるライト級には、まだまだ世界の強豪たちがひしめいている。サトシが今後、世界の強豪たちとどう渡り合っていくのか、またサトシに対抗できる日本人は現れるのか、今後もサトシの同行から目が離せない。

ホベルト・サトシ・ソウザの知りたいトコ!

サトシには美人な奥さんと、天使のような子供がいる!?

サトシにはとても綺麗な奥さんがいる。奥さんの名は、ユリ・スズキ・ソウザさんである。サトシと同じく日系ブラジル人で、日本のテレビ局でレポーターとしても働いていたよう。

また、サトシには、とてもかわいい2人の娘、「AYLA SUZUKI SOUZA」ちゃんと、「MAYA SUZUKI SOUZA」ちゃんがいる。

サトシは、今後も愛する家族のために、日本で戦い続ける姿に期待したい。

サトシの感動黒帯秘話

ボンサイ柔術で腕を磨き、ブラジリアン柔術黒帯を持つサトシ。サトシは、いかにして黒帯となったのか? そこにはサトシの黒帯にまつわる感動秘話があった。

それは2011年5月にサトシの父で、ボンサイ柔術の創始者であるアデウソン・ソウザが亡くなった日のこと。がんで闘病中だったアデウソンは、先が長くないことを知ると、サトシを含めた兄弟たちを病室に呼んだという。そして、アデウソンは自らがつけていた黒帯をサトシに授け、「畳の上じゃなくてごめんね。でも自分の黒帯を(サトシに)あげたい」と話した。この日がサトシがブラジリアン柔術黒帯となった日になり、父のアデウソンはそのわずか数時間後に亡くなった。

そしてその10年後、サトシは、東京ドームで父の夢であった「世界チャンピオン」となり、父の黒帯とRIZINのベルトを腰に巻いたのである。

サトシは今後も、父の教えを胸に父のボンサイ柔術を広め、父のボンサイ柔術で世界の強豪たちと渡り合っていくことだろう。

炎上系YouTuber シバターとも対戦!?

2021年7月16日にサトシのYouTubeチャンネルで投稿された動画で、サトシは炎上系YouTuberのシバターと対決している。シバターは、これまでもYouTube内で朝倉未来や、堀口恭司と対戦し話題を振りまいてきた。動画では、柔術クラスに乱入してきたシバターが、サトシたちに対戦要求して試合が始まる。

道着をきた状態でシバターと対戦したサトシは、シバターからわずか40秒で一本をとる圧勝でシバターを成敗した。

まとめ

これまで「柔術界の至宝」ホベルト・サトシ・ソウザを振り返ってきたがいかがだっただろうか?

サトシは、出稼ぎの日系ブラジル人という厳しい環境の中でも父の柔術を磨き続け、「世界チャンピオン」の夢を叶えた。そして、サトシの芸術的な柔術テクニックは、いつも我々の想像を超え続けている。

※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)

未だにフィニッシュ率100%を誇り、底知れぬ強さを見せるサトシ。サトシは、今後も「日本の代表」として世界の猛者たちと渡り合い、RIZINの価値を高めていくに違いない。

※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用