かつて女子の格闘技は、メインの男子の試合に花を添える脇役的な存在でしかなかった。しかし時を経て、今RIZINからは数多くの女子スター選手が生まれ、女子の試合が男子の人気を凌ぐことも少なくない。今回紹介するRENAは、その女子格闘技人気の大きな立役者と言っても異論は無いだろう。
その愛らしい笑顔、不器用ながら桜花爛漫で真っすぐなキャラクター。そしてそのキャラからは想像出来ない圧倒的な攻撃力と勝利への執念。強者揃いの女子スーパーアトム級の中で、いつ女王の座を手にしてもおかしくない、紛れもないトップスターである。
RENAがどのようにしてここまで強くなり、スター選手へと上り詰めたのか、今回は“ツヨカワ女王” RENAの格闘人生をじっくり紐解いていこう。
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2022/07/31/5bd8cafdb6c2381bee58e80a726b453eb0e942b5.jpg(RIZIN公式HPより引用)
RENAのプロフィール
名前 : RENA(レーナ) 久保田玲奈
生年月日 : 1991年6月29日
出身地 : 大阪府大阪市
身長 : 160cm
体重 : 50.9Kg
戦績 : シュート36勝5敗1分(11KO) 総合13勝4敗(7KO 2SUB)
階級 : アトム級
所属 : シーザージム
獲得タイトル : SB世界女子フライ級王者
入場曲 : エイジア・エンジニア「絶対負けない」
バックボーン : シュートボクシング
公式 HP :ー
Twitter : @SB_RENA
Instagram : sb_rena
YouTube : ー
アパレル :ー
ファンクラブ: RENAファンクラブ(スマホアプリ)
今年31歳になったばかり、今がまさに全盛期と言えるRENA。彼女はどうやって、ここまでずば抜けた強さを手に入れたのか、まずはRENAの幼少時代から見ていこう。
空手少女からシュートボクサーへ
大阪府大阪市で4人姉妹の末っ子として生を受けたRENA。上の姉3人とは歳が離れている上に、姉達は元ヤンだったそうで、いつもRENAはパシリにされていたらしい。
そんな環境の中、RENAが小学6年の時、家の近所にシュートボクシングの道場がオープンする。いつもRENAをこき使う姉たちを「いつかシバいたる」と企んでいたRENAは、その望みを叶える為に、また元々「格闘技スクール」という看板も気になっていたのもあり、道場の扉を叩いたのだった。
その後、一気に格闘技にのめりこんでいき、一日の殆どを道場で過ごす事になっていたというRENAは、メキメキと実力をつけていき、2007年7月1日、16歳という若さでプロのリングに上がる。
初戦こそ敗北したものの、伸びしろしかないRENAは試合の度に飛躍的に力をつけていき、2009年8月23日、プロデビューわずか2年、19歳という若さでSB Girls S-cup トーナメントで優勝を果たす!
シュートボクシング界の絶対女王へ
SB Girls-Scupトーナメントで見事に優勝を果たしたRENAは、次戦で藤野恵美を迎えた。次々に総合格闘家を破っていくRENAは総合格闘界からライバル視され、同じく総合格闘家である藤野もジャイアントキリングを狙って相当気合が入っている。
試合が始まると、RENAのスピード感のある打撃に、藤野も付き合う流れに。RANAの手数が多い印象だが、藤野の一発も非常に重く、一進一退の攻防が続く。
2Rに入ると、開始早々RENAの左前蹴りが藤野の顔面を貫く。藤野の顔面から大量の鼻血が流れ、一旦ドクターチェックで試合はストップ。試合再開後、再び激しい打ち合いに。確実に大きなダメージを受けているはずだが、藤野は敢然と前に出て手を出す。お互い血に染まりながら、一歩も引かぬ死闘を続け2R終了。そこで再びドクターチェックが入り、藤野の試合続行は不可能と判断され、RENAのTKO勝利となった。
その後も勢いの止まらないRENAは2010年のS-cupトーナメントで2度目の女王に輝く。
2012月8月25日、RENAは3度目の女王の座を狙って再びSB Girls-Scup トーナメントに、出場する。
一日で最大3試合を行う非常にハードな大会だけに、なるべく短時間で試合を決めたいところだが、一回戦のキム・タウンゼントはKOできず、3-0の判定で危なげなく勝利するもフルラウンドを闘いスタミナを消耗する。
準決勝の相手はハム・ソヒ。後にRIZIN女子スーパーアトム級女王のタイトルを獲る事になる強敵だ。
1Rはお互い距離を計りながら細かいジャブやキックを出していく。パワー、スピード、テクニック共に両者拮抗していて、互いに大きなチャンスは見出せずにラウンド終了。
このラウンドで相手の力を図り、この後の戦略が描けたのか、2Rに入ると一気に二人の打ち合いは激しさを増す。前蹴りで距離を取ろうするRENAに対して、さらに踏み込んでパンチや組みに持って行こうとするソヒ。息もつかせぬ攻防の中で、ラウンド終了間近、RENAは右フックを放ちながらソヒの懐に飛びこみ、首に手を回して激しくマットに投げつける。ポイントにはならなかったが、RENAがやや優勢な印象を与え2R終了。
3R、さらに激しく前に出て来るソヒ、RENAは所々でカウンターを当てながらそれを迎え撃つ。壮絶な打ち合いの中、打撃では勝負はつかないと見たRENAは度々投げを試みるがポイントにはならず試合終了、判定となったが、なんとドローとなり試合は延長戦へ。
延長戦、両者とっくに限界を迎えててもおかしくないはずだが、なんとこれまで以上に激しい打ち合いを見せる。RENAは前蹴りからの左ストレートで再びソヒの首を掴み、マットに投げつける。実況が「ちゃんと回っているように見えましたが」と
言うほど、綺麗に投げたように見えたがポイントはつかず。さらにソヒのバックを取り、裏投げを決めたように見えたが、ソヒは上手く重心をずらしてポイントに繋げない。
実況が「今も回って!?」とポイントがつかない状況に疑問を呈した。
その後は投げを狙ってもソヒに突き離されるが、ソヒに投げを意識させたところへRENAの右ハイキックがソヒの顔面に綺麗にヒット。
間もなく試合は終了し、全体的に延長戦を支配したRENAが3-0でなんとか勝利を手にした。
ついに決勝へと駒を進めたRENA。3度目の女王の座をかけてV.V meiと対戦する。
1R、ここまで両者フルラウンドを戦い抜いて相当疲れが残っているのか、なかなか手が出ず、大きな見せ場も無く1R終了
2R、リーチに勝るRENAは距離をとって着実に有効打を当てに行くが、meiは打撃の網をくぐって投げに持って行こうと組みついていく。RENAも簡単に相手の土俵には乗らない。ショートフックや膝蹴りで組みに行こうとするmeiを突き放す。なかなかmeiは自分の展開に持って行けずにラウンド終了。ゴングと同時にRENAは大きく右手を挙げた。
最終ラウンド、この日合計10ラウンド目となるRENA、普通ならとっくに体力は限界を超えているはずだが、なんとゴングが鳴るなり左右のパンチ連打からの前蹴りで猛烈なラッシュを仕掛ける。打ち合いではどうしても後手に回るmei。必死に組みついてくるが、RENAは上手く足を使い、重心をずらしてmeiにチャンスを与えない。その間もショートパンチや膝をコツコツと当てていき、有効打を重ねる。最後は両者駆け引き無しのどつき合いになった所で試合終了。
RENAは勝利を確信したのか、ゴングと同時に両腕を高々と挙げ、その確信通り、判定は3-0でRENAの勝利。見事3度目のSB Girlsトーナメント女王に輝いた。
女子シュートボクシング界の伝説へ
ここからのRENAはまさしく天下無双。外国人選手達を次々になぎ倒し、連戦連勝! 絶好調の中、2014年8月2日、前人未踏4度目の女王の座をかけてSB girls-Scup 2014へ出場する。
1回戦のシモーネ・ドーメレン、2回戦のクリスティーナ・ジャルジェビックと、順当に判定勝ちを収め決勝へ。
決勝では、若さと勢いで一気にここまで勝ち進んできたティーチャー・ローンレン・ギーラーコーラートを迎えた。
1Rが始まるとティーチャーの前蹴りがいきなりRENAにヒットし、RENAは虚を突かれてマットに尻もちを突く。しかしRENAは焦る事無く、ティーチャーが放ったミドルキックに合わせて組みに行き、豪快にマットに投げつける。ティーチャーは背中から綺麗にマットに叩きつけられ、RENAが早くもポイントでリード。
その後もミドルキックや右フック、ボディブローと、次々とヒットさせティーチャーにプレッシャーを与え、ラウンド終盤はラッシュで一気に試合を決めに行く。たまらずティーチャーは組みついていくが、RENAは無理やり突き放し、離れ際に格闘技の教科書に出て来るような完璧な右ストレートをティーチャーの顔面に叩きつけ、たまらずティーチャーはダウン。ティーチャーは「まだやれる」と言わんばかりに笑顔を見せ、ここでゴング。
2Rからティーチャーはムエタイ仕込みのしなやかでキレのあるハイキックやミドルキックで試合の流れを変えて行こうとする。だが、蹴りの瞬間、ティーチャーのガードが下がる傾向があるのを、RENAが黙って見ているわけがない。左ミドルに合わせた右オーバーハンドフックがティーチャーの顎を捉える。たまらず組みついて来たティーチャーに、RENAは右手でティーチャーの顔を押し出して、やや距離を作ってから強烈な左フック、ティーチャーは完全に脳を揺さぶられ、マットに倒れこむ。若さと根性でなんとか立ち上がるも、レフェリーは続行不可能と判断しストップをかけ、RENAのTKO勝利で前人未踏、4度目のScup優勝が決まった瞬間だった。
その後も向かう所敵なしで連勝を続けるRENAは2015年8月21日、初代SB世界女子フライ級王座をかけてカネ・チョー・カンピロムと拳を交える。
試合前RENAは「1Rは様子見て2Rでノックアウトしたい」と語ったように、1Rはジャブや前蹴りで距離を取りながら闘い、このラウンドは終了。
2Rに入って一気にギアを入れてきたRENA、フックの連打から膝を入れ、膝を嫌がって屈んだカネの首を取りフロントチョークの体勢に。だがこれで決めるのは難しいと判断したRENAは、一瞬でカネのバックを取りジャーマンでカネをマットに叩きつける。ギアが入ったRENAの試合展開の速さにカネは全くついていけない。
3Rに入ると、RENAの一方的な攻めにカネは守るだけで精一杯。手が出せないカネの首を掴み強烈な膝を2発、3発、4発とカネの顔面に叩きこむ。完全に勝負アリと見たレフェリーが試合をストップ。圧倒的な強さで誰もが認める初代SB世界女子フライ級女王となった。
その後はRIZINとシュートボクシングの試合を行き来し、連勝に次ぐ連勝。2017年7月7日のイリアーナ・ヴァレンティーノ戦での判定勝利を最後に、主戦場をRIZINに移す。
RIZINデビュー
シュートボクシングで無双を続けていたRENAは、更なる強敵を求め、2015年大晦日を皮切りにRIZINでのキャリアをスタートする。大晦日の初戦でイリアーナ・ヴァレンティーノ、次戦ではシンディ・アルベスを危なげなく判定で破り、2016年9月25日、山本”KID”徳郁の姉、山本美優とのカードが組まれる。
試合前会見でRENAは「闘うからにはレスリングvsシュートボクシング、そういう図式になる」「打撃は半年そこらで上手くなるものでは無いです」と山本を煽ると、美優はややイラついた表情を見せ、「MMAなんで、打撃にこだわる必要も無いしレスリングにこだわる必要も無い」「まぁ本能で闘います」と返した。さらに会見後山本は「あの子うさぎちゃんみたいに怯えてたわ」とRENAを揶揄し、強気の姿勢を見せた。
試合が始まると、全く畑の違う相手だけに、両者相手の出方や距離感を計りながら様子見の展開に。ラウンド中盤に入るとジリジリとRENAが距離を詰め山本を射程圏内に収めていく。
しかし徐々に手が出始めたRENAの隙をついて山本が強力なタックル。タックルに慣れていないRENAはあっさりとテイクダウンを許しガードポジションに。一旦立ち上がろうとするも、バスターでマットに投げつけられ、再びハーフガードの状態からパウンドの連打を浴びてしまう。
しかし、RENAはその長く強靭な足を上手く使い、下から山本をコントロールしながら立ち上がる。山本はRENAの足を取り再び転がそうとするが、打撃に対してやや意識が薄れて来た山本に、左ジャブをクリーンヒット。RENAの打撃はジャブでさえ十分に相手を仕留める力がある。山本はリングに膝を突き、RENAは一瞬の隙も与えずにパウンドの連打を浴びせる。
そして、何とか立ち上がろうとする山本の首に腕を回し、フロントチョークを極める。山本はなすすべなくマットにうずくまり、無念のタップ。レスリングの女王に一本勝ちという完璧な形で、観衆にシュートボクシングの強さを証明した。
試合が終わるとRENAは山本の元に歩み寄り、山本の手を取って深々と頭を下げた。この礼儀正しさ、スポーツマンシップも彼女の魅力の一つである。
その後もRENAは自身の強さに驕る事無く鍛錬を続け、更に連勝記録を伸ばしていく。そして2017年10月15日、2011年以来、負けなしの21連勝という驚異的な成績を引っ提げて、RIZIN女子スーパーアトム級ワールドグランプリの女王の座獲得に名乗りを挙げる。
ライバルとの出会いと挫折
一回戦目の相手は、アメリカの総合格闘技団体KOTCの初代女子アトム級女王、アンディ・ウィン。流石に世界中から猛者が集うRIZINの舞台、初戦から楽な相手ではない。
1R前半はウィンにテイクダウンを取られてパウンドを喰らい、立ちあっがてもバックを取られ後ろから殴られ続ける等、ウィンの強いフィジカルに押されるシーンもあったが、なんとか距離を作り、打撃戦に持って行くと、RENAはウィンに壮絶なパンチの連打を畳みかける。マシンガンの様な連打の中でもキチンとパンチを上下に分け、ウィンのボディが空くとそこに強烈なブローをめり込ませる。まるで男子の試合を見ているかのような鈍い音が会場に響き渡る。
ウィンもRENAに組みついてくるが、それを突き放し、RENAはハンマーの様なボディブローをウィンの腹に叩きつける。ウィンは流石に耐え切れず、悶えながらマットにうずくまり、RENAのKO勝利となった。
そもそも女子の試合でボディブローでのKO勝利なんて滅多に見られるものではない。『生き物としてのレベルが違う』と言っても良いレベルの圧倒的な試合であった。
そして2017年大晦日、さいたまスーパーアリーナで行われるRIZIN女子スーパーアトム級ワールドグランプリ準決勝&決勝にRENAは駒を進める。
準決勝ではアイリーン・リベラに右フックで1RTKO勝利。全く危なげのない内容で決勝へ臨んだ。迎えるのは、この試合以降RENAの最大のライバルとなる、浅倉カンナである。戦績や直近の試合内容からも、多くの人はRENAの勝利を予想していたが、試合は予想外の展開に・・。
1R、いつものようにRENAは距離を取りながら相手の力量を計っている。そこに浅倉は最大限に低い姿勢からの猛烈なタックル! 凄まじいパワーでRENAを持ち上げマットに叩きつける。浅倉のあどけない表情とは似ても似つかぬとてつもないパワーにRENAも少々驚いているように見える。
カンナの強烈なタックルが脳裏に焼きついてしまったせいか、RENAはなかなか思い切った攻撃が出来ない。その隙に再び浅倉は低い姿勢からタックルを仕掛けテイクダウン。サイドポジションからバックへと目まぐるしく体勢を変えRENAを翻弄し、何とか立ち上がろうとRENAがマットに両手をつけた隙に首に腕を回し、バックチョークを完全に極める!
完全に技が極まっているにも関わらず、女王の意地でRENAはタップせず、意識があるのかないのかすら分からない状態で、レフェリーが危険と判断してストップし、浅倉の一本勝ち。世紀の大番狂わせに会場は阿鼻叫喚となった。
RENAは会場を出るとすぐに廊下の床に座り込み、言葉もなく泣き崩れていた。6年間以上無敗の絶対女王と呼ばれ、勝つことが当たり前とされる中、闘い続けてきたのだから無理もない。だが、その後の会見では記者達に笑顔を見せ「ここからまた強くなれるから」と前向きな姿勢を見せてくれた。
絶対負けられないリベンジ戦へ
そして、リベンジの機会はすぐにやってきた。
2018年5月6日、RIZIN10で浅倉カンナがメリッサ・カラジャニスに判定勝ちを収めた後、RENAがマイクを持ってリングに上がり、大衆が見守る中、再戦を申し込んだのだ。
あれだけ完璧な一本を取られてから、わずか半年。再戦にはまだ早いのではないかと、多くの格闘ファンは思っただろう。しかし前回の試合からわずか8か月後、この宿命の二人は再び拳を交える事になる。
2018年7月29日、二人の闘いは試合前から始まっていた。リングでRENAと対面した浅倉は「もうこの時点で圧を感じました、めちゃめちゃ怖かったです」と、RENAの気迫の凄まじさを語っている。
1R、RENAが「イヤな練習をずっとやってきた」というように、かなりグラウンド対策をしてきたようだ。簡単に浅倉の土俵には引き込まれない。浅倉自身「RENAさんのグラウンドの対応が年末とは全然違う人みたいで」とRENAの著しい成長を認めている。グラウンドに持ち込まれ、浅倉に乗られてもRENAは上手く身体を回転させながら体勢を逆転させる。本当に恐るべき成長力だ。グラウンドから立ち上がるとRENAの強力な打撃が待っているが、浅倉はまたすかさず足を取りに行く。目まぐるしい攻防の中1Rは終了
2Rに入ると、まさにRENAらしい息もつかせぬ激しい打撃が浅倉を襲う。浅倉がテイクダウンを取り上になっても、下からバンバン拳を返してくる。ややペースがRENAに傾いてきた。ラウンド後半には浅倉に腕ひしぎ十字を極められそうになるが、一瞬で上手く体勢を変え、カンナを両足で挟みこむようにして力を分散させ、なんとかこのラウンドを乗り切った。
3Rも一進一退の攻防が続くが、中盤でRENAが出した右のインローを取ってテイクダウンしようとした浅倉を上から押さえつけ、浅倉がうつ伏せ状態でノースサウスに。絶好のポジションにつけたRENAは浅倉の側頭部に強烈な膝を叩きつける。しかし浅倉もやられっぱなしではない。一旦立ち上がろうとしたRENAの頭に手を回し、そのまま後ろへ綺麗に投げ飛ばし、体勢は逆転。全く予想していなかった技にRENAも対応出来ず、そこへ浅倉はパウンドの連打を浴びせる。さらにRENAの腕を掴み腕ひしぎの体勢に持って行こうとする。RENAの肘が伸びかけ、解説からも「これは危ないな」と声が出たが、なんとRENAは肘を取られたまま立ち上がり、左足で浅倉を踏みつける! 何という根性だろう。さすがに一旦腕を離し立ち上がるも、浅倉は執拗にタックルで攻める。もう最後はお互い殴り合い、絡み合いの根性の勝負になったところで試合は終了。
互角の闘いには見えたが、テイクダウンや3Rの投げ等が点数に響いたか、0-3で敗れRENAのリベンジは果たせなかった。
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2018/07/29/4642020f9e6961472aa46bf6cf9118bcd7637816_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)
試合後インタビューでは前回とは違い、全てを出し切ったスッキリした顔でインタビューに応じながらも、激闘の疲れからか「一旦格闘技から離れようと思います」「一旦自分を見つめ直して、そっから第二章があるのか、無いのか判断したいと思います」と、今後について語った。
しかしそんな会見を終えてから一年も経たぬうちに、RENAは更なる強敵と闘う事になる。格闘技の女神に愛されし彼女は、どんなに激しい闘いを繰り返し疲れ切っても、またすぐに熱い闘いを欲してしまうのだろうか。
ベラトールへの挑戦と更なる成長
RIZIN15でサマンサ・ジャン=フランソワを判定3-0で下して見事な復帰を果たし、そして次戦はなんとアメリカで2番目に大きい総合団体ベラトールの選手に挑戦を決めたRENA。
試合は2019年6月14日、対するはリンジー・ヴァンザント。
試合が始まると、RENAは距離を取りながらローキックやフックでプレッシャーをかける。打撃ではやはりRENAが有利か、徐々に距離を詰め射程圏内にリンジーを収めていく。しかし、勝負を急ぎ過ぎたか、ケージの端にリンジーを追い詰め膝を出したところにリンジーがタックルで合わせてきてテイクダウン。圧倒的なレスリング力を持つリンジーに完全にグラウンドを支配され、RENAは何もできない。何とか立ち上がろうとしてもバックからしがみつかれ、またマットに引き込まれる。これはまさにアリ地獄である。なす術がないままバックチョークを極められ、締め落とされてしまい、夢のベラトールでの勝利は叶わなかった。
試合後RENAは「すみません。また同じ負け方しました。やっぱり私MMA向いてないわ 悲しませてごめんなさい…」と悲壮感を漂わせながら語った。
それにしても、RENAの立ち直りの早さには本当に驚かされる。なんとベラトールでの敗戦からわずか4か月後にはRIZINのリングに復帰し、アレキサンドラ・アルヴァーレをたったの20秒、数発のパンチでマットに沈めてしまう。
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2019/10/12/f58c3cd880ffa23444dd342cbde21f8580d78f14_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)
ここで再び勢いを取り戻したRENAは、2019年大晦日、アメリカで敗れたリベンジを果たすため、リンジーを日本の、RIZIN20のリングで迎え撃つ。
挫折を乗り越え再び栄光の道へ
寝技の技術が更に格段に上がったRENA、1R中盤にテイクダウンされリンジーからの激しいパウンドを喰らうが、なんと後半にはスウィープしてリンジーのサイドポジションを取る。そこから肘と膝を激しく叩きつけ1Rは終了。
2R以降、RENAからのグラウンドでの膝と肘に恐怖を植え付けられたか、リンジーはタックルをするにも非常に慎重になる。しかし立ち技ではやはりRENAが有利、かと言ってグラウンドにも大きなリスクがある。その中でも2R終盤、スクランブルでもみ合う中でリンジーはRENAの首に足を絡め、三角締めを極めたかに見えたが、RENAはその驚異的な根性でラウンド終了まで持ちこたえた。
この三角締めに全ての力を込め、使い果たしたか、3Rに入るとリンジーの動きにキレが無くなり、終始RENAがプレッシャーをかける形で試合終了。
ジャッジは文句なしの3-0でRENAの勝利。アメリカでの雪辱を日本で果たし、RENAが世界で通用する事をアピールした。
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2019/12/31/157a9f6a460ca4c23606f9db2699a04c679d0c37_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)
その後は2020年9月27日のRIZIN24で富松恵美を3-0の判定で破り、翌年RIZIN32では、リベンジに燃える山本美優のグラウンドでのプレッシャーに苦戦するも、2R中盤、山本のタックルに膝蹴りを合わせ、痛みにうずくまる山本に容赦ないパウンドの嵐を浴びせてTKO勝利。山本は悔しさのあまりリングにうずくまったまま咽び泣いていた。
大晦日、日韓女子ストライカー対決へ
群雄割拠のRIZINのリングで4連勝という、かつての勢いが垣間見える快進撃の中、次戦はパク・シウと拳を交える。
1R前半はお互い距離を取って打ち合っていたが、中盤に入るとパクが持ち前のフィジカルを活かしてRENAをコーナーに押し込み、プレッシャーを与えていく。しかしラウンド後半、RENAは上手く身体を回して体勢を逆転させると、強烈な膝やフックをパクのボディにめり込ませる。パクがRENAの打撃を嫌がる素振りを見せたところでラウンド終了。
2Rが始まるとすぐに両者激しい打ち合いに。RENAが打撃に集中している所をパクがテイクダウン。だがグラウンドディフェンスも相当上手くなってきているRENA、うまく足を使いパクをコントロールし再びスタンディングへ。さらに壮絶な打ち合いが始まり、互いの力を込めた拳がヒットするたびに、会場に鈍い音が響き渡る。どちらが優勢ともつかぬまま最終ラウンドへ。
3Rも両者一歩も引かぬ勝負を見せたが、決定的なチャンスは訪れず判定へ。試合内容は互角に見えたが、コーナーで押し込んでいた時間の長さや、テイクダウンの多さがポイントに響いたか0-3でRENAの敗北となった。
試合後のインタビューでは「やる気、気持ち的には全然消えてないんで、来年はリベンジに燃える闘いにしたいなって言う風に思っています」と語り、前向きな姿勢を見せた。
RIZIN女子スーパーアトム級ワールドグランプリ開幕へ
その宣言通り、2022年7月31日、RIZIN女子スーパーアトム級ワールドグランプリの一回戦に参戦し、アナスタシア・スヴェキッスカに判定3-0で勝利。同様に参戦しているパクも浅倉カンナに判定勝利し、次戦もしくは、両者が勝ち上がって決勝戦でリベンジマッチが実現するかもしれない。
シュート時代を含めると60戦近くの激戦を乗り越えてきたにも関わらず、未だに衰えを見せないRENA。この先もパク・シウとのリベンジマッチ、朝倉カンナとの再戦、ベラトールへの再チャレンジ等、彼女の格闘人生には多くのドラマが待っている。そんなRENAからはまだまだ目が離せない。
RENAの知りたいトコ!
RENAの彼氏はどんな人?
愛くるしい美貌と桜花爛漫なキャラクターを持つRENAだけに、さぞかし男たちからの誘いも多いだろうと思いきや、RENAの恋愛事情に関する情報は驚くほど少ない。それだけ格闘技にまっすぐ生きてきたのだろう。
唯一確認できるのは、SB協会統括本部長 森谷博との噂だけだ。こちらは2019年2月に週刊誌「FLASH」のスクープにより発覚したのだが、業界内では割と有名なカップルらしい。
SB界の実力者の大きな支えがRENAのスターへの道を後押ししていくれていたのかもしれない。
朝倉カンナとは大の仲良し
実はあれだけの激闘を繰り広げた浅倉とRENAは、山本美優戦の時は一緒に対策を練り、練習相手をする程の仲の良さらしい。一緒に電車の中でずっと話したり、二人で花やしきに行った事もあるそうだ。お互い試合で闘う事には抵抗があったが、RENAの「試合の時は試合の時だ」という言葉でカンナの気持ちも吹っ切れ、ファンも息を飲む激闘が生まれたのだという。
一番の恋人はおはぎ?
RENAのインスタにも度々登場するフレンチブルドッグのワンちゃん達。現在4匹のワンちゃんを飼っているようだが、その中でもおはぎへの溺愛ぶりはSNSを通してもしっかりと伝わってくる。ペットに愛情を注ぎすぎると婚期が遅れるという話を聞くこともあるが、噂になっている森谷氏はおはぎという壁を越える事ができるのだろうか。
まとめ
ここまで“ツヨカワ女王” RENAのストーリーを見てきたが、如何だっただろうか?今ほどの女子格闘技の人気が無かった時代、しかも格闘技界時代が冬の時代と言われていた時期を乗り越え、女子格闘技を引っ張り続けてきたRENA。
今後は現在のライバル達との闘いに加えて、大島沙緒里、石澤星花等の若く勢いのある選手達との世代交代をかけた闘いも絡み合う中で、RIZIN女子スーパーアトム級は更に白熱した舞台になっていくだろう。
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2021/11/20/f7d5f50c77128400a2dd28028dba3a34afeb1db3_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)
まさに戦国時代のようなこの舞台で今後どうRENAが立ち向かい、私たちに感動を与えてくれるのか、これからもRENAの活躍を皆さんと一緒に見守っていきたい。
※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用