鉄壁の防御、空気を切り裂く程のハンドスピード、変幻自在のコンビネーションそして正確無比なカウンター。卓越したテクニックとスピードで世界中の格闘ファンを虜にしている“ブレスト”こと、 マックスホロウェイ。神の加護を受けているというそのニックネームの通り、彼は人間性も抜群で、今やアメリカの国民的格闘家と言っても過言ではない。
一体ホロウェイは、どうやってここまで強くなり、アメリカを代表する大人気格闘家へと成長していったのか、今回は“ブレスト” マックス・ホロウェイを丸裸にしていこう。
マックス・ホロウェイのプロフィール
名前 : マックス・ホロウェイ
生年月日 : 1991年12月4日
出身地 : ハワイ・ホノルル
身長 : 180cm
体重 : 65.7Kg
戦績 : 23勝7敗(10KO 2SUB)
階級 : フェザー級
所属 : グレイシーテクニクス
獲得タイトル : 元UFC世界フェザー級王者
入場曲 : Kate Bush 「Running Up That Hill」
バックボーン : ブラジリアン柔術
公式 HP : ー
Twitter : @BlessedMMA
Instagram : Max Holloway
Youtube ー
アパレル https://www.shopmaxholloway.com/
ファンクラブ ー
ホロウェイは今年で31歳になるが、選手寿命が伸びている昨今の格闘技界ではまだまだ若手な方である。これからさらに進化し、再びタイトルに挑戦するチャンスは十分にあるだろう。ここからは彼がどのようにしてUFCに辿り着き、活躍をしていったのか、彼の幼少期まで遡って見ていこう。
荒れた環境からプロの格闘家の道へ
ホロウェイは1991年12月4日、ハワイのホノルルで生まれた。
“ブレスト” つまり神のご加護を受けているというニックネームをもつホロウェイだが、決して恵まれた環境で育ったわけでは無かった。父親は麻薬の常習者で母親に毎日のように暴力を振るい、ホロウェイが11歳の時に蒸発。母親もまた麻薬を常用しており、一人ではホロウェイを育てることが出来ず、叔父叔母の助けを借りてなんとか生活を続けていく。
ハイスクール時代、喧嘩に明け暮れる中で友人の勧めによりキックボクシングジムに入会。
なんとそのたった3日後に、ジムのコーチから35ドルの謝礼を出すから出てみないかと試合に誘われ、見事に勝利を収める。
この勝利で手ごたえを掴んだホロウェイは、当時世界的に人気を博したK-1に出場するために練習に打ち込む。だが、時が経つにつれて世界的なK-1の勢いは衰え、入れ替わるように総合格闘技のUFCが大きな注目を浴びるようになる。
ホロウェイはUFCの魅力の虜になり、MMAに転身。この時に彼は当時のフェザー級チャンピオンだったジョゼ・アルドを倒し、フェザー級チャンピオンになる、という夢を掲げた。
MMAプロデビュー
2010年9月、ホロウェイは、18歳の若さでハワイのローカルMMA団体X-1にてプロデビュー。最初は“リトル・イビル” (小悪魔)というニックネームを名乗っていた。
デビュー戦を判定で勝利すると、その後も連勝を重ね、約一年間で4戦4勝。3戦目ではX-1のライト級タイトルに挑戦し見事タイトルを手にする。
Jul1.2011
Max Holloway competes in his final fight before entering the UFC,
when he def. Eddie Rincon by unanimous decision pic.twitter.com/d2Q4dmY7xT
— MMA History Today (@MMAHistoryToday) July 2, 2018
ホロウェイは、判定決着が多かったが、その若さと実績、将来性を買われ、弱冠20歳でUFCとの契約を果たす。
このUFCデビューに向けて、キリストへの信仰心があるホロウェイは“リトル・イビル” というニックネームに違和感を感じ、名付け親であるコーチに名前を変えてもらうように懇願。コーチは、ホロウェイの類まれなる才能にちなんで“ブレスト” にニックネームを改名した。
UFCデビュー
いきなりの強敵
“ブレスト”という名前をつけてもらった直後だったが、ホロウェイは早速神に見放されてしまったようだ。
なんとUFCはホロウェイのデビュー戦の相手に、後にコナー・マクレガーを二度も倒す事になる、あのダスティン・ポイエーをぶつけて来た。
そのポテンシャルもさることながら、MMA歴も短いホロウェイに対して、幼少期からキックボクシングやブラジリアン柔術に親しみ、プロMMA歴も3年を超えると言う経験の差はかなり大きく影響するだろう。
2012年2月4日に試合は行われた。
前半はキックボクシングの技を巧みに使い、自分の距離で互角に打撃で渡り合っていたホロウェイだったが、ラウンド中盤でポイエーにテイクダウンを奪われマウントを許す。
完全にグラウンドを支配され、ポイエーは腕ひしぎから三角締めに移行、さらにホロウェイの腕を取って三角固めに入り、これが完全決まった所でレフェリーがストップ。
ホロウェイは、憧れだったUFCの舞台で、打倒ジョゼ・アルドに向けて、最悪のスタートを切ってしまった。しかし、その後は順調に勝ち星を重ね3連勝と、いい形で2012年を終えた。
悪夢の2013年
2013年の初戦では、デニス・バミューデスに敗れ、またもや幸先の悪いスタートを切ってしまう。連敗は避けたいホロウェイだが、そのタイミングで8月17日、あのコナー・マクレガーを迎える。
当時のマクレガーはまだUFC2戦目。デビュー戦は華々しい1RKO勝利を見せたが、まだ実力は未知数とされていた。そのド派手な売り込みかた、破天荒な言動により、早くから観客やメディアの関心を集め、ランク外の選手同士の戦いにも関わらずこの試合は大きな注目を集めた。
一方的に注目を浴びるマクレガーに対してホロウェイは試合前
「彼はアイルランド出身でUFC初のビッグネーム、ビッグスターであり、UFCはアイルランド出身者を必要としている」
と語り
「彼の輝きを嫌っているわけではないよ。でも俺は戦う事が好きなんだ。8月17日、ケージの扉が閉まれば、このファイトが誰の為のものなのかわかるだろう。俺は尊敬を勝ち取るつもりだ。自分の力で居場所を掴み取りたいんだ。誰かに『ここがお前の居場所だ』と言われるより、時間をかけて自分の居場所を獲得したいんだ」と、マクレガーとは反対に、自らの拳だけで自分を証明すると宣言した。
そしていよいよ注目の試合が始まる。
1R序盤からマクレガーがキレのあるパンチや蹴りをコンスタントに放ち、ホロウェイを圧倒。ホロウェイも苦し紛れにカウンターを出すが、マクレガーは『なんだそれ?』と言わんばかりに両手を挙げて挑発する。その後も多彩な足技をメインにホロウェイにプレッシャーをかけ続けるマクレガー。ホロウェイは時々ローを出すのがやっとで、終始ペースを握られたままラウンド終了。
2Rに入り、いつまでもペースは握らせないと、ホロウェイも前に出て手を出し始める。何発か良いカウンターも入るが、マクレガーの勢いも止まらず、一進一退の攻防が続く。ラウンド後半、ホロウェイの出したハイキックを掴んでマクレガーがテイクダウン。マクレガーが終始グラウンドでも優勢に立ち、ラウンド終了。だが立ち上がるマクレガーの歩様に違和感が見られる。実はグラウンドの攻防の中で、ホロウェイが自分の足をマクレガーの足に絡めてブリッジをし、その勢いでマクレガーは膝を負傷してしまっていたらしい。
最終ラウンド、明らかにフットワークが鈍ったマクレガーに、何発かホロウェイの打撃がヒットする。
マクレガーは作戦変更を余儀なくされ、ホロウェイにタックルを仕掛けて金網に押し付け、力でねじ伏せてテイクダウン。必死にもがいて立ち上がるホロウェイをすぐさま捕まえて再びテイクダウンし、マウントポジションへ。ホロウェイは執拗なパウンドを浴びながらも、マクレガーの呼吸を読んで一瞬の隙に立ち上がり、ワンツーからの強烈な右ハイキックを叩きつけてマクレガーはダウン。フットワークが効かず、立ち技は避けたいマクレガーは三度ホロウェイをテイクダウン。ハーフガードの体勢のまま試合は終了。判定は0-3でマクレガーに軍配が上がった。ただ、敗れたとは言え、その後のマクレガーのKOラッシュを見ると、判定まで持ち込みマクレガーをここまで苦しめたホロウェイは大健闘だったと言えるだろう。
怒涛の快進撃
マクレガーと好勝負を演じたものの、その価値にUFCや格闘ファンが気づくのはそれから数年も後の話で、実績的に3勝3敗と崖っぷちに立たされたホロウェイは、次戦で不本意にも無名の新人、ウィル・チョープとの試合を組まれる。ホロウェイはこの頃の事をこう語る。
「新人と戦うとき、2連敗しているときは、大抵次も負けて、契約解除の書類をもらうんだ。本当に辛い経験だったし、あんな思いは二度としたくない。だから、それをモチベーションにして、地に足をつけて集中できるようにしているんだ。何が起こるかわからない。そのため、今に集中し、一歩一歩、自分の基礎をしっかり固めていく」
辛い2連敗はホロウェイの格闘技への向き合う姿勢を大きく変えたようだった。
その大きな決意にしっかり結果が伴い、ホロウェイはウィル・チョープを2R2:27、スタンディングでのラッシュで粉砕。
これを皮切りにホロウェイの怒涛の快進撃が始まる。
2014年は何と5試合も出場し、全試合KOもしくは一本でのフィニッシュで勝利。特にその年最後の試合ではアキラ・コラサニを相手に、大きく進化した打撃とディフェンステクニックを見せた。巧みなフェイントとカウンターでコラサニを終始圧倒。1R後半には乱打戦の中で、強烈な右カウンターを叩きつけ、ふらつくコラサニにマシンガンの様なラッシュ。
最後は夢中で拳を振り回すコラサニの隙をついて電光石火の右フックでダウンを取り、壮絶なパウンドの連打でレフェリーストップ。このド派手な試合に観客は熱狂し、ホロウェイは初めてのパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを獲得した。
また、ホロウェイがUFCに入るために誓っていた、『打倒ジョゼ・アルド』という目標を知っているかのようにアルドもしっかりと王座を守り続け、彼の挑戦を待っていた。
この怒涛の快進撃の間もホロウェイは一切の油断をせず鍛錬を続け、更なる進化を遂げていく。
次戦でコール・ミラーを判定で破ると、続いてカブ・スワンソンと対戦。スワンソンはあの チャールズ・オリベイラを、低迷期だったとは言えKOで破り、直近の試合で負けるまでは強敵を相手に6連勝と快進撃を続けていた、寝技も打撃も一流の実力者だ。ホロウェイはそのスワンソンを、グラウンドでも支配し、ギロチンチョークでフィニッシュを決めて勝利。
打撃だけではなく寝技も確実に進化しているところを見せた。
ホロウェイの人気の秘密
相手が強くなるにつれ、ホロウェイの知名度は上がっていったが、トラッシュトークを行わず、常に格闘技に真っ直ぐで、相手へのリスペクトも忘れない、そんな彼を心から応援するファンが増え続け、その数もファンからの好感度も、彼のランクや知名度を超えるほどになっていた。
あるインタビューでホロウェイがその事について聞かれると
「わからないよ。ただ、俺も同じ人間だって事が伝わったんだと思うよ。ファンが緊張して震えているのを見ると、俺は彼らに話しかけ『何を緊張しているんだ?俺を刺せば、俺だって君と同じように血が出るんだよ』って。俺はかなり能天気で、いざとなると自分を追い込んでしまうけど、できるだけポジティブでいるようにしている。人々と気軽に会話するようにしてるんだ。その人の今日がどんな一日だったかなんてわからない。もしかしたら、その日が最悪な一日で、消えてしまいたいと思っているかもしれない。そんなとき、笑顔や手を振るだけで、その人の気分が変わるかもしれない。俺はそういう人間になりたいと思ってるよ。成功を収めても、自分は誰よりも優れていると思い込んでいる人がいる。でも同じ人間だし、最後はみんな一緒なんだと思うと、偉そうになんて出来ないよ」
長いコメントではあるが、この中に彼の人間性が全て詰まっているように思う。
そんな彼の人間性にも惹かれ、人々は次々とホロウェイの虜になっていったのだ。
タイトルマッチへのチケット
2015年8月23日には、幼少期の貧しい家庭環境や重い病気を乗り越え、“ドゥ・ブロンクス” という愛称で人々に親しまれているチャールズ・オリベイラと対戦。
オリベイラは2014年初めにスランプを脱出し、4連勝で勢いづき、ここからタイトルに向けて一気に歩みを進めようと言う時だったのだが、皮肉にも神の加護を受けているはずの“ブレスト” が、オリベイラを再び地獄に突き落とす事になる。
試合中、オリベイラは自身のタックルが原因で食道を負傷。身体が麻痺して急遽病院に搬送される事態に。試合は中断され、ホロウェイのTKO勝利となったが、勝者のホロウェイの顔に笑みは無く、「みんな、チャールズに祈りを捧げてくれないか」と、観客に語り掛け、「これもスポーツの一部だ。こんなことが起こるなんて悲しいよ。彼が完全に回復することを願うよ」とホロウェイらしく、チャールズへの心苦しさと、回復を願う気持ちを表現した。
オリベイラはその後、再び長いトンネルの中を彷徨うが、その後不死鳥のように蘇り、ライト級に階級を上げ、数々の伝説をつくる事になる。
ホロウェイに話を戻そう。2015年12月に行われた次戦ではジェレミー・スティーブンス、続いて2016年6月にリカルド・マラスを、どちらも3-0の判定で破ってその連勝を9に伸ばし、ついにタイトルに手の届く場所まで登り詰めた。
だが、その時フェザー級タイトル前線はやや複雑な状況となっていた。実はホロウェイがジェレミー・スティーブンスを破った日と同日、かねてから打倒を目指していたジョゼ・アルドが、あのコナー・マクレガーに敗れてしまい、その後、マクレガーがライト級に挑戦するために、フェザー級での防衛戦を行えなくなってしまったのだ。そこでUFCは暫定王座を二つ作り、それぞれの暫定王座の勝者を統一王者とするという措置を取った。
ホロウェイはこの暫定王座を懸けて、元UFCライト級王者、アンソニー・ぺティスと拳を交える。
ぺティスはテコンドー、カポエラ、ブラジリアン柔術等、実に多彩な格闘技のバックボーンを持っており、その変幻自在の技でKO、一本でのフィニッシュどちらでも極められるオールラウンドファイターだ。
試合は2016年12月10日に行われた。
1R、序盤から両者多彩な攻撃バリエーションを持っているだけに、ハイレベルな打撃戦が繰り広げられる。
2R、右フックを出したぺティスのがら空きの顔面に、ホロウェイのヘビーショットがヒット。ぺティスはキャンバスに転がる。ぺティスの柔術を警戒し、ホロウェイは追撃に行かない。立ち技に戻ると再び激しい打撃戦が始まるが、有効打はホロウェイがやや多い印象で、ぺティスの顔面も徐々に赤く腫れあがっていく。
3Rに入るとホロウェイは更に攻勢を強め、一発一発に力を込めてワンツーや蹴りをヒットさせていく。ぺティスは前蹴りで距離を取ろうとするが、ホロウェイの勢いは止められない。
ぺティスの攻撃が完全に読めて来たか、ホロウェイは次々にぺティスの攻撃に対しカウンターをヒットさせる。いよいよダメージが大きくなってきたぺティスに対し、ホロウェイはギアをトップに入れ、強烈なボディへの回し蹴り、ワンツー、左ミドルキックでダメージを与えながらケージの端にぺティスを追い詰める。さらにそこからマシンガンの様な左右のラッシュ。全く反撃が出来なくなったぺティスを見て、レフェリーはついに試合をストップ。ホロウェイは見事に10連勝でUFCフェザー級暫定タイトルを手にした。
オクタゴンのフェンスの上に飛び乗ろうとしたホロウェイだったが、あまりの喜びに飛び跳ねすぎてオクタゴンのフェンスを飛び越えて転倒するというアクシデントもあったが、怪我は無かったようだ。
試合後のマイクでホロウェイは「これがジョゼ・アルドへのチケットだ」と叫び「彼を見つけたら教えてくれ。待ってるぜ」と、一足先にフランク・エドガーを破り、暫定王者についていたアルドへの挑戦を、興奮気味に宣言した。
タイトルショット
ホロウェイが17歳の時に掲げた『ジョゼ・アルドを倒してUFCフェザー級チャンピオンになる』という目標。まさにその望み通りホロウェイは勝ち進み、そしてアルドも一旦退いた王座に帰って来た。
この奇跡的なストーリーは世界中の格闘ファンの注目を集め、ホロウェイにも多くの取材依頼が集まった。そのインタビューの中でホロウェイは
「俺は自信を持っているし、今まさにそれがにじみ出ている。その自信は今俺の人生の、あらゆる面に影響している。次のUFC212はこれまでの人生で最高の試合にするつもりだ」と誇らしげに語り、「俺はこの瞬間のために訓練してきた、そしてついにこの時が来た。みんなに言っているように、俺は “ブレスト “というニックネームそのものなんだ。以前『俺はスターになる』って言ったけど、それが実現したんだ。そのスターはUFC212でさらに輝きを増すから、見逃さないようにね」と勝利への自信を漲らせた。
そして2017年6月3日、ホロウェイが10年近く待ち焦がれた、フェザー級統一王座決定の瞬間がやって来た。試合開催地が、アルドのホーム、ブラジルのサンパウロだった事もあり、選手紹介の時にはホロウェイへのブーイングが飛び交い、完全アウェーの空気。
試合が始まり、1R前半は落ち着いた空気の中で単発に打撃を出し合う。途中でアルドが飛び込んでラッシュを仕掛けるが、大きな展開にはならなかった。
2Rに入ると、両者のエンジンがかかり始め、距離を縮めて打ち合う。地元の大歓声から力をもらったアルドの強烈な拳が何発かホロウェイの顔面を赤く腫れあがらせる。
3R、ホロウェイがトップギアを入れて左右のフックを出しながら前に出て来る。アルドは前蹴りやバックステップで距離を取るが、ついにホロウェイのビッグショットがアルドの顔面にヒット。そこからはまるで地獄の責め苦の様なパウンドの嵐で、最後はアルドが頭を抱え、反撃も不能になったところで試合はストップ。
試合後、ホロウェイは「最高の気分だよ。以前にも言ったように、王は村に行き、そしてその王位を渡す。これからは “ブレスト “の時代なんだ」と高らかに宣言した。
しかし、ホロウェイは、後日、自分のこの発言をやや行き過ぎた感じたのか、インスタグラムで改めてアルドにメッセージを送っている。
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「敗北というのはこのファイトゲームの一部にすぎない。土曜日の夜は彼から何も奪っちゃいない。彼はひどい減量に耐え、このフェザー級を盛り上げてチャンピオンになった男だ。そして10年間も、自身の誇りのために、チームの為に、そして祖国のために、王座を守り抜いたんだ。決して恵まれた環境からスタートしたわけでもない彼が、何を成し遂げたのか見てくれ。ブラジルの人々は彼を祝福してあげなければいけないよ」とこれ以上ないアルドへのリスペクトを示し、この心の籠ったメッセージは各種メディアに大きく取り上げられた。
コナー・マクレガーがフェザー級に戻って来ない事、そして前回の試合が非常に白熱したものであった事から、同年12月、ホロウェイとアルドのダイレクトリマッチが組まれる。
この試合を前にホロウェイは「試合中、毎秒彼を殴り続けるつもりだ。笑顔でね」と、あくまで試合として、アルドをボコボコにすると宣言し「俺がベストであることを世界に示すんだ」と、試合への意気込みを示した。
2017年12月2日試合は行われた。
試合が始まると、前回同様落ち着いた立ち上がりで、両者単発の攻撃を出し合う。カウンターを狙うばかりで自ら手を出してこないアルドに対しホロウェイは両腕を広げ「どうした?もっと来いよ」とメッセージを送る。それに呼応するようにアルドが左アッパー、そして鋭い踏み込みから左右のフックを連打すると、ホロウェイは拍手を送り、「それでいいんだ」と伝えたところでラウンド終了。
2R、ホロウェイの高い格闘IQがその動きを捉え、徐々にアルドに攻撃がヒットし始める。顔面がみるみる赤くなっていくアルドは、プランを変更しパンチでは無くローキックをメインウェポンに切り替え、ホロウェイの左足を削っていく。
3R、初めはやや距離を取って打ち合うが、徐々に距離が縮まると、ラウンド中盤からは意地とプライドがぶつかり合う乱打戦。スピードとテクニック、高度なディフェンスが入り混じる激闘を目の当たりにし、会場は大きな歓声に包まれる。
ラウンド後半でホロウェイが凄まじいラッシュを畳みかけていく。よくも打ち疲れないものだと関心する程の、息もつかせぬラッシュにアルドは堪らず組みついてグラウンドに引き込むが、そのままマウントを取り、壮絶なパウンドの連打を浴びせ続ける。顔面を血に染め、頭を抱えてなす術がなくなったアルドを見て、レフェリーが試合をストップ。まるでデジャブを見ているような結末だった。
ホロウェイは、金網を飛び越え家族の元に駆け寄り、その喜びを分かち合う。
試合後ホロウェイは
「終わって見れば、結局はこうなる。彼を深い水の中に連れて行き、溺れさせよう……。UFCのファイター達はみんなカップケーキだ。次はどんな味なのか、カップケーキは大好きなんだ。全部食べてやる!」とホロウェイにしては珍しく興奮しつつ攻撃的なメッセージを残した。
地獄の1年間
UFCのレジェンドの一人、ジョゼ・アルド相手に二度も完勝し、王者としての地位を揺るぎないものにしたホロウェイだったが、ここでまた新たな試練と直面する。
2018年7月、UFC226で、連勝を重ねてUFC無敗でホロウェイに挑戦してきたブライアン・オルテガとの試合が、急遽中止となった。理由はホロウェイに起きた『脳震盪の様な症状』との事。
試合数日前のラスベガスでの食事からホロウェイは調子を崩す。チームのスタッフはホロウェイの異変に気づいていたようだが、症状はそれほど重いとは思われていなかった。だが、数日後にホロウェイは意識を失い、目を覚ました後は言葉を上手く発せなくなっていた。脳の以上が疑われたため、病院に入院し精密検査を受けたが、原因はハッキリせず、退院後も症状は続いているという。
ホロウェイは再びオクタゴンに戻る事が出来るのだろうか、彼の目の前に敷かれていた成功の道は一瞬で露と消え、今後の試合に関しては全てが白紙となってしまった。
結局最後までこの症状の正確な原因は分からなかった。同年4月に急遽欠場選手の代替として、ハビブ・ヌルマゴメドフとの試合が決まり、6日で10Kg近くという無理な減量を試みて結局計量に失敗した事か、もしくはラスベガスの食事に毒を盛られていたのでは無いかという憶測もあったが、全ては闇の中だ。
ホロウェイは体調不良と今後の不安が重なり、うつ病にも悩まされ続けた。
奇跡の復活
ホロウェイの、オクタゴンに戻りたいという強い意志と懸命な治療により徐々に症状は回復し、最終的には医療的な全てのテストをクリア。ホロウェイは同年12月、約1年のブランクを経て、改めてブライアン・オルテガの挑戦を受けるために、オクタゴンに帰って来る。
格闘人生で最も辛い1年を乗り越えたホロウェイは試合前、
「もし、今つらい時を過ごしているのなら、がんばってそれを乗り越えてくれ。出口はすぐそこにあるんだ。人はいつも、すぐ近くに突破口があるのに止まってしまいがちだ。そして、辛い事の反対側にあるいい面を見ようとしない。とにかく前に進み続けるんだ」と、同じように苦境に立たされた人たちへのエールを送り、
「辛い1年だったけど、レースをどう始めるかではなく、どう終えるかが重要なんだ。自分がこの世に生まれた理由である、ファイトがまたできて本当に嬉しいよ。全ての出来事には意味がある。一つの扉が閉まれば、別の大きな扉が開くんだ」と、人間的に更に成長した所が垣間見られた。
挑戦者のオルテガは、UFC参戦後無敗の6連勝中、さらに直近2戦では、フェザー級上位のカブ・スワンソンを一本で、そして元UFCライト級王者フランク・エドガーをKOで破り、当時もっとも勢いのあった男だ。テイクダウン力も高く、グラウンドでのフィニッシュ率にも定評があるオルテガに、ホロウェイが如何に対応していくのかが注目された。
2018年12月8日、ホロウェイにとって1年ぶりのオクタゴンの試合開始のブザーが鳴る。
試合はやはり、オルテガが組み付いてテイクダウンを狙い、ホロウェイは逃れて打撃で勝負に行く展開に。2Rにホロウェイはテイクダウンを取られるが、オルテガ戦に備えきっちりグラウンドディフェンスを身に着けていたようで、しっかりとオルテガの技を封じる。
一旦寝技を諦めたオルテガは3R、ガンガン前に出て重い拳を振り回す。ヘビーショットを何発も喰らいホロウェイの顔面は見る見る赤く染まっていく。試合の流れがオルテガに傾いたかと思われたが、4R、ホロウェイは驚異的な回復力を見せ、序盤からオルテガに壮絶なラッシュを畳みかける。
まるでオルテガの顔面にホロウェイの拳が吸い込まれているのでは無いかと思うほど、面白いようにホロウェイのパンチがヒットし、オルテガの顔面はホロウェイ以上に赤く染まる。ラウンド最後までホロウェイの拳の雨は降り続けたが、オルテガもブザーが鳴るまでその残酷な雨に立ち向かった。
しかし、ラウンド終了後、オルテガの顔面の裂傷が激しいためにドクターストップ。この時点でホロウェイのフェザー級タイトル3度目の防衛が確定した。そしてこの試合で連勝を13に伸ばし、UFCフェザー級の連勝記録を更新、さらに最多フィニッシュ記録も同時に更新した。
試合後ホロウェイは
「他に誰かいないのか?やろうぜ。でも彼は手ごわい相手だった。タフガイだ」と語り、
「この階級は俺が作り上げた。俺がこの階級を面白くしているんだ。ディナ・ホワイト、俺はパウンド・フォー・パウンドのNo.1になりたいんだ。その多くはライト級にいる。さぁやろう」と、階級を上げる事を示唆した。オルテガはかつて非常に謙虚で侮辱的な言葉を言う事も殆ど無い選手だったが、チャンピオンになってからは、フェザー級を盛り上げるために多少派手な発言を心がけるようにしているようだ。
さらなる挑戦と7年越しのリベンジ
いよいよフェザー級の中でホロウェイと戦えるレベルの選手が居なくなり、ついに階級をライト級に上げ二階級制覇に乗り出す。
2019年4月13日に暫定王者戦でライト級デビュー。なんとそのライト級初戦の相手は、かつてUFCデビュー戦で敗北した相手、ダスティン・ポイエーだ。
ポイエーはホロウェイよりも先にライト級に階級を上げ、2017年から4連勝を挙げている。前回2人が拳を交わしたのは7年前。試合前の会見でホロウェイは、7年前の自分と今の自分は全く別だと主張し、「今のマックスなら、オクタゴンに入ったばかりの20歳の頃の自分を血祭りあげるだろう」とその大きな差を表現した。そして「これは簡単な仕事だよ。カップケーキを食べるだけの簡単な事だ」と、7年越しのリベンジ成功を確信している様子だ。
一方のポイエーは、「ライト級に留まりたいなら、常に進化し、より強くなる事だな。そうでなければ静かに消えていくだけだ」とライト級の先輩として助言を与え、
「全てを出し切って、金メダルを持ち帰る。そうなる事を既に分かっている。骨の髄までそう感じているんだ。見てくれよ、すごいことになりそうだ」とこちらも勝利を確信していた。
試合では激しく両者打ち合い、フルラウンドを通して息もつかせぬ壮絶な攻防が行われた。前半はホロウェイがわずかに押しているようにも見えたが、4Rで頭を下げた時に見事にポイエーに膝を合わせられて大出血。だがホロウェイはここから不死鳥のように息を吹き返してラッシュを畳みかけ、ポイエーの顔面が腫れあがる。最終Rも両者一歩も引かずに打ち合い、ラスト10秒の打ち木を合図に正面から全身全霊のど付き合い。どちらも立っていることが奇跡と思える程の壮絶な試合は幕を閉じ、試合は判定へ。
やはり階級が上のポイエーが力で押している印象があり、0-3の判定でポイエーに軍配が上がった。
だが全力を出し合った両者はお互いを称え合い、ホロウェイは試合後のインタビューで
「ダスティン。文句ない勝利だ。おめでとう。俺の夜になると思ったけどしょうがない。結果は結果だ。今後はフェザー級王者としてやり続けるよ。みんなありがとう。ダスティン、おめでとう」と素直にダスティンの力を認め、ライト級から身を引く事を決断した。
フェザー級に戻って来たホロウェイは、次戦でフランク・エドガーと対戦。ホロウェイがかつて対戦したいと切望していた相手だが、元ライト級チャンピオンとは言え、既にピークは過ぎたと考えられていたエドガーが、明らかに不利と見られていた。実際に試合でも3-0の判定でホロウェイが勝利した。
“ブレスト” VS “ザ・グレート”
いよいよフェザー級絶対王者として認知され、ホロウェイの政権は長く続くと、多くの人間が感じていたこの頃、ひたひたとその首を狙って、ホロウェイの背後に忍び寄ってくる者が居た。格闘ファンであればその名を知っている者も多いだろう。そう、あの ”ザ・グレート” アレクサンダー・ヴォルカノフスキーである。
今でこそフェザー級の絶対王者として君臨するヴォルカノフスキーだが、当時はUFCで連勝を重ねてきてはいたものの、ビッグネームとの対戦は殆ど経験しておらず、直近でジョゼ・アルドを倒してはいるものの、アルドは完全にピークを過ぎたと見られていたためそこまで大きな評価には繋がっていなかった。
言葉は悪いが、たまたま対戦相手が居ないからヴォルカノフスキーがUFCから指名されたというだけの試合で、大多数のファンやアナリストはホロウェイの勝利を予想していた。
このマッチメイクに関してはホロウェイも、思う所があったようで、こう発言している、
「今の時代、誰もがビッグマネーを得られるような試合をしたいと思っている。そして彼らは多くの事柄を差し置いて、列に横入りしようとしてるんだ」
これがヴォルカノフスキーに向けた言葉である事は言うまでもない。当時まだUFCランキングで5位以内にも入っていないヴォルカノフスキーは、ホロウェイの眼中にすら入っていなかった。
だが、そんなホロウェイの余裕や大方の予想は、2019年12月14日の試合当日に、大きく裏切られる事になる。
試合は5ラウンドに及ぶ死闘となった。
ホロウェイの鉄壁のディフェンスと強い踏み込みからの強烈なパンチを崩す作戦として、ヴォルカノフスキーは徹底的に足を破壊するプランを立てて来た。コンスタントにローを受け、左足を痛めたホロウェイはスイッチしてサウスポースタイルへ。
しかしヴォルカノフスキーはお構いなく今度はホロウェイの右足を痛めつける。サウスポーにスイッチしてからホロウェイのテンポは狂い、いつもの息もつかせぬコンビネーションが打てない。
終盤に入って再びオーソドックスに戻すと、コンビネーションからのアッパーでヴォルカノフスキーにプレッシャーをかけていくが、奪われたポイントを取り戻すには時間が足りなかった。試合は終了し、0-3の判定でヴォルカノフスキーが大金星。ホロウェイはまさかの王座から陥落、神に見放された瞬間だった。
だがこの試合は、マックス・ホロウェイvsアレクサンダー・ヴォルカノフスキー三部作の始まりに過ぎなかった。
ホロウェイ VS ヴォルカノフスキー ~エピソード2~
王座陥落後に「俺はまだ28歳だ。成長する一方なんだ。また戻ってくるよ」と再びタイトルに挑戦する意向を示していたが、それ以上にホロウェイとの再戦を熱望したのは勝者のヴォルカノフスキーの方だった。
やはりランキングトップ5の外から急にタイトルショットに割り込み、王座を奪っていったヴォルカノフスキーに対し「ホロウェイは油断していた」「まぐれだ」「もう一度やればホロウェイが勝つ」という様な声がチラホラと上がっていた。
その声を受けてヴォルカノフスキーは、”ザ・グレート” という自らのニックネームを証明するためにも、どうしてももう一度、ホロウェイに勝利しておきたかったのだ。
2020年7月11日に試合は予定されたが、コロナのパンデミックの影響で一時は開催が危ぶまれた。濃厚接触を避けるためにホロウェイは試合直前までスパーリングが出来なかったが、2018年の地獄の一年を乗り越えたホロウェイはどんなに困難な時も、その出来事のいい面を探る。試合前には、
「いつもはしつこい怪我があるんだ。でも今回は新しい怪我はなかったよ。このキャンプで目が覚めたんだ。もうそんなにスパーリングをする必要はないんだ」と、スパーリングが出来なかったことをプラスに受け止め、順調に試合に臨む。
そして厳重なコロナ対策の中、無事に試合は開催された。
前回よりもアグレッシブに前に出て手を出すホロウェイ。1R終わりにはホロウェイの右ハイキックがこめかみをかすめ、ヴォルカノフスキーは一瞬グラつく。
2Rに入ると、これまでに互いが細かく出していたローキックにより、両者の膝の上が真っ赤に腫れあがっている。2R終了間際、踏み込んで攻撃に出るヴォルカノフスキーに、ホロウェイがカウンター右アッパーからの左フックを叩きつけ、ヴォルカノフスキーはマットに一瞬膝をつく。
このままホロウェイが圧倒していくかに思われたが、なんと“ザ・グレート” は3Rから息を吹き返し、ボディを絡めたパンチのコンビネーション、強烈な左のカウンターでホロウェイのライフを削っていく。
そして4R、5Rは度々ホロウェイがテイクダウンを取られ、またしても後半は自分のスタイルが上手く出し切れずに試合終了。
見方によってはどちらが勝ってもおかしくない激戦だったが、テイクダウン数、有効打数で上回ったヴォルカノフスキーにスプリット判定で敗れ、ホロウェイはUFCフェザー級タイトルの奪還に失敗した。
ヴォルカノフスキーとしては、この防衛で、王者としての力を世界に証明したつもりだったが、世間はそれでも彼を王者として認めなかった。試合の印象としては何度もダウンを取っているホロウェイの方が追い詰めていたようにも見え、テイクダウンによるポイントは観客にとってあまり印象に残らない部分もあるから致し方ないのかもしれない。そしてホロウェイ自身の人気の高さもその理由の一つだったのだろう。ともかく、ホロウェイvsヴォルカノフスキー第二部は、両者間にまた大きな遺恨を残して幕を閉じた。
記録ずくめの名試合
次戦では、リカルド・マラスや、ジェレミー・スティーヴンスなどの実力者を破り、新たな力として存在感を示し始めた、カルヴィン・ケイターを迎える。
この試合は、終始予想不可能なコンビネーション、正確無比なカウンター、そして重く鋭い蹴りでケイターを圧倒し、その壮絶な攻撃はフルラウンド続いた。ホロウェイは試合全体で744発もの打撃を繰り出し、そのうち445発をケイターに着弾させ、さらに頭部への打撃数は274発と発表され、なんとその全てがUFC最高記録として認定された!
次戦でも危なげなく判定で勝利し、2021年のシーズンを終えたホロウェイ。ちなみにこの試合でホロウェイはUFCで18勝目となり、ジョゼ・アルドと並んでフェザー級歴代勝利数1位タイとなった。
一方、ヴォルカノフスキーもまたブライアン・オルテガやジョン・チャンソンを破って3度目の王座防衛に成功し、その地位を盤石のものにしようとしていた。だが、未だに「ホロウェイの方が強い」という声は根強く、やはり白黒ハッキリさせるためにもこの2人の三度目の対決は避けられないものだった。
ホロウェイ VS ヴォルカノフスキー ~完結編~
ホロウェイvsヴォルカノフスキー、最後の戦いの舞台は2022年7月2日ラスベガスに用意された。
試合前、ホロウェイは過去2戦を振り返り「私がどう思うかは重要ではないが、メディア、世界、人々は分かっている – 世界の80〜90パーセントは私が勝ったと思っているよ」「どちらの試合も僕が勝ったと思ってる。特に2戦目はね。ディナ・ホワイト、そしてUFCファイターの半分が言ったように、彼らは私が十分にやったと思った。私が勝ったと思っていたんだ。あれは誰もが納得いくようなジャッジだったか?それが僕らが今ここに居る、3戦目を必要とする理由なんだ」と、今度こそ自分の力をはっきりと証明しようという強い決意が見られた。
一方ヴォルカノフスキーは
「この階級を卒業するつもりだ。マックスにもう一度勝って、自分が別のレベルにいることを証明しなければならない。この試合の後、もう一つのベルトが欲しいんだ」と、既にこの試合の向こうにある景色の事を考えていた。
試合は、真の王者になるために必死に鍛錬してきたヴォルカノフスキーが大きな進化を見せ、ホロウェイの攻撃をことごとく回避しながら、的確にカウンターを当てて来る。テイクダウンも許さず、スタンディングで終始ホロウェイをリード。
3R以降もヴォルカノフスキーの風を切るような高速ジャブで勢いを制御され、前に出る事が出来ない。次々とヴォルカノフスキーの強烈なフックやワンツーを被弾していく中で、ホロウェイ顔面はボコボコに形が変わり、血に染まっていく。
最終Rでホロウェイは、起死回生を狙ってテイクダウンを狙うが、これも失敗。最後まで手も足もでず、試合は終了。判定は誰の目にも明らかだった。0-3でヴォルカノフスキーが勝利。
この試合でかなり重い打撲を負ったホロウェイはすぐに病院に搬送され、試合後のコメント等は発表されなかった。同じ選手に3度の敗北。これは相当なショックなのは間違いなく、ホロウェイを心配するファンが多かったが、翌日、ツイッターで声明をアップする。
https://twitter.com/BlessedMMA/status/1543712667122032640?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1543712667122032640%7Ctwgr%5E70c3db9af267bf8212514c24b7ce3a3110cfaa47%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.mmafighting.com%2F2022%2F7%2F3%2F23193820%2Fmax-holloway-reacts-ufc-276-loss-proclaims-alexander-volkanovski-mmas-top-pound-for-pound-fighter
「まだ、ノックダウンの回数では2-0で俺の方が勝っている。これは4戦目が必要だな・・・冗談だよ笑。おめでとうブラザー、ヴォルカノフスキー」
そして自身を心配するファンに対しては
To all the fans do not cry for me Argentina. This is part of life. We need to rebuild and we will. I love you!
— Max Holloway (@BlessedMMA) July 3, 2022
「ファンのみんな、俺のために泣くなよ。これも人生の一部なんだ。鍛え直して、またやるつもりだ。愛してるよ」と、健在をアピール、ファンは胸を撫でおろした。
ヴォルカノフスキーには完敗したとはいえ、UFCフェザー級トップコンテンダーの位置を不動のものとしているホロウェイ。今後はタイトルショットを狙う新人達を試す、門番のような存在になるのか、それとも、宿敵ダスティン・ポイエーへのリベンジを果たし、再びタイトルに向かって走り出すのか、まだまだ伸びしろを残すマックス・ホロウェイからはこれからも目が離せない。
マックス・ホロウェイの知りたいトコ!
マックス・ホロウェイは結婚している?
ホロウェイは実は2012年にモデルであり、元女優でもあるKaimana Pa’aluhiと結婚したが、2017年にどうしても受け入れられない価値観や性格の違いの為に破局。息子が居るが、平等の親権を得て子どもとの関係は順調なようだ。
また、2020年からはアメリカのモデルであり、TVタレントのシャニース・ヘアストンとの
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交際が公になっており、同年11月には婚約を発表した。インスタグラムにも度々その美しいパートナーの姿を披露しており、ファンは毎度その美しさにため息を漏らしているようだ。
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ドナルド・トランプがホロウェイの大ファン!?
UFCの会長、ディナ・ホワイトとも親交があるというドナルド・トランプ元大統領。2018年にホロウェイvsオルテガのタイトル防衛戦を観戦したところ、ホロウェイの熱いファイトと、そのスポーツマンシップに大きな感銘を受けたという。そして数日後、ディナ・ホワイトに電話をかけ、「私がこれまでの生涯で観た中で最高の試合だった」とホロウェイのファイトを称え、その感動を15分に渡ってディナに伝えたと言う。
アメリカを象徴する人物でさえここまで惚れこんでしまうのだから、多くの国民が虜になるのもうなずける。
ホンモノのボランティア精神を持つ男
ホロウェイが活躍するのはオクタゴンの中だけではない。金網の外では様々な困難と戦う人の背中を後押しし、一緒に戦っている。
2020年、コロナ禍で失業率が40%を超え、危機的状況にあるハワイの為に、フードバンクが主宰するイベントに参加し、募金を集める為の活動をしたり、自らの私物をオークションで販売し、21000$という大金を寄付する等、ハワイの経済的困窮者をバックアップ。
またネバダ州唯一の小児病棟に赴き、子ども達にプレゼントを寄付するなどの活動も行っており、これらの功績を称えられ、2021年にUFCから「フォレスト・グリフィン・コミュニティ賞」を授与されている。これだけの強さと人気、そして優しさを備えているホロウェイはまさに“ブレスト” 神の加護を受けていると言っても大げさではない。
実は日本の元関取、小錦と親交があった!?
ホロウェイは小学6年生の時に、同郷の元大関小錦が立ち上げた「小錦キッズ」というイベントに応募。
「小錦キッズ」とは、ハワイの子ども達に世界の広さを知って欲しいと、ハワイ出身の小錦が立ち上げた基金の事で、その活動の一環として作文コンテストを開催し、最優秀賞に選ばれた子どもが日本への研修旅行に参加できるというものだった。
なんとこのコンテストでホロウェイは、最優秀賞として選ばれる。だが、残念な事に、ホロウェイが学校で問題児扱いされているという事を理由に、学校の教師によって訪日は取り消されてしまう。
ホロウェイはこの事が原因でかなりやさぐれたそうだ。だが、後にホロウェイと小錦本人との対面が実現し、小錦本人も当時を振り返って
「それを知ってものすごく憤りを感じたよ。先生達がえこ贔屓してた事は問題だ」
と語っている。
まとめ
ここまで、マックス・ホロウェイのストーリーを見てきたがいかがだっただろうか。過酷な少年時代を経て、高校時代は喧嘩に明け暮れる中でキックボクシングに入会。時代が変わり、UFCが有名になっていく中で、ジョゼ・アルドを倒すために総合格闘技を始める。恐ろしい早さで成長していくホロウェイは、ついに目標だったジョゼ・アルドを2度も破り、UFCフェザー級チャンピオンに。だが、アレクサンダー・ヴォルカノフスキーの出現によって王座から陥落し、さらに2度王座奪還に失敗。苦汁を舐めたホロウェイだったが、ツイッターで健在をアピールし、まだまだ今後の活躍が期待できる。
オルテガはホロウェイとの再戦を望んでおり、また、ヴォルカノフスキーが階級変更に興味を抱いている事から、フェザー級の王座が空位になり、タイトルを争ってオルテガと再戦、またはポイエーと三度目の対戦、という可能性もある。現在フェザー級の最多勝記録タイを持っているホロウェイが、この記録を更に伸ばし、レジェンドとなる事を期待しているファンもいるだろう。いずれにしてもこの強さと優しさと品格を備えた元チャンピオンは“ブレスト” の通り名の通り、神の加護を受け、これからもUFCを盛り上げてくれることだろう。これからもみなさんと一緒に、マックス・ホロウェイを応援していきたい。
※アイキャッチはUFCの公式HPより引用