オーディオ記事
恐らく昭和後期~平成初期に生まれた人で、サッカー選手、三浦知良を知らない者は殆どいないだろう。キング・カズとして、55歳になった今でも現役を続けるサッカー界のレジェンドである。
そんなビッグネームの次男として生まれた三浦孝太だが、生きていくフィールドとして選んだのは、サッカーのグラウンドではなく、総合格闘技のリングの上だった。
総合の経験はまだまだ浅く、試合経験に至ってはゼロだった三浦だが、日本最高の格闘技団体、RIZINの2021年大晦日でのイベントに大抜擢され、その高いポテンシャルと弛まぬ努力で見事に勝利を掴んだ。
一体彼がどのようにして格闘技を始め、そしてRIZIN出場のチャンスを掴むまでに至ったか、今回は“リトルキング” 三浦孝太を丸裸にしていこう。
三浦孝太のプロフィール
名前 : 三浦孝太
生年月日 : 2002年5月28日
出身地 : 兵庫県神戸市
身長 : 175cm
体重 : 66Kg
戦績 : 2勝0敗(1KO 1SUB)
階級 : フェザー級
所属 : BRAVE
獲得タイトル : ー
入場曲 : 「オトコハツライヨ」
バックボーン : ボクシング
公式 HP : ー
Twitter : ー
Instagram : 三浦孝太
Youtube: ー
アパレル: ー
ファンクラブ: ー
弱冠20歳で、MMA歴も短い三浦は伸びしろたっぷりの将来有望なファイターだ。
三浦がどのようなきっかけで格闘技を始め、RIZINのリングにたどり着いたのか、ここからは三浦のこれまでの人生を幼少期まで遡って見ていこう。
三浦孝太の少年時代
2002年5月28日、三浦孝太は、兵庫県神戸市で、“サッカー界のレジェンド” 三浦知良と、“主婦界のカリスマ” 三浦りさ子との間に生まれる。
キング・カズの影響で、孝太は、当たり前のように小学生からサッカーを始め、サッカー選手を目指して『リオFC』 というクラブチームに所属。
中学校は早稲田実業学校中等部を卒業し、高校は明星学園高等学校を卒業している。
中学時代から、ボクシング好きな父・知良の影響もあり、週一のペースでボクシングジムに通い始めるが、この頃は“プロになる” という様な事は考えておらず、単純に”強くなれたらいいな” という気持ちで練習していたという。
高校に入るとKRAZY BEEなどの総合格闘技のジムに通いだすようになり、最終的には“ヘラクレス” 宮田和幸の主宰するBRAVEに正式に入門する。
格闘技のトレーニングを趣味として行いつつ、父の足跡を追い、プロのサッカー選手を目指していた三浦だが、高校2年の頃に腰を痛め『腰椎椎間板ヘルニア』の診断を医師から受け、長期療養を余儀なくされる。
数カ月間の入院とリハビリによって回復はしたが、サッカーの成績はなかなか振るわず、大会でも3回戦敗退と勝ち上がれない中で、サッカーを辞める事を決意。プロサッカー選手の夢を断念する。
格闘家の道へ
その後、総合格闘技を続ける中で「格闘家として生きていきたい」という気持ちが固まっていき、高校を卒業後は大学には進学せず、BRAVEの寮に入り、宮田の住み込みの内弟子となった。
日本中から猛者が集うBRAVEでのスパーリングは非常に過酷だったようで
「みんな物凄く強くて、最初はボコボコにやられました(笑)。力で勝てる人もいなかったので、精神的にキツかったですね」
と語る。
細かく父・知良と連絡を取り合っていた孝太はある日
「本当に俺は成長してるのかな。あんまりうまくいかない・・・」と弱音をこぼす事もあったそうだが、父・知良は
「始めたばかりなんだから当たり前だよ。あまり考えすぎずに格闘技に向き合え」と彼を元気づけた。
RIZIN電撃デビュー
デビュー戦はイケイケホスト!?
キング・カズの息子だからと言って特別扱いはされず、厳しい環境で日々トレーニングを続ける三浦にビッグプロモーションがやってくる。
なんと格闘技試合経験ゼロの三浦にRIZINへの出場オファーが舞い込んだのだ!
このビッグプロモーションの理由をRIZINの榊原CEOはこう語る
「(三浦は)親の七光りであっても使えるものを使って這い上がるという野心を強く持っている。であれば、デビュー戦からRIZINでいい。どこかの団体でキャリアを積んで、そこで何勝かしてRIZINに上がってくるより19歳の若さの彼にチャンスを与えたい」
と語り、親の七光りがどこまで通用するか、試したいという気持ちを示した。
一方、その七光りの光源であるキング・カズはこれに大反対したという。しかし、息子孝太と根気よく話合っていくうちに『もしかしたら今回が最後のオファーかもしれない。そのチャンスを逃す人になるのはよくない』と考え、格闘技試合経験ゼロでのRIZIN出場オファーを承諾した。
しかし、やはり世間からのプレッシャーやいきなりの大晦日の大舞台に、相当重圧を感じていたようで、デビュー前の心境を振り返って三浦は
「初の格闘技の試合で酷いやられかたをすることもあるだろうし、試合までに『いろんなバッシングがあるだろう』ということは容易に想像できました。だけど、覚悟を決めてチャンスに飛び込んでいかないと、目標とするお父さんのような”スター”には絶対なれない。最初は少し複雑な気持ちがありましたが、出場を決めてから試合までは『もうやるしかない』と腹を括って練習に励みました」
と後に語っている。
三浦のRIZINデビューの為に、ブラジルの選手が来日する事が予定されていたが、コロナの影響で渡航が難しく、日本の元ホストYUSHIをデビュー戦の相手として迎える事となった。
YUSHIは、元ホストという異色の経歴の持ち主だが、地下格闘技で8戦7勝1敗という好成績を残し、ボディビルでも数々のコンテストで入賞。現在は総合格闘技の練習に励み、彼にとっても今大会が総合格闘技デビューとなる。
三浦はYUSHIと初対面し「カッコ良い」という印象を持ったそうだが、「試合に出していただくからには、格闘技ファンや一般の方にも楽しんでもらえるような試合をする」とコメント。YUSHIは「RIZINという大きな舞台に出させていただき幸せ。僕には僕にしか見せられない役割がある。すべての面で“カッコ良い姿”を見せたい」と語った。
三浦孝太に「カッコ良い姿とは?」と聞かれると、YUSHIは「19歳からホストをやったり、筋肉の大会で優勝したり…“カッコ良い人生”がテーマ。RIZINでは会場入りから入場、リングをあえてステージと呼ばせていただくが、男の子のファンが多いので、新たなチャレンジとして、かっこいいところを見せたい」といかにもホストらしい返答。
それを聞いた三浦選手は「僕は入場もそれなりに考えているが、試合内容を一番考えている。今まで積み上げた練習や色々なところでお世話になり学んだトレーニングを生かせれば、自然と魅力的なところを見せられると思う。カッコ良さよりもしっかり勝つことをイメージしている」と、あくまでも勝つ姿勢が大事だとアピールした。
2021年12月31日、緊迫したムードの中、試合が始まる。
ゴングが鳴ると同時に勢いよく飛び出すYUSHI。さらに攻勢をかけて来るYUSHIに対して三浦が鋭いカウンターを的確にヒットさせていく。YUSHIが組みついてテイクダウンするが、三浦が逆にギロチンチョークの態勢に。
鼻から血を垂らしながら苦悶の表情を浮かべるYUSHI。チョークから抜け出してパウンドを狙うYUSHIに、三浦は一瞬のうちに三角締めをかけ、さらに腕ひしぎ十字へ移行。必死にもがいて技をふりほどくYUSHIに業を煮やした三浦は、立ち上がって左の強烈な父譲りのサッカーボールキックを叩きつける!
それでも立ち上がろうとするYUSHIにダメ押しの右フックをお見舞いした所で試合はストップ。
親から譲り受けたサッカーの遺伝子を、日本最高峰のリングRIZINで魅せると言う感動的なフィニッシュに全観衆、全視聴者が沸いた。
試合後にマイクを手に取ると
「今日会場に来てくださったみなさん、テレビで見てくださったみなさん、本当にありがとうございます。自分が出場するって決まった時、批判の声や誹謗中傷も来てましたが、徐々に応援の声が増えてきて本当に力になりました。チャンスを与えてくれた榊原さんをはじめ、RIZIN関係者のみなさん、格闘技ファンのみなさん、ありがとうございます。そしてお父さんとお母さん、小っちゃい頃から迷惑を掛けてきたのに、初めての試合を見に来てくれて本当にありがとう。これから格闘技界のキングになれるよう頑張りますので、僕のファンになってください」
と語り、会場は労いの拍手に包まれた。
“親の七光り” と彼をあざ笑う人々を、自らの拳一つで黙らせた三浦。翌年5月にはRIZIN LANDMARK Vol.3、7月31日のRIZIN.37への出場を予定していたが、厳しい練習の中で負ってしまった首の怪我でRIZIN LANDMARKを欠場、そしてRIZIN.37もコロナウィルス感染の為にキャンセルとなってしまう。
あのレジェンドと夢のエキシビジョン
9月25日のRIZIN.38で今度こそリングの上に立ちたいと願い、練習に励む三浦の元にまたまたとんでもないオファーが来る。
なんと、あの魔裟斗やアンディ・サワー、アルバート・クラウス等の超一流ファイター達と凌ぎを削り合った伝説のムエタイ選手、ブアカーオからエキシビジョンマッチの招待が届いたのだ。
実は2021年大晦日での試合の一部がTikTokで切り抜かれ、その動画を見たタイの女性たちが「イケメンの若い格闘家!!」と熱狂し、タイで大バズり。ついには現地のニュース記事にまで取り上げられる程まで話が大きくなり、タイの大格闘イベント、ラジャダムナン・ワールド・シリーズの特別イベントとして招待される事になったのだ。
だが、そのイベント予定日は8月19日と、RIZIN.38開催日までわずか1ヵ月程しか離れていない。
その点を踏まえて、「9月25日に影響のあるような攻撃は無し。つまりKOに繋がるような攻撃はしない」という条件で三浦サイドは出場を承諾した。
空港に到着すると、待ち受けた女性のファンが三浦の元に押し寄せ、その後はどこに行っても三浦の回りには人だかり。三浦のタイでの知名度は、日本での知名度を遥に超えている。
試合当日も夥しい数の観客が押し寄せ、なんとラジャダムナンナン・ワールド・シリーズ史上最高の集客だという。
そしていざエキシビジョンが始まると、当初の予定とは違ったバチバチの殴り合いが繰り広げられる。圧倒的なブアカーオのスピード、パワー、テクニックの前に圧倒され、最終ラウンドにはコーナーに詰められてからの強烈な膝でダウン。更にはマシンガンの様な壮絶なラッシュで三浦はしゃがみ込み、ここでレフェリーストップをかけ、TKOでこの一大イベントは幕を閉じた。
試合では、本当にバチバチに殴っていたように見えるが、試合後も三浦の顔は意外と綺麗で、あの壮絶なラッシュも実はブアカーオが手を抜いて、致命的なダメージが残らないように打っていたと言う。40歳を超えてもブアカーオは依然バケモノのままだったようだ。
この試合を振り返る三浦は「エキシビションでも本当に怖かったですね。猛獣と同じ檻に入れさせられているような気持ち」とレジェンドと対峙する恐ろしさを語った。
自らの力で輝く”リトルキング”
9月25日 超RIZIN。三浦は念願のリングに万全の状態で試合に臨む。
今回迎えるのは、ブンチュアイ・ポーンスーンヌーンと言う、ブアカーオと同じタイの選手だ。
ブアカーオに完敗した直後だったが、ブンチュアイについて「年齢も近く、勢いがある」と印象を語り、「打撃の試合のキャリア的には22歳とは思えない戦績を持っている。でも、MMAだったら自分の方が強いんじゃないかな」と自信を示し、「作戦はあるけど言えないです」と笑ってみせた。
既にムエタイで20戦を経験し、17勝を挙げているムエタイの強豪ブンチュアイを、ブアカーオから学んだ事を活かして退ける事が出来るのか。
9か月ぶりに立つRIZINのリング、タイでの貴重な経験を経て、心なしか三浦から余裕を感じる。
ゴングが鳴り、三浦は無理に打ち合わず、ブンチュアイをグラウンドに引き込む。アームロックを狙うがブンチュアイに強烈な肘を落とされ一旦は立ち上がる。すぐに距離を詰めていく三浦。ブンチュアイが放った蹴りを捕まえてコーナーまで押し込み、小外刈りでテイクダウン。すぐにマウントの態勢になると、パウンドを警戒し前に出したブンチュアイの腕をすかさずとって腕ひしぎ十字!
これが完全に極まってブンチュアイはすぐさまタップ。試合開始1:54、鮮やかな一本勝利に会場は大興奮に包まれた。
試合後にサッカーのユニフォームの様なコスチュームをまとい、マイクを取った三浦は
「前回・前々回と欠場が続いてしまって、応援してくれている方、アンチでも見てみようかなと思っていた方を裏切ってしまって本当にすみませんでした。これからの試合で今までの欠場を含め、しっかり勝ち進んで、アンチの人にも応援してくれてる人にも応援してよかったと思ってもらえるよう、格闘技界の若きキングになるので、これからも応援よろしくお願いします」
と父親、カズのように誰からも認められるキングになるため戦い続ける意志を全国の格闘ファンに示した。
この記事を書いている段階では、まだ試合が終わったばかりで次の試合は未定だが、恐らく3戦目こそ彼の真価が問われる試合となるだろう。
RIZINフェザー級はRIZINの中でも最も層が厚いと言ってもいい階級だ。
朝倉未来に、クレベルコイケ、堀江圭功、金原正徳、ヴガール・ケラモフなどなど、メジャーな名前がズラリと並び、平本蓮や萩原京平もグングンと実力を伸ばし、虎視眈々とタイトルを狙ってきている。今後、この強者達と対等に渡り合い、本当の“リトルキング” として、RIZINのトップに君臨出来るのか、今後も三浦孝太選手からはまだまだ目が離せない。
三浦孝太選手の知りたいトコ!
三浦孝太は、恋愛にはかなりオクテ!?
タイの女性に熱狂的に支持され、日本でも女性のファンの多いイケメンで好青年な三浦だが、実は高校一年以来彼女が出来た事は無く、格闘技一筋に毎日を過ごしているそうだ。
交際をしていた当初は家族に彼女との進展を包み隠さず、
「今日デートした」「手を繋いだ」「キスをした」などと何でも話していたようで、どれほど家族を信頼し、素直に育ったかが伺える。
ちなみに、割とひっかかっちゃいけない様な女性を好きになる事が多く、周りが止めときなよって言うタイプの女性にアタックしては、案の定フラれるという事を繰り返しているという。
三浦は見たままの純粋でオクテな好青年のようだ。
“男はつらいよ” が大好き!
三浦は入場曲に“男はつらいよ” の主題歌のラップバージョンを使用し、試合の入場時も、主人公の寅次郎が付けていたお守りと同じものを首にかけて入場する程、同映画の大ファンだという。実は父・知良も、サッカーのキャンプに同映画のDVDを持参する程の大ファンで、そんな父の影響で孝太もこの映画に惹かれていったそうだ。
寅次郎と孝太には共通する部分もあるようで、特に女子にフラれるタイミングが一緒なのだとか。前述した様な思わせぶりな女性にひっかかり、最後にあっけなくフラれる孝太の姿が目に浮かぶ。
そんな人情深く、不器用な面も三浦の人気を後押ししている要素の一つだ。
スポーツタレントとしても人気上昇中!?
両親のネームバリューはもちろんだが、セレブというイメージに反した純朴で素直なキャラクターと、可愛らしいルックスはお茶の間にも受け入れられ、ジャンクスポーツや逃走中、占ってもいいですか?等々、度々バラエティー番組にも登場している。
📣今夜19時〜放送💥
<三浦孝太>
📡:フジテレビ『ジャンクSPORTS 3時間SP』https://t.co/iDkzOKcDWNⒸフジテレビジョン pic.twitter.com/a2wj6KZkk6
— RIZIN FF OFFICIAL (@rizin_PR) April 10, 2022
今後、トーク力もしっかりトレーニングしていく事で、テレビの世界でも頭角を表し、よりたくさんの表情を私たちに見せてくれる日が来るかもしれない。
まとめ
ここまで三浦孝太のストーリーを見てきたがいかがだっただろうか。
キング・カズと三浦りさ子という、ビッグカップルの次男として生まれ、父の様なサッカー選手になる事を目標に練習に打ち込むも、腰の怪我で夢を断念。父が好きな格闘技で夢を掴みたいと再び立ち上がり、宮田和幸のBRAVEに入門。まだ試合経験ゼロの状態からRIZIN大晦日の舞台に大抜擢され、重いプレッシャーを撥ね退けて衝撃のKOデビューを飾り、直前のRIZIN38でも鮮やかな一本勝ちを見せてくれた。
三浦は決して身体的に突出した才能がある訳でもないが、宮田曰く、とにかくコツコツと努力できる選手である。父・知良も実は元々は平凡な身体能力だったそうで、弛まぬ努力を積み重ねた事で一時代を築いていったと語っているところから、三浦も父のように努力を重ね、ここからどんどん強くなっていく事だろう。
弱冠20歳の三浦は、もはや伸びしろの塊。今後もBRAVEの屈強な先輩達や絶対女王RENAに鍛えてもらい、RIZINのメインを飾れる、本当の“リトルキング” としてリングの上で喝采を浴びる姿を見られる日が待ち遠しい。そんな“リトルキング” 三浦孝太をこれからもみなさんと一緒に見守っていきたい。
※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用