金太郎の選手紹介 〜悪童ファイター“マサカリ殺法”のすべて〜

「殺るか、殺られるか」そのファイトスタイルは、まさに不良同士の喧嘩を彷彿とさせる。

彼の名は金太郎。”マサカリ殺法”と呼ばれる超攻撃型なスタイルで、対戦相手を1ラウンドで秒殺する。試合で金太郎が見せる気迫は、どんな会場も熱狂の渦に包んでしまう。

そんな金太郎のアグレッシブな姿勢は、喧嘩に明け暮れた学生時代に培われたものだ。少年院に行くほど素行が悪かった金太郎が、どのような経緯で格闘技の道へ進んだのか。そして、今の金太郎は格闘家として、どのような未来を思い描いているのか。答えは、彼の人生の歴史を知ることで、自ずと見えてくる。

今回の記事では、金太郎の生い立ちから、格闘家としての歩み、そして今後の展望について詳しく紹介する。

画像2: 入場
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2022/09/25/1f112f11f429787429a2fefbddf089125b5bac4b.jpg(RIZIN公式HPより引用)

まずは、プロフィールから見ていこう。

金太郎のプロフィール

名前 : 金太郎

生年月日 : 1993年3月19日

出身地 : 大阪府八尾市

身長 : 167cm

体重 : 61.0kg

戦績 : 27戦 14勝(9KO) 11負2分け

階級 : バンタム級

所属 : パンクラス大阪稲垣組

獲得タイトル : なし

入場曲 : Ghetto Love

バックボーン : キックボクシング

公式HP : 金太郎 Kintarou

Twitter : マサカリ金太郎 Kintarou Masakari

Instagram : 金太郎[Kintarou Masakari]

YouTube : マサカリチャンネル/金太郎

アパレル : −

ファンクラブ : −

悪童からプロ格闘家へ

いじめられっ子が、不良少年に

大阪府八尾市に生まれた金太郎。小さい頃は、心穏やかで優しい少年だった。しかし、通っていた小学校でいじめを受けるようになり、金太郎は仕方なく、拳で相手にやり返すようになる。そんな状況が続いていく内に、いつの間にか金太郎は、躊躇なく暴力を振るうような人間になってしまった。

さらに金太郎の暴力はエスカレートする。中学に上がると、悪い先輩のグループに加入し、喧嘩に明け暮れた日々を送る。誰かを倒す度に、金太郎の実力は噂で広まり、さらに強い奴が芋づる式に出てきた。中学2年生の時には、金太郎1人で20人の相手と闘った時もあった。この時、さすがの金太郎でも数の暴力には抗えず、脳のCT検査を受けるほどのダメージを負った。本当に死んでもおかしくない喧嘩であった。

それでも懲りずに不良仲間との喧嘩に明け暮れていた金太郎。素行の悪さから、ついに15歳で少年院に行くことに。少年院では、一旦喧嘩から離れ、冷静に自分の生き方を振り返り、時間を過ごした。そこで、金太郎はこれまで両親に大きな迷惑をかけてきたことを実感し、猛省する。不良との縁も完全に絶ち切り、更生を誓った金太郎は、17歳で少年院から出ることになる。

アウトサイダーとの出会い

そして、金太郎は仕事をしながらプロの格闘家を目指し始めた。本格的にキックボクシングとMMAの練習に取り組むようになり、両親も金太郎を応援していた。そんな金太郎の転機となったのが、格闘リング「THE OUTSIDER(アウトサイダー)」との出会いだ。アウトサイダーは、今では朝倉未来や海がキャリアをスタートした舞台として知られているが、そこに金太郎は最年少の18歳で参戦。喧嘩で鍛えてきた彼の腕には、確かな実力があった。超攻撃的なスタイルで勝ちを量産し、正式にプロの格闘家としての道を歩み始めた。

金太郎の目標は『UFC』への参戦だった。それに向け、アウトサイダーよりも更に上のレベルを求めた金太郎は、同じ階級の選手が多数いるパンクラス大阪稲垣組に移籍する。パンクラス大阪稲垣組では、大阪でも屈指の実力を持つ選手が集まっており、金太郎は猛者たちを相手に腕を磨いた。

強豪との初対戦

その後、パンクラス、DEEPといったメジャー団体の試合に出場し、キャリアを積んだ。2015年6月には、愛知県の格闘技団体「HEAT」を主戦場とする、祖根寿麻との対戦が決まる。祖根は、”鋼のオールラウンダー”と呼ばれ、タイトルも保持していた実力者。アウトサイダーから地道にキャリアを重ねてきた金太郎が、祖根を相手に、どのような試合を繰り広げるのかに注目が集まった。

開始早々、荒々しくフルスイングでフックを繰り出してく金太郎は、勢いそのままに、祖根をケージへ追い込んでいく。祖根もなんとか右フックを返し、体勢を整える。金太郎の猛攻をしのぐ祖根は、徐々に試合のペースを握り始める。金太郎の大振りのフックを、祖根は難なくかわし余裕の表情。そして、祖根が放った右ストレートが金太郎にヒット。動きがピタリと止まった金太郎に、祖根のハイキックが炸裂。そのままマットに崩れ落ちた金太郎に祖根が追撃を加えたところで、レフェリーが試合をストップ。金太郎は屈辱のKO負けを喫した。

金太郎は、この一戦で自分の実力不足を痛感する結果となった。だが、この経験が糧となり、金太郎はさらに厳しい練習に励むようになる。彼のアグレッシブなスタイルは、更に磨かれていく。

2018年10月には、パンクラスのバンタム級ランキング8位のアラン“ヒロ”ヤマニハとの対戦に挑んだ。この試合で成長を証明したい金太郎は、両者譲らぬ一進一退の攻防の中、最終ラウンドで勝負に出た。お互いがカウンターを恐れ牽制しあっていた中、勝利を掴むべく思い切って放った金太郎のパンチはヤマニハを捉える。倒れたヤマニハに、とどめの一発を浴びせ、試合は終了。金太郎はTKO勝利を手にした。

勢いそのままに、金太郎は次の試合も勝利し、気づけば怒涛の4連勝。しかも、そのうちの3つが打撃によるKO・TKO勝利で、だんだんと彼の名前は格闘技界に広まっていった。

パンクラスタイトルマッチへの挑戦

そして2019年7月、ついにパンクラスのバンタム級タイトルマッチを迎えた。対戦相手は、王者のハファエル・シウバ。金太郎は初の王座獲得に向けて、覚悟を決めていた。

「狙うところは一つ。誰とやってもKOを狙う。練習を積み重ねてきたので自信がある」そう試合前に語っていた。

しかし、勝負は呆気なく終わりを迎える。2ラウンド途中、テイクダウンからマウントを取ったシウバは、金太郎に右のパウンドを落とし一気に肩固めへ。ケージを蹴って逃げようとした金太郎だったが、なすすべなく失神。金太郎は一本負けを喫し、王座獲得とはならなかった。金太郎も試合後、悔しさを隠しきれなかった。格闘家として、タイトルマッチは是が非でも勝利を掴みたい試合だ。

ただ、王座獲得とはならなかったものの、金太郎の攻撃的なファイトスタイルは、日本中の格闘技ファンをトリコにしていた。「金太郎の試合をRIZINで見たい」そんなファンの声が集まる中、金太郎も満を持してRIZINへの参戦を決意する。格闘家人生第二章のスタートだ。

RIZIN参戦後の戦い

パンクラス頂上決戦をRIZINの舞台で

2020年9月、瀧澤謙太との対戦カードが決まった。瀧澤はパンクラスバンタム級2位の選手。対して金太郎は3位にランクされていた。RIZINの舞台で行われる、パンクラストップランカー同士の対決は、ファン待望の一戦だった。試合前、金太郎は「えぐい闘い方をするので期待していてください」と意気込みを語っていた。

試合開始のゴングが鳴る。試合は、オーソドックスの瀧澤に対し、金太郎はサウスポーに構える。金太郎が左の蹴りから左右のフックで瀧澤を襲う。瀧澤もカウンターを合わせてフックを返し、その後は、お互いが牽制しあう展開へ。終盤、瀧沢がヒザを放ったところに、金太郎がカウンターで左フックをヒットするもダウンまでは至らず。ここで1ラウンドが終了。

2ラウンドも1ラウンドと同じく、両者カウンターを警戒し、攻め手を欠く展開。どちらも一撃で仕留める力があるため、パンチを食らわないように慎重になる。ラウンド中盤、金太郎はジャブからの左ストレートで攻撃をヒットさせる。2ラウンド終了時点では、金太郎がやや優勢といった状態だった。

そして最終ラウンド。ここで、瀧澤が打って変わって攻勢に出る。金太郎のタックルを振り払うと、瀧澤は右フックを連続でヒットさせ、金太郎に膝をつかせる。金太郎も、必死にタックルで組みつきテイクダウンを奪い、瀧澤の攻撃を封じる。しかし、立ち上がった瀧澤は金太郎をコーナーに押し込み、仕留めにかかる。ただ、ここも金太郎の渾身のディフェンスで、瀧澤自身も上手く身動きが取れない。そこで試合終了のゴングが鳴った。

決着は判定へ。金太郎は序盤・中盤はやや優位に進めていたが、3ラウンドに瀧澤に圧倒されたことが響き、1-2の判定負けを喫した。相当悔しかったのだろうか、この時は試合後のインタビューを受けず、金太郎は足早に会場を後にしてしまった。

再起へ。そして、グランプリ1回戦へ

2021年6月、金太郎はバンタム級JAPANグランプリへの参戦が決まった。その1回戦の相手は、グラチャンバンタム級王者の伊藤空也。伊藤は、強いパンチ力とバランスの良いグラップリングを武器にしてグラチャンで活躍。2020年にグラチャン第6代バンタム級王者になったばかりの、勢いのある選手だ。

金太郎は試合前、「誰が相手でも僕のやりたいようにやるだけ。相手がどうとか関係なく勝負しようと思っています」と語り、頼もしい姿を見せた。

いざ、試合開始。1ラウンドでは、サウスポーの金太郎は開始から右フックや左ストレート、ヒザと多彩な攻撃を振るう。伊藤も奮戦し、一歩も引かない。両者の打ち合いの中から、タックルに出た金太郎はテイクダウンを奪う。そのまま伊藤を抑え込んでいたが、そこで1ラウンド終了のゴング。

2ラウンド、さらにヒートアップした両者は、意地を剥き出しにして打ち合う展開に。左右のロー、ミドルを伊藤が放てば、金太郎はヒザと左右のフックで応じる。お互いにダメージを与えては食らうような激戦の中、見応えのあった2ラウンドは瞬く間に終了。

勝負は3ラウンドへ。金太郎は前に出てのヒザ、左ストレートを当てにいく。伊藤はなんとかタックルに出るが、それを金太郎が潰してマウントを取る。金太郎が攻撃のチャンスを掴むも、伊藤も立ち上がって金太郎をマットに叩きつける。最後、金太郎はフロントチョークを狙うも決まらず、終了のゴングが鳴った。

運命の判定は、3-0で金太郎の勝利。激闘を制した金太郎は試合後、「今日は絶対勝ちたかったので自分らしい試合ができなくて申し訳ないです。次はしっかりKOできるようにレベルを上げていきます」と喜びよりも反省の弁を述べた。ただ、実力者・伊藤に対して落ち着いて試合をコントロールし、フルマークでの判定勝利を挙げた金太郎には確かな成長が見られた。

2回戦の相手はあの元UFCファイター

2021年9月、金太郎はバンタム級JAPANグランプリ2回戦で、井上直樹を対戦相手に迎えた。井上は元UFCファイターで、2020年にRIZINに参戦。参戦後は4戦全勝で、朝倉海と並ぶグランプリ優勝候補の筆頭だ。

「井上が金太郎を圧倒するだろう」という下馬評に対して、金太郎は「気にしない。普通に自信があるので、自分の闘いが出来ればなと思います」と語り、自信をのぞかせた。

金太郎にとって史上最強の相手との戦いが始まる。1ラウンド、井上はすぐに距離を詰め、ジャブ、ロー、右ハイをテンポ良く繰り出す。サウスポーの金太郎は一発を狙うが、井上に主導権を握られ、手数が出ない。井上は連続してジャブとローを細かく打ち、ダメージを蓄積させる。

2ラウンドも1ラウンド同様、ジャブとローの雨を降らせる井上だったが、金太郎も黙ってはいない。強烈なミドルを返すと、続けてアッパーもヒットさせ攻勢に出る。井上のローをもらい続けていた金太郎の足は赤く腫れあがっていたが、それでも金太郎は前へ出る。距離を詰めて、あくまでもKOを狙って攻め続ける。

勝負は最終3ラウンドへ。果敢に前に出て、鬼の形相でパンチを振るう金太郎。ラウンド序盤にボディをヒットさせるも、元UFCファイター井上は、それでひるむような男ではなかった。井上は冷静に距離を取り、カーフキックを続け、金太郎の足は限界までダメージを負う。いつ倒れてもおかしくない金太郎だったが、最後までKOを狙い、終盤は井上に連打を浴びせる。会場が熱狂する中、試合終了のゴングが鳴り響いた。

結果は、3-0で井上の判定勝利。金太郎は準決勝進出とはならなかった。意外にも、試合後のインタビューでは、金太郎の表情は晴れ晴れとしていた。「負けました!」の一言を清々しく語った金太郎は、井上の強さを素直に認めた。負けた悔しさはもちろんあっただろうが、反面、強豪と互角に戦えた喜びもあったのかもしれない。

バンタム級の番人、元谷友貴との一戦

2021年、金太郎は初めての大晦日RIZINへの参戦が決まった。対戦相手は元谷友貴。元谷はフライ級とバンタム級でDEEPを制覇し、RIZINではバンタム級の主力選手として戦ってきた。金太郎と元谷の一戦は、バンタム級トーナメントのリザーバーとしての権利を争う試合として位置付けられていた。

試合前、金太郎は「大晦日の試合なので、しっかり盛り上がる試合をして勝つ」と高らかに宣言した。

1ラウンドが始まる。いつものように金太郎はサウスポーで構える。キック主体で攻める元谷に対し、金太郎は右フック、ヒザ蹴りと強打の攻撃で応戦。金太郎はカウンターでストレートをヒットさせたが、元谷も倒れない。一進一退の攻防が続き、1ラウンドが終了する。

2ラウンド、攻撃を緩めない金太郎だが、元谷はうまく回避し、得意の組みへ持ち込む。元谷が金太郎からテイクダウンを奪うと、そのまま絞め技を決めにいくが、金太郎も意地で対抗し、元谷を振り落とす。そして金太郎のパンチがいくつか元谷を捉えるも、致命傷には至らず、2ラウンドを終える。

3ラウンド、元谷は左カーフキック、前蹴り、右インローと手数を出し、金太郎にペースを握らせない。金太郎も果敢に前に出て、フックを飛ばすも、元谷のブロックが固く、ヒットしない。最後に金太郎が、元谷のボディへのヒザとフックを入れ込むが、間も無く試合終了のゴングが鳴った。

お互い決め手を欠いた試合は判定へ。結果は、3-0で元谷が勝利を掴んだ。金太郎はRIZIN3敗目を喫することになった。試合後のインタビューでは「どこで負けたのか分からない。良い感じに試合を進められていただけに残念」と戸惑いを隠せない様子で語っていた。

格闘家に最も大切なことは当然、勝つことだ。金太郎はRIZIN参戦後、負けを何度も味わい、悔しい思いをしているだろう。しかし金太郎には、勝ち負けを忘れさせるほど、試合を盛り上げてしまう卓越した才能がある。どんな下馬評でもひっくり返し、どんな強豪相手でも熱戦を繰り広げてきた。

金太郎の実力は上がっている。これは、周囲の誰もが認めるところだ。接戦で競り勝つ力さえ身につければ、金太郎は瞬く間に頂点まで上り詰めるかもしれない。あくまでも彼が目指す舞台はUFCだ。金太郎の今後の活躍に目が離せない。

金太郎の知りたいトコ!

なんで「金太郎」なの?

当然だが、「金太郎」はリングネームで、本名は外村雄人とされている。そもそもの始まりは、中学時代。喧嘩のトレーニングのために山で特訓していたことから、「金太郎」というあだ名をつけられ、14歳の時には、背中に金太郎のタトゥーを彫った。背中一面に広がるタトゥーだが、その迫力は画面越しでも、凄まじさが伝わってくる。

まとめ

金太郎は学生時代、不良として喧嘩に明け暮れ、少年院にまで入った。そこで更生を誓った彼は、格闘技と真摯に向き合い、日本を代表するファイターの1人にまで上り詰めた。

恐れを知らない超攻撃的なスタイルは、観るものを熱狂させる唯一無二の魅力がある。

今後のRIZINでの活躍は、注目必須だ。

画像: 勝利者マイク
※画像URL:https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782696/rc/2021/06/27/4366b8aa02b7f54c180f18ee643c7c8f74652ebb_xlarge.jpg(RIZIN公式HPより引用)

※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用