RIZINの舞台で誰よりも熱く、誰よりも泥臭く戦う男こそ扇久保博正である。昨年、2021年のRIZINバンタム級JAPANグランプリで扇久保は、最も小柄な160cmの体格ながら、一夜にして優勝候補の井上直樹、朝倉海を撃破しトーナメント優勝! 扇久保は今、堀口恭司に次ぐRIZINバンタム級のトップコンテンダーである。
扇久保の試合に華麗な一本や、衝撃的なKOは少ない。しかし、勝利に対する人一倍強い執念を持っており、泥臭く相手に組みつき決して離さない姿は、観る人たちの心を熱くさせる。打撃・寝技・レスリンングに収まりきらない「熱さ」を体感できる彼のMMAは、まさに「打・投・極・根性」の名にふさわしい。
誰よりも汗を流し、練習を積んできた扇久保のファイトスタイルは、扇久保の人生そのものを表す。扇久保は、「リングの上ってその人の人生が出るじゃないですか」と誇らしげに語る。
今回はそんな人間味溢れるファイター扇久保を徹底紹介していこう!
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
扇久保博正のプロフィール
名前 :扇久保博正
生年月日 :1987年4月1日
出身地 :岩手県久慈市
身長 :160cm
体重 :61.0kg
戦績 :32戦 25勝(1KO 6本) 7敗 2分
階級 :バンタム級
所属 :パラエストラ松戸
獲得タイトル :第8代修斗世界フェザー級王者・第6代修斗フライ級王者・RIZIN FIGHTING JAPAN GRAND -PRIX 2021優勝
入場曲 :落陽
バックボーン :極真空手
公式HP :https://ougikubo.com/
Twitter :@Hiromasa0401
Instagram :https://www.instagram.com/hiromonster0401/
YouTube. : 扇久保博正 おぎちゃんねる。Ogichannel
アパレル :ー
ファンクラブ :ー
今年で35歳と、格闘技界ではベテランの立ち位置となってきた扇久保。しかし、修斗2階級制覇の実績と、昨年のバンタム級グランプリでの優勝を見れば、まだまだ衰え知らずと言える。
では、そんな扇久保はどのように格闘技と出会い、プロの世界へと入っていったのだろうか?
いたずら好きな少年からプロシューターへ
岩手県の久慈市で生まれた扇久保。子供の頃はいたずら好きで、ヤンチャな少年だった。小学生の頃には、扇久保があまりにヤンチャで手がつけられなかったため、担任の先生にみんなの前で「この子とは遊ばないようにしましょう」と言われるほどだったらしい。相当な「悪ガキ」だったに違いない。
格闘技を始めたっきかけは5歳の時。父が空手の先生だったこともあって、小さい頃から極真空手を始めた。しかし、子供の頃の空手の実績は、地方大会で2、3回優勝したぐらいでずば抜けた才能があったわけではないようだ。
中学校に入って本格的に格闘技を始めのるかと思いきや、中学時代の扇久保はなんとパソコン部の部長だったようだ。しかし、中学2年生ぐらいの頃に、テレビで「PRIDE」をみてバンダレイ・シウバの戦いにを心を揺さぶられたという。空手にはない、寝てる人を殴るという攻撃に衝撃を受けた扇久保は、自分もこの競技をやってみたいという気持ちが湧くようになった。
私も中学の時パソコン部部長でした
ずっと相撲してました— 扇久保博正 Hiromasa Ougikubo (@Hiromasa0401) July 26, 2021
ただ、扇久保のヤンチャ度合いは高校に入っても収まらず、なんと高校2年生で退学になってしまったそうだ。そのあとは、定時制の高校に転入し18歳まで岩手県の久慈市で過ごした。
チャンピオンになるため岩手から東京へ
2005年に高校を卒業した扇久保は修斗でチャンピオンになることを志し、ネットで「修斗 チャンピオン 60kg」と検索したところ、修斗王者の松根良太(現 沖縄パラエストラ代表)がヒット。そこで松根がパラエストラ松戸に所属していることを知り、松根を倒せばチャンピオンになれると考え、上京しパラエストラ松戸の門を叩いた。またこれは、今でも恩師の鶴屋浩との出会いでもあった。
修斗の舞台での華々しいデビュー
早速、2005年9月の全日本アマチュア修斗選手権フェザー級(-60kg)に出場すると、決勝で浅野篤司を判定で降し、選手権優勝を果たした!
プロ修斗への昇格を果たしたが、優勝できると思っていなかった扇久保は「経験が足りない」と判断し、プロの試合にはでず1年間別の空手の試合などに出て腕を磨いていった。
そして、2006年10月にプロデビュー。デビュー戦を判定勝利でおさめると、翌年の修斗フェザー級新人王トーナメントにノミネートされた。ここでも順調に勝ち進め、決勝へ駒を進めると、決勝でも金山康宏相手にスリーパーホールドを極め優勝を果たした!
その後も勝ち星を増やし、デビュー戦から2つの引き分けを挟んで負けなしの6連勝と快進撃を続けた。
ここまでは順風満帆の格闘家デビューと言える扇久保の勢いはどこまで続くのだろうか?
勢いそのままにタイトル挑戦へ
破竹の勢いだった扇久保は、2009年に初代修斗環太平洋フェザー級チャンピオンをかけて岡嵜康悦(当時、5勝1敗)と対戦が決定。果たして、扇久保は、無敗のままチャンピオンベルトを巻くとはできるのだろうか?
試合は、2ラウンドに岡嵜の右フックが扇久保をとらえ、扇久保がたまらずダウン。すかさず、岡嵜が追撃のパウンドをお見舞いし扇久保はなす術なくKO負けとなった。
扇久保はプロ初黒星となり、無敗でのベルト奪取は叶わなかった。
初の敗北を経験し、扇久保はさらに強くなって帰って来れるのだろうか?
まさかの連敗。どうなる扇久保?
初の敗北から7ヶ月後の2010年5月、扇久保は修斗でエドゥアルド・ダンタス(当時、8勝2敗)と対戦。ダンタスはブラジル出身で、後に堀口恭司も活躍するベラトールでバンタム級チャンピオンまで上り詰めた男である。ブラジリアン柔術黒帯とムエタイをバックボーンに持ち、極めの強さが光る難敵だ。
試合は最終ラウンドまでもつれ込む展開に。扇久保は3ラウンドも必死に組みつきにいったが、組みの攻防でダンタスに上を取られ簡単にバックを奪われる! そこからダンタスは、スルリと扇久保の首に腕を回し、チョークスリーパーで試合を終わらせた。
プロデビュー6連勝から、まさかの2連敗を喫してしまった扇久保。
しかし、当時のことを扇久保は「初めて身の丈に合ってきた」と振り返っている。実は、扇久保自身は、デビューから6連勝したものの「俺なんて弱いのに」という思いをずっと抱えていたという。扇久保は、この2連敗によって自分の実力を過信せず、より地に足がついた状態となったわけである。
ちなみに、扇久保は2022年4月に以下のようなツイートをし、ダンタスに対戦要求を行っている。
おい、ダンタスよ
12年前にやられてるけど
俺はあの時とは比べ物にならないくらい強くなってるからな。
あの時も3R途中まで勝ってたしな。
闘えることになったら
ブラジルまでぶっ飛ばしてやる。@DuduDantasMMA @rizin_PR @MmaShingo— 扇久保博正 Hiromasa Ougikubo (@Hiromasa0401) April 13, 2022
扇久保には珍しく「オラオラ」したツイートであるが、12年前の負けを未だに根に持つ「負けず嫌いさ」が溢れている。
このツイートには、ダンタスもこのように反応。
あなたはどのラウンドにも勝っていません。 私は完全な戦いをしています。 私は第1ラウンドと第2ラウンドであなたをノックダウンしましたが、それでもあなたを提出しました。 あなたはどうやら何も学んでいないようです。 それでも映画スター。 https://t.co/thPIzd5S7P pic.twitter.com/plBaxLl06s
— Dudu Dantas (@DuduDantasMMA) April 13, 2022
ダンタスは、現在ベラトールではなく、ハビブ・ヌルマゴメドフが主催するEagle FC と契約しており、2人が再戦する可能性は低そうだが、もし決まれば必見のカードになることは間違い無いだろう。
話を元に戻そう。とはいえ、2連敗してしまった扇久保だが、ここから快進撃が始まることになる。
初のベルト「王者 扇久保」誕生
2連敗から4ヶ月後の2010年9月に、扇久保は復帰戦として田澤聡と対戦。田澤は、2008年の修斗で引き分けている相手のため、「どちらが強いか」ここで白黒はっきりつけたいところだ。
試合は、3ラウンドにまで及んだが、扇久保が判定3-0で見事な勝利! 無事に連敗を脱出した。
連敗を脱出した扇久保には再びチャンスが巡ってきた。それは、修斗環太平洋フェザー級チャンピオン決定戦だ。このベルトは岡嵜康悦が返上し他ため、空位となり王座決定戦が決定した。対戦相手は、同級2位の松本輝之で当時の戦績は7勝3敗と、当時、7勝2敗だった扇久保とほぼ互角の相手となった。
2011年4月に、環太平洋のベルトをかけた試合は、メインイベントして行われた。実力はほぼ拮抗したが、扇久保が判定2-0の辛勝で王座を獲得! 念願の修斗チャンピオンとなった!
その後2012年1月、扇久保は、徹 肌ィ郎相手に初防衛に成功し、3連勝と波に乗った。そして、その4ヶ月後、修斗フェザー級のベルトをかけて、デビュー初黒星をつけられた岡嵜康悦とのタイトルマッチが決定!
扇久保にとっては、初のKO負けを味わわされた相手に、リベンジマッチ兼タイトルマッチという負けられない戦いとなった。
試合が動いたのは3ラウンド。扇久保が寝技の展開からスリーパーホールドを極め、見事一本勝ち! 岡嵜康悦をサブミッションで降し、修斗フェザー級のベルト奪還した!
扇久保は、まさかの2連敗から4連勝で、2つのベルトを手に入れて見せた!(環太平洋のベルトは、修斗フェザー級のベルト獲得後、規定により返上)
扇久保は試合後のマイクで「半年ぐらいは休みたいんですけど、その後堀口選手とやります。僕は逃げないから大丈夫」とコメント。当時怒涛の勢いで勝ちまくっていた堀口恭司を直々に指名した。堀口は、圧倒的な強さから対戦相手がなかなか決まらない状況にあったが、扇久保は会場にいた堀口をあえて指名するという漢気を見せた。扇久保は、当時の堀口を「やべえ奴が出てきたな」という思いで、いずれ対戦するだろうと想定していたという。
名実ともに修斗フェザー級では日本トップの実力となった扇久保だが、この男との対戦が扇久保の格闘技キャリアに大きな影響を与えることになる。
立ちはだかる、日本の最高傑作
25歳での王座戴冠から、約10ヶ月後の2013年3月、宣言通り堀口恭司との修斗フェザー級タイトルマッチが決定。試合前の煽りVでは、「たぶんボコボコにされるとは思うんですけど、最後には一本取ります。首を極めます」語った扇久保。最強の挑戦者相手に、王者の初陣を勝利で飾れるのだろうか?
試合は、1ラウンドから果敢にタックルに行って寝技に持ち込みたい扇久保だったが、堀口に上から潰され強烈なパウンドを浴びる展開に。2ラウンドも同じくタックルにいく扇久保。しかし、堀口にバックを取られるとあっさりリアネイキッドチョークを極められ、無念のタップアウトとなってしまった。
初の防衛戦で漢気を見せた扇久保だったが、見事に堀口の勢いに飲み込まれてしまった。後に、扇久保はこの試合を「自分に負けた」と語っており、堀口を巨大なものとして見てしまっていたと明かしている。
この堀口戦までは、「無事に帰りたい」という思いで試合に臨んでいたという扇久保。しかし、堀口戦での裸絞めによる完敗で「生き恥を晒した」と実感した扇久保は、「これだけはしてはだめだ」と誓い、これ以降毎試合、試合前にこの堀口戦を見返すと語っている。
それほどまでに扇久保に影響を与えた「日本の最高傑作」堀口恭司とのタイトルマッチ。この敗戦を糧に、扇久保は再び修斗のチャンピオンに返り咲くことはできるのだろうか?
VTJで強豪外国人と激突
堀口戦での王座陥落から約1年後の2014年2月、扇久保はVTJのフライ級トーナメントでの試合が決定。1回戦では春日井健士を判定で退け、続く準決勝ではアメリカのカナ・ハヤットと対戦。ハヤットは、アメリカ出身で、ボクシング技術の高い激闘型のファイター。久々の外国人との戦いとなった扇久保だったが、1ラウンド早々にリアネイキッドチョークで一本勝ちとなった!
順調に決勝へ駒を進めた扇久保は、2014年10月にシーザー・スクラヴォスと対戦。スクラヴォスも日本のトップ選手を撃破し決勝まで上がってきた強敵だ。5ラウンド制となったこの一戦、果たして扇久保は強敵を降し、トーナメントを優勝できるだろうか?
試合は、序盤から扇久保がジャブとキックを主体に戦いスクラヴォスを寄せ付けない。2ラウンドには、扇久保の三日月蹴りがヒットし、スクラヴォスに苦悶の表情を浮かべさせ優位に立った。しかし、この蹴りで足を痛めてしまった扇久保は後半ラウンドで戦い方を修正。扇久保は得意のテイクダウンで相手に組みつき、リアネイキッドチョークを狙うなど見せ場を作った。しかし、一本極めきることはできず、結果は判定へ。
判定は、ジャッジ3名とも扇久保につけ、フルマークの判定勝利! 扇久保は、見事にVTJのトーナメントを優勝して見せた!
※画像URL:http://mmaplanet.jp/wp-content/uploads/2014/10/Hiromasa-Oogikubo.jpg(MMA PLANETより引用)
試合後に、扇久保はUFC出場をかけてDEEPフライ級王者の元谷友貴に対戦要求するなど闘志をみなぎらせた。
堀口戦での敗戦をきっかけに、再び強さを取り戻した扇久保。彼の次なる目標は修斗の2階級制覇となっていく。
史上2人目の偉業達成へ
トーナメント優勝後も、現在ONEで活躍する猿田洋祐相手に判定勝利し、4連勝と波に乗る扇久保。次なる標的は、修斗バンタム級王者として君臨する菅原雅顕となった。
果たして、勢いに乗る扇久保はこのまま2つ目のベルトを手にすることができるのだろうか?
試合は、打撃とテイクダウンを織り交ぜる扇久保が終始圧倒する展開に。4ラウンドには、ヒジとパウンドで菅原の瞼をカットさせ流血させるなど圧倒して見せた。そして、最終ラウンド残り12秒のところで、テイクダウンからフロントチョークで絞め落とし菅原が失神、レフェリーストップで扇久保の一本勝利となった!
これで扇久保は、マモルに続く修斗史上2人目の2階級制覇を達成し、格闘技史にその名を刻んだ。
修斗2階級制覇を達成した扇久保は、今後どのような舞台で活躍していくのだろうか?
夢のUFCへ「TUFシリーズ」参戦
2階級王者となった29歳の扇久保の次なる目標は“世界”だ。扇久保は、総合格闘技の世界最高峰UFCに出場するため、「TUFシリーズ」への出場を決意。「TUFシリーズ」とは、UFCとの正式契約を目指す16人が2チームに分かれ、共同生活を送りながら契約争奪トーナメントを繰り広げる育成番組だ。
※画像URL:https://ufc-video.s3.amazonaws.com/image/TUF24/070616_tuf24-02249.jpg(UFC espanol.comより引用)
扇久保は、修斗で環太平洋フェザー級王座、世界フェザー級王座、世界バンタム級王座、VTJフライ級トーナメント優勝と、数々の実績を提げこの過酷なトーナメントに参戦。扇久保は、全16人のうちで5位にランク付され、ジョセフ・ベナビデス率いるチームベナビデスに所属した。扇久保はトーナメントを制し、UFCとの契約を勝ち取れるのだろうか?
1回戦では、南アフリカの12位カジムロ・ズルと対戦し、リアネイキッドチョークで一本勝ち。2回戦は、アメリカの13位アダム・アントリンと対戦し判定勝利。準決勝ではブラジルのアレッシャンドリ・パントージャも判定で敗り、扇久保の決勝進出が決定。
いよいよ全格闘家の夢であるUFCへの切符が目前となった扇久保。決勝の相手は、UFCへの出場経験もある3位のティム・エリオット。エリオットは現在でもUFCフライ級で10位につける強豪で、レスリングとブラジリアン柔術をバックボーンに持つファイターだ。
2016年11月、UFCとの契約を懸けた一戦は、序盤から打撃とテイクダウンの激しい攻防に。扇久保はタックルからのテイクダウンに成功するも、エリオットは扇久保のコントロールから抜け出すと、逆に蹴り足キャッチなどから、扇久保から3度のテイクダウンを奪った。2ラウンドには、扇久保はエリオットの強烈なパウンドを浴びる場面もあり劣勢に。3ラウンドも、終始エリオットのラウンドとなり、扇久保は主導権を奪えなかった。
結果は0-3で扇久保の判定負け。UFCとの契約目前で夢を断たれた扇久保は「最後の試合は全然ダメですね。また切り替えてやっていきます」と先を見据えた。
しかし、この約半年後に当時19歳だったある日本人が、扇久保と同じフライ級でUFCとの契約を果たすことに。過酷なトーナメントで準優勝までして契約を勝ち取れなかった扇久保は、これ以降並々ならぬ思いをこの選手に抱くことになり、この“事件”はやがて大きな伏線となる。
ついにRIZIN参戦へ
日本に帰国後の2017年10月、修斗でオニボウズとの一戦を、1ラウンドスリーパーホールドで片付けると、扇久保は2015年に旗揚げしたRIZINに参戦することになる。
因縁の相手、堀口恭司と決死のリベンジ戦へ
そもそも2015年に旗揚げされたRIZINについて、扇久保はどのように見ていたのだろうか?
扇久保の答えは「あまり出たくないな」だ。なぜなら、当時のRIZINは、ボブサップやギャビ・ガルシアらを起用し、色物感が拭えなかったからである。しかし、あの男の帰還が扇久保の考えを変えさせた。そう、“史上最高のMade In Japan”堀口恭司である。UFCフライ級でタイトルマッチまで経験した堀口は、2017年にRIZINに電撃移籍、業界に衝撃が走った。
堀口はRIZIN初戦で、扇久保も対戦要求した元谷友貴と激突。この試合は、日本人フライ級頂上決戦と銘打たれ、同じ階級の扇久保は黙っていられなかった。しかし、これは堀口と戦い、リベンジを果たすチャンスであり、扇久保の考えは「RIZINに出たい」に変わった。
そして、扇久保の望み通り2018年7月のRIZIN.11で堀口恭司との5年越しのリベンジマッチが実現。記者会見で、扇久保は「5年前に戦ったときは自分の戦い方ができなくて本当に悔しかった。そこからの5年はそれを払拭するために戦ってきたし、あのときと自分はまったく別人になってる。しっかり食って借りを返そうと思ってます」とただならぬ決意を口にした。
屈辱の敗戦から5年、扇久保は5年分の成長を見せつけ、堀口に借りを返せるのか?
髪の毛を金髪に染め上げた扇久保は気合十分でリングイン。しかし、初のRIZINという大舞台で緊張もあったという。扇久保は、序盤から自前のしつこいタックルで堀口に組みつく。さらに、際の攻防で堀口に右ストレートを喰らわせ堀口のバランスを崩させた。扇久保のペースかと思われたが、堀口はギアをあげ的確にパンチを当てると、扇久保を流血させるなど試合の主導権を握っていく。その後も、扇久保は渾身のタックルで勝機を狙うが、堀口の牙城は大きく、主導権を奪えないまま試合終了となった。
試合終了時には、勝利を確信して両手を上げる堀口と、コーナー側に座り込む扇久保という対照的な場面となり、結果は歴然だった。扇久保は判定0-3で堀口に完敗。5年前の雪辱を晴らすことはできなかった。
扇久保は、「最初の5分で攻めすぎってしまった」と振り返り、「もうちょっとやれた」と後悔を滲ませた。
RIZINでの初戦は黒星スタートとなったが、扇久保は堀口に次ぐバンタム級の実力者として他団体の王者に挑んでいくこととなる。
DEEP王者、パンクラス王者と団体の威信をかけた戦いへ
堀口戦の敗戦から1年後の2019年7月、RIZIN.17で、扇久保は、DEEP王者の元谷友貴との対戦が決定。元谷は、「寝技のデパート」と称されるほどの多彩な寝技をもち、どこからでも極められる危険なファイター。扇久保は、2014年のVTJ優勝後、リングで元谷に対戦要求しており、5年越しにその思いがかなった形だ。
「修斗王者 vs. DEEP王者」という普通なら組めないカードが実現するのがRIZINの舞台である。団体の顔である王者として、両雄の負けられない戦いが今始まる!
試合は、寝技では扇久保と打撃では元谷という展開でお互いに見せ場を作る。扇久保が、得意のテイクダウンを駆使し、リアネイキッドチョークの体勢をつくれば、元谷も左右のフックで扇久保をとらえて譲らない。死力を尽くした両王者の実力は拮抗し、決着つかず判定へ。
1人目は元谷、2人目は扇久保とジャッジの判定が割れた。会場も固唾をのんで見守る中、最後の3人目は、扇久保を支持! よって、判定2-1の僅差ながら扇久保がDEEP現役王者を撃破!
5年越しの王者対決は、扇久保の辛勝で幕を閉じた。バンタム級四天王同士の潰し合いをものにした扇久保は、「榊原さん、ありがとうございました。次の憂流迦選手と石渡選手、勝った方とやらせて下さい」とコメント。実は、次の試合でもバンタム級四天王である、元UFCファイターの佐々木憂流迦とパンクラス王者の石渡伸太郎の対戦が決まっており、バンタム級戦線は熾烈さを増していた。
そして、この佐々木と石渡の戦いは、2ラウンドに石渡がノースサウスチョークを極めて華麗な一本勝ち。石渡は、扇久保との対戦について「ひとつ心配が(ある)、扇久保と僕がやって、見分けがつきますか?二人でやって、手を挙げている方が僕です」と、扇久保と顔が似ていることをユーモア交じりに話しながらも、勝利への自信を見せた。
歴史的名勝負「石渡伸太郎 vs. 扇久保博正」
扇久保と石渡、バンタム級四天王の頂上決戦は、2019年の大晦日に実現。この試合は、堀口が返上したバンタム級のベルトをかけた「朝倉海 vs.マネル・ケイプ」の勝者に対する次期挑戦者決定戦とされ非常に重要な試合となった。
記者会見で、扇久保は「僕と石渡選手の見分けがつかないと石渡選手は言っていましたが、僕的にはさっき見たら石渡選手と芦田選手の方が見分けがつかないと思いました。バンタム級が盛り上がってきているので歴史に残るようないい試合をして盛り上げるので期待してください」とコメントし、石渡と顔が似ている件に触れながら、力強くコメント。
テイクダウンからの組みつきで泥臭く戦う扇久保に対して、石渡も打ち合い上等のファイトスタイルで血気盛んなファイター。2人が戦えば噛み合わないはずはない。歴史に残る激闘が今始まる!
試合は、序盤から石渡の土俵である打撃戦に。扇久保はローを中心に組み立て、石渡は左のパンチを繰り出す展開。扇久保は、得意のテイクダウンを狙うがすぐ石渡に立たれ見せ場を作れない。両者一歩も引かないまま試合は最終ラウンドへ。そして、残り試合時間2分。両者は意を決したかのように一歩も引かない打ち合いを開始。扇久保も声を上げてパンチを打つなど気迫を見せる。両者ともに顔面を真っ赤にしながら、死闘を演じここでゴングとなった。お互いに出し尽くしたという表情の2人は、フラフラの状態に。
会場も手に汗握る白熱の試合は判定へ。結果は、2-1のスプリット判定で扇久保の勝利! 天を見上げ喜びを噛み締める扇久保と、膝から崩れ落ち悔しさを顕にする石渡。両雄の魂をぶつけ合った殴り合いは、日本バンタム級史でも間違いなく歴史に残る名勝負となった。
扇久保は、2019年を勝利で締めくくり、四天王を2人撃破する活躍で文句なしの次期バンタム級王者への挑戦権を手に入れた。果たして、扇久保はRIZIN王者というビッグタイトルを手にすることは出来るのか?
いざ、RIZINのスターとバンタム級タイトルマッチへ
2019年大晦日に行われた「朝倉海 vs.マネル・ケイプ」のタイトルマッチは、下馬評を覆すケイプのKO勝ち! よって扇久保の次戦は、ケイプとのタイトルマッチで確定したと思われたが、ケイプはバンタム級王座を即座に返上しUFCと契約。RIZINバンタム級を王座は空位に。この混沌としたバンタム級の中で、2020年8月に扇久保は、朝倉海との第3代バンタム級タイトルマッチが決定!
朝倉海は、兄の朝倉未来とともにRIZINに参戦し、絶対王者の堀口恭司をKOしたことで一気にスターダムへ駆け上がった。海は、圧倒的なボクシングスキルを武器に、常にKOを狙うアグレッシブなファイター。YouTubeでも成功するなど、人気も高くRIZINの看板選手だ。
RIZINの筋書きでは、ここで海にベルトを取ってもらいたいところだろうが、果たして扇久保はRIZINのストーリーをぶっ壊し、悲願のビッグタイトルを獲得できるのだろうか? 今ゴングだ!
試合開始から、海は10cm以上の身長差を活かしながらジャブを出してプレッシャーをかける。海は、さらにヒザ蹴りを放つが扇久保はこれをキャッチ。いつもならここからしつこく組みつく扇久保だがあっさり離して打撃戦へ。扇久保は、海のスピード感ある打撃に対応できず、ボディなどもくらい劣勢に。そして、1ラウンドも残り40秒で、海のアッパーが扇久保にヒット。扇久保がコーナー際によろめくと、海は追撃のヒザ蹴りとサッカーボールキックで試合を終わらせた。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
扇久保は、海のスピードとボクシングスキルに手も足も出ず完敗。初の王座戴冠は叶わなかった。しかし、なぜ、扇久保はいつものようなタックルからの組みつきで戦わなかったのか?
その理由は、扇久保が試合直前になぜか「打撃で行こう」と思ってしまったからだという。そのため、海の足を取っても寝技に持ち込まず打撃の展開を選択したのだ。
試合直後、扇久保は本気で辞めようと考えたようだが、負けたままでは終われないのが扇久保という男だ。ここから扇久保は、誰も想像がつかないような「這い上がりストーリー」を歩み出すことになる。
空手王子とバチバチの復帰戦
タイトルマッチの敗北から、3ヶ月後の2020年11月、扇久保の復帰戦が決定。相手は、RIZINバンタム級の新たなスター候補、瀧澤謙太だ。瀧澤は、朝倉海と似てアグレッシブな打撃が持ち味のストライカー。前線では、同じくストライカーで人気選手の金太郎を敗るなど波に乗っている。
扇久保は、自分の戦いを取り戻し負けられない復帰戦を勝利で飾れるのか?
いよいよ試合開始。1、2ラウンドは両者打撃戦に。瀧澤は身長176cmで扇久保と15cm以上の差があったが、扇久保はジャブとローキックで引けを取らない。3ラウンドには、扇久保がパンチからの左ハイキックで瀧澤からダウンを奪い、そのままテイクダウンを奪って見せ場を作った。
結果は判定にもつれ込んだが、3-0で扇久保の判定勝ち! 瀧澤を寄せ付けず、復帰戦を白星で飾った。
リング上のマイクでは、「社長、来年バンタム級グランプリを開いてください」と豪語し、バンタム級グランプリの開催を要望。扇久保は、敗戦からバンタム級の頂点に向けて決意を固めた。
そしてこのバンタム級グランプリが現実のものとなる。
RIZINバンタム級グランプリ開催!
2021年3月、扇久保の要望通りRIZINバンタム級JAPANグランプリの開催が決定。バンタム級のトップ選手16名が名を連ね、優勝者は賞金1000万円を獲得できることが発表された。
6月に東京ドームで行われる扇久保の初戦の相手は、春日井“寒天”たけし(当時、26勝7敗)に決定。実は扇久保は、春日井と7年前のVTJフライ級トーナメント初戦で対戦し、判定勝利をあげている。
試合は、1ラウンドに扇久保が打撃で右手を骨折するアクシデントが起こる。しかし、扇久保は、そこからはテイクダウンに作戦を切り替え春日井をグラウンドで支配。判定3-0で手堅く勝利を掴んだ。
試合後のインタビューでは、「井上直樹選手と、朝倉海選手、今日いい勝ち方してたんで(2回戦で)戦えればいいかなと思います」と口にし、早くも優勝候補筆頭の朝倉海と井上直樹の名前を出した。
しかし、続く9月の2回戦の相手は、大塚隆史(当時、29勝17敗)に決定。大塚は、扇久保と同い年で経験豊富なベテランファイター。大塚は、記者会見で「相手が扇久保選手と決まって試合の映像を見たんですが、マジでクソつまんねぇなと思いました。」と煽ると、扇久保も「なんか煽ろうとして強がってますけれど、全然レベル違うのでボコボコにして勝ちたいと思います。」と応戦し、舌戦を展開した。
バンタム級屈指のベテラン対決はどちらに軍配が上がるのだろうか。試合は、扇久保がパンチとキックのコンビネーションを的確に当てて主導権を握ると、そのまま試合を優位に進め判定勝ち。扇久保のトーナメントファイナルラウンドへの出場が決定!
扇久保の他には、朝倉海、井上直樹、瀧澤謙太が勝ち進めベスト4が出揃った。扇久保の準決勝の相手は誰になるのか? 扇久保は、過酷な1日2試合のトーナメントを制することは出来るのか?
準決勝はあの因縁の相手、「日本人最年少UFC契約」男
大晦日が目前に迫った2021年11月。準決勝のカード発表会見が行われた。扇久保の対戦相手は、3人の中で唯一対戦経験のなかった井上直樹に決定。この記者会見で扇久保は、井上への並々ならぬ思いを口にした。
「僕はあの時から、心の底から幸せだと思ったことはありません。5年前、僕はUFCの切符を掴みかけました。でもその切符を掴んだのは当時19歳の彼でした。このトーナメントが始まってから、僕は井上選手のことしか見えていません。リングの上でやっと会えるのが楽しみです」と。
扇久保は、2016年にアメリカに渡り、UFCとの契約をかけた「TUFシリーズ」に挑んだ。しかし、トーナメントの決勝で敗れUFCとの契約はならなかった。にも関わらず、そのわずか半年後にDEEPで名をあげた当時19歳の井上が日本人最年少でUFCと契約。扇久保は、井上に夢を奪われたと思わずにはいられなかったのである。
このコメントにはTwitterも大いに盛り上がり、「扇久保 vs. 井上直樹」は大注目のカードとなった。しかし、下馬評ではRIZINで底知れぬ強さを見せている井上直樹の圧倒的有利。扇久保は、いまだに穴を見せていない井上相手にどのような戦いを見せるのだろうか? 今ゴングだ!
試合は、井上が打撃でプレッシャーをかける。扇久保は、無理に打ち合おうとはせずステップワークを使って距離を取る。打撃から扇久保が井上の足を取りテイクダウンを狙うも、逆に井上にマウントを取られパウンドを浴びる。1ラウンドは井上優勢で試合が進んだ。2ラウンドも井上にマウントを取られた扇久保だったが、スクランブルで反転し井上からトップポジションを奪う。扇久保はそこから終始組みついて離さず、このラウンドは扇久保のラウンドに。
そして運命の最終ラウンド。扇久保は、得意の組みつきからのテイクダウンで井上をグラウンド地獄に引きずり込むと、バックチョークの体勢に入るなどの見せ場を作る。そして、井上をコントロールし続けゴングとなった。
判定は、文句なし3-0で扇久保の完勝! これぞ「扇久保」という掴んだら離さない粘り強さで、バンタム級のホープを葬り、5年前の悔しさを晴らした。
そして、次はいよいよ朝倉海とのバンタム級グランプリ決勝。ここまで大一番で勝ちを手にすることができなかった扇久保だが、ここで朝倉海にリベンジを果たし、グランプリを優勝できるのか?
RIZINバンタム級JAPANトーナメント優勝!
2021年を締め括る最後の一戦として、バンタム級トーナメント決勝戦が始まった! 優勝トロフィーを手にするのは、「優勝して当然」と豪語する朝倉海か? それとも、自身の「集大成」と語る扇久保か?
1ラウンド序盤、扇久保は、海の前足を何度も蹴り、足から潰しにかかる。海は、飛びヒザを使い大技を狙うが扇久保は冷静に対処。終盤には、扇久保がテイクダウンを奪い。海を得意の寝技に持ち込み、マウントを奪うなど試合の主導権を握った。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
続く2ラウンドは、扇久保がパンチを当て打撃で海を上回る。残り30秒のところで、扇久保はカウンターでタックルに入りバックから海を投げる。海をロープぎわで攻め立てる扇久保は、前回の仕返しと言わんばかりにサッカーボールキックを繰り出し見せ場を作る。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
そして運命の最終ラウンド。扇久保は、切られても再三タックルに入り持ち前のしつこさで海を削っていく。試合後には海も「しつこいっすよね。ここまで入ってこれるのすごいっすよね」と語っている。そして、終始扇久保ペースで試合終了となった。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
試合後、勝利を確信した扇久保は、自陣のコーナーに戻り両手を突き上げた。一方の朝倉海は、力なく座り込み悔しげな表情を浮かべる。結果は火を見るよりも明らかだった。フルマークで扇久保の判定勝ち!
約1年4ヶ月前の試合では、打撃で勝負し手も足も出ずに完敗した扇久保。しかし、今回は「打・投・極」でしっかり自分の持ち味を発揮しリベンジに成功した!
扇久保博正は34歳にして、RIZINバンタム級グランプリを制覇! 全試合判定勝利ながら、最後までタックルからのしぶとい組みつきでコントロールするスタイルを貫いた圧巻の優勝だった。
試合後、扇久保は、Twitterに「諦めなくてよかった」の文字とともに牛丼を頬張る姿を公開。数々のチャンスを掴みかけながら、あと一歩で逃してきた扇久保にとって、この「諦めなくてよかった」に込められた意味深さは計り知れない。
バンタム級グランプリ
優勝することができました!
皆さま応援ありがとうございました!
諦めなくてよかった pic.twitter.com/3yqwBGiV9d— 扇久保博正 Hiromasa Ougikubo (@Hiromasa0401) December 31, 2021
扇久保博正の知りたいトコ!
扇久保の彼女は?
扇久保は、バンタム級トーナメント優勝後に彼女の京香さんに公開プロポーズを行い話題となった。京香さんは、扇久保より9つも年は離れているようだが、色白で綺麗な方だ。
※https://jp.rizinff.com/(RIZIN公式HPより引用)
大晦日のトーナメントでは、井上直樹に勝利し燃え尽きかけた扇久保だったが、京香さんからの「16年間やってきた自分を裏切らないで」という手紙を見返し、再びスイッチを入れ直すことができたと話す。京香さんからの熱いメッセージなしには、扇久保のトーナメント優勝はなかったかもしれない。
2022年3月には、扇久保のYouTubeで3月9日に入籍したことも発表。数多くの祝福コメントが寄せられた。
また、7月には動画で第一子を授かったことを報告しており、順風満帆な結婚生活を送っているようだ。
今後も、扇久保が家族を持ってさらに強くなることに期待したい。
扇久保の乗っている車は?
2021年にはバンタム級トーナメントを優勝し、賞金1000万円を手にするなど格闘家として数々の実績を残してきた扇久保。そんな扇久保は一体どのような車に乗っているのだろうか?
2022年7月に自身のYouTubeチャンネルで新車を購入する様子を公開している。扇久保が購入した車は、ボルボの「xc40」。お値段約700万円の高級車だ!
試合で扇久保が頭に「THE」と刈り込む訳は?
試合での扇久保の髪型を見ると「THE」と刈り込まれている。今や扇久保のトレンドマークとなったこの文字だが、一体どのような意味が込められているのか?
※画像URL:https://lapinagile.blog/wp-content/uploads/2020/08/IMG_218C5F97E802-1-1536×1152.jpeg(南行徳美容室ラパンアジール 山田健太郎の美容師Blogより引用)
この「THE」は「TSURUYA HIROSHI ENTERTAINMENT」の略称である。つまり、パラエストラ柏の先生である鶴屋浩氏への感謝や敬意を表しているのだ。
扇久保は、MMAを始めてから常に鶴屋氏から格闘技のイロハを教わり、その師弟関係は今も変わらず続いている。鶴屋氏は、バンタム級トーナメントでも「扇久保が絶対優勝する」と断言するなど、2人の信頼関係は確固たるもの。
今後も最強タッグでできる限り長く「THE」の文字を刻み続けてもらいたい。
まとめ
ここまで扇久保博正の格闘家ストーリーを振り返ってきたがいかがだっただろうか?
苦節16年。扇久保は、キャリアの中で幾度となく挫折を味わってきた。堀口恭司に2度の敗北、目前で逃したUFC契約、激闘の末辿り着いたRIZINバンタム級タイトルマッチで1ラウンドKO負け。しかし、扇久保は、決して諦めずにその悔しさをバネにして這い上がってきた。そして、ついにその努力が実を結び、2021年のバンタム級グランプリを制するに至った。扇久保は、今やRIZINバンタム級のトップコンテンダーである。
ただ、扇久保にはまだ倒さなくてはならない相手がいる。そう、堀口恭司だ。扇久保は、「優勝して本当嬉しかったですけど、やっぱり堀口選手がいるんですよね」と語る。堀口には、2戦2敗と全敗の扇久保。今はアメリカのベラトールで活躍する堀口だが、RIZINバンタム級のベルトを保持しているため、扇久保との対戦は十分に考えられる。
いや、RIZINバンタム級トーナメントを制した今、堀口の相手は扇久保しかいないだろう。2022年中に実現するかは定かではないが、堀口がベラトールのバンタム級トーナメントを初戦で敗退してしまったため、年末にRIZINで扇久保と組まれる可能性は大いにある。
天性のスピードとテクニックを誇る堀口か、リベンジに燃える雑草魂、扇久保か? 2人のカードが組まれれば、大注目の一戦になることは間違いない。
※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用