日本人離れした屈強な肉体と狂気に満ちた表情、そして本能のままに敵を叩き潰すファイトスタイル。その熱いファイトを見た人々は自然と彼のことを“怪物くん” とあだ名するようになった。
2022年でプロ格闘家歴16年を迎える鈴木博昭は、未だに衰える事無くRIZINでその剛腕を振り回している。
RIZINの人気選手、萩原京平や平本蓮との試合で彼を初めて知ったというファンも多いと思うが、実は鈴木の格闘人生は、さらに奥が深く面白い。RIZINに辿り着くまでの彼の生き様を見たならきっと誰もが今後の彼の活躍を心待ちにする事だろう。
一体彼はどんな格闘人生を経てRIZINに辿り着いたのか、今回は“怪物君” 鈴木博昭選手を丸裸にしていこう。
鈴木博昭のプロフィール
名前 : 鈴木博昭
生年月日 : 1984年12月6日
出身地 : 日本 愛知県豊橋市
身長 : 167cm
体重 : 66Kg
戦績 : 36勝9敗(12KO)
階級 : フェザー級
所属 : BELLWOOD FIGHT TEAM
獲得タイトル : SBスーパーライト級王者
入場曲 : 10-FEET 「hammer ska 」
バックボーン : 空手、シュートボクシング
公式 HP : ー
Twitter : 鈴木博昭 hiroaki suzuki
Instagram : hiroaki suzuki 鈴木 博昭
Youtube ー
アパレル ー
ファンクラブ ー
今年で38歳と、大ベテランの領域に達してきている鈴木だが、そんな事を全く感じさせないアグレッシブなファイトは今後の更なる成長を予感させる。いったい鈴木のこの燃え盛る闘志はどこからやってくるのだろう。ここからは鈴木の幼少期まで遡って彼の格闘人生を見ていこう。
文化系少年からプロ格闘家へ
格闘技とは無縁の少年時代
1984年12月6日に愛知県豊橋で生まれた鈴木博昭。
今では”怪物くん”と称される程の人間離れした身体能力を持つ鈴木だが、小学生の頃は家庭科と音楽と美術が好きだったと言うゴリゴリの文化系少年だったそうだ。そんなインドア少年がどのようにして格闘技と出会ったのか。
「小学校のときに空手をやりたかったんですよ。でも家は『勉強をしっかりやりなさい』っていう家でやらせてもらえなかった。かと言って勉強もできる方ではなかった。体育は1とか2でした。よく『身体能力高いでしょ』、『昔から運動できたんでしょ』って言われるんですが、運動は疲れるし全く得意じゃなかった。部活とかヒィヒィやるのは地獄だって思ってましたから」
「格闘技って原始的でシンプルで、たぶんその一対一の戦いに惹かれたんだと思います。空手をやりたかったのも、武のたたずまいの良さに惹かれたから」と当時の心境を鈴木は語る。
格闘技への関心は早くからあったが、決して才能に恵まれていると言う訳では無かったようだ。ただ、何故か器械体操はいつも一番だったようで、身体能力のポテンシャルはやはり高かったようだ。。
中学で空手を始め、16歳の誕生日目前に「空手で生きていく」と決断し家を出て、空手道場の片隅で寝泊まりしながら腕を磨いていった
20歳になったあたりに、金銭面や人間関係で行き詰まり、数カ月間、住所不定の綱渡りな生活を経て、一旦実家に戻る。だが、「やっぱり格闘技がやりたい」という想いが湧き上がり、地元のAresというジムに入門。
当時のAresはまだSB(シュートボクシング)協会に入会してはいなかったが、「チャンピオンになりたい」という鈴木の想いに応えるためにAresの安田会長はSBへの入会を決断。
鈴木もまた、そんな安田会長の期待に応えたいとひたむきにトレーニングを重ね、2008年にアマチュアの大会で見事優勝を果たした。
鈴木の強い精神と不屈の闘志は、このデビュー前の挫折、そしてそれを乗り越えた経験によって培われたに違いない。
シュートボクサー、デビュー
2008年3月31日、Heat 6で初めてプロのリングに上がった鈴木は、デビュー戦の相手、酒井楽をTKOで降し、順調なデビューを飾った。
試合経験が圧倒的に少ないと言う事もあり、次戦ではKO負けを喫するが、その後は平均2ヶ月に一回のハイペースで試合をこなし怒涛の5連勝。さらに2009年6月1日には、大ベテランで、経験も実績も鈴木を上回る、及川友浩知浩に試合終了間際の怒涛のラッシュでKO勝利。
なんとわずか1年半で8戦7勝という華々しい戦績を引っ提げ、2009年9月4日、SBスーパーフェザー級のタイトルをかけて改めて及川と拳を交える。
及川は3ヵ月前の敗北のリベンジに燃え、鈴木の圧力を克服するために2階級も上の選手との過酷なスパーリングを続けて試合に臨んだ。
両者、死力を尽くして戦ったが、最後まで決着はつかず。試合は判定へ。結果は0-3で及川に軍配が上がった。
大一番での悔しい敗戦をバネに、鈴木は進化を続ける。
翌年2月の復帰戦では石川剛司を試合開始わずか1分で、復活KO勝利。そこから再びハイペースに試合に出続け2010年6月には、ベテラン総合格闘家の不死身屋天慶と、延長戦まで持ち込まれる死闘の末に判定で勝利をもぎ取った。
そして2010年9月18日、次々と強敵を倒し、名を上げて行く鈴木の前に最強の敵が立ちはだかる。
その名もタップロン・ボーチョーローソン(のちにハーデスワークアウトに改名する)。
この試合も含め3度も対戦する事になる、鈴木にとって最も大きな壁と言ってもいいだろう。
そのタップロンに0-3の判定で敗北し、鈴木の連勝は3で止められた。
“怪物くん”& “総合キラー”
次戦で総合格闘家、石田光洋を右ストレートでマットに沈めると、再び連勝街道を爆進。
リオン武やヨアキム・ハンセンなどのトップレベルの総合格闘家達を次々に撃破し、いつしか鈴木は“総合キラー” や“怪物くん”と呼ばれるようになる。特にハンセンは、あの五味隆典や所英男も降している超実力派である。S-cup 70Kg世界トーナメントの一回戦でハンセンを降した鈴木は一気にトーナメントの優勝候補に躍り出たが、ハンセンとの激戦で足を負傷。準決勝への出場は叶わなかった。
懸命な治療とリハビリにより、5か月後の2013年4月20日にはリングに復帰。
対戦相手は、あの「朝倉未来に勝ったら1000万」企画で一躍有名になったモハン・ドラゴンだ。29歳でデビューと遅咲きながら、デビューから6連勝。アグレッシブなファイトでKO率も高い。
いつもは本能のままに戦うタイプの鈴木だが、ブロックを固めてモハンの一撃必殺のパンチに備える。だが1R終了間際、ショットガンの様な強烈な右フックになぎ倒され、KO負けを喫した。
しかし、リベンジのチャンスはすぐにやってきた。
同年11月16日SB 65Kg日本トーナメントへの出場を決めた鈴木の、一回戦の相手にモハンが選ばれたのだ。
今回はフットワークを上手く使ってスピードでモハンを翻弄していく鈴木。1R後半に、モハンの左フックに対して、完璧なタイミングで左カウンターフックを入れ、モハンからダウンを奪う。
2Rにはモハンのローに右ハイキックを合わせて、モハンをスリップダウンさせ、立ち上がったモハンをロープ際に追い詰めて猛烈なラッシュ。このラッシュに防戦一方のモハンはスタンディングダウンを取られる。完全にスイッチが入った鈴木は、闘争本能むき出しの壮絶なラッシュを畳みかけ、ここで試合が止められる。鈴木がその怪物ぶりを見せてTKOで圧勝し、見事にリベンジを果たした。
勢いに乗った鈴木は一日で決勝まで行われるこの過酷なトーナメントを制し、SB 65kgの国内頂点に立った。
その後もハイペースで試合をこなしていく鈴木は、後にSB 65Kgトーナメントを制覇する事になるザカリア・ゾウカリーを倒し、さらにSB日本スーパーライト級王座決定戦で平井慎介をTKOで破り、同タイトルを獲得する。
夢のチャンピオンへ
2014年11月30日。前年に強敵、ヨアキム・ハンセンを破りつつ怪我によって準決勝進出を断念したSB 65Kg世界トーナメントに再び挑戦。
1回戦、準決勝を順調に勝ち上がり、決勝では急成長を遂げて勝ち進んできた、ザカリア・ゾウカリーと再戦。
両者この日既に2戦を戦っているとは思えない程の大激戦。打撃、関節、投げを織り交ぜて互いに勝利への糸口を探していくが、全く互角と言っても良い試合展開で、3Rでは勝負がつかずに判定へ。しかしこのあまりに拮抗した戦いにドローとなり、延長戦へ。
互いにとっくに限界を超えている筈なのだが、戦いはさらに激しさを増し、一歩も引かぬまま延長戦が終了。なんと延長戦でも判定は傾かず、再延長戦へ。
互いに死力を尽くして打ち合っていくが、ラウンド中盤で鈴木の右のロケットパンチがゾウカリーの顔面を捉え、これを最後のチャンスと見て、格闘人生をかけた壮絶なラッシュ。これには流石のゾウカリーもなす術がなく、レフェリーが試合をストップ。
鈴木は猛獣の様な雄たけびを上げて勝利を宣言した。
Aresに入った当初、安田会長に「チャンピオンになりたい」という想いを伝えた時から動き出した、鈴木の格闘人生。その夢を叶えた鈴木は試合後にマイクを取り「僕はこの日のために人生を過ごしてきました。この日の事だけを考えて、日々過ごしてきました」と、簡潔にその喜びを表現した。
立ち込める暗雲
まさに人生の絶頂の瞬間を迎えた鈴木だったが、SBという団体そのものを背負う立場、負けられない立場になった事で守りに入った試合が目立つようになる。
当時の事を鈴木は後にこう語っている。
「思い返すと、S-cupで優勝してからの僕は停滞していた。“自分はどこに向かってるんだろう”と」
そんな煮え切らない心境の中でも、やはり実力は世界トップレベルの鈴木は、2015年8月22日にはクリス・バヤを判定で破り、SB世界スーパーライト級タイトルを手にする。
しかし、やはり超一流選手相手には、ほんのわずかなメンタルの差が命取りになる。
次戦、ザカリア・ゾウカリーとの三度目の対戦では守りに入りすぎたファイトで、ゾウカリーにポイントをリードされて判定負け。
続いて、「今度こそ」というリベンジが期待されたタップロンとの三度目の対戦でも、鈴木本来の持ち味が出せずに判定で敗れ、自身のキャリア初の連敗を喫した。
だが人生初の連敗が、ある意味鈴木の気持ちをリセットするきっかけになったようだ。
タップロン戦から数日後に受けたインタビューでは
「今は一からやり直そう、純粋に強くなろうという気持ちでいます」と、自分に気合を入れ直し、初心に戻ってトレーニングに励む意志を示した。
攻めの立場へ
初心に戻った鈴木は、自らの野性を取り戻すために、守る立場から攻める立場へ、つまり、今後は他団体に乗り込んで試合を行う事を宣言する。
その後はキックボクシング団体のRISEで試合をこなしながら、SBでも3連勝2KOと、かつての“怪物くん”に戻りつつあった。
そんな鈴木を凄まじい勢いで追いかける男が居る。キックボクシングファンなら知らない者はいないであろう、海人である。当時は勢いのある若手という立場だったが、今ではイ・ソンヒョン、や“ブラックパンサー”ベイノア、野杁 正明などの世界レベルの選手達を次々に撃破し、2022年10月現在14連勝中、名実ともに日本を代表するシュートボクサーとなっている。
2017年6月16日、鈴木はまだ未知数だったその実力を試すモノサシとして、海人と拳を交える。
試合では、野性を取り戻した鈴木がグイグイと前に出て海人を攻め立てて行ったが、距離を詰める鈴木に海人が、カタナの様な縦肘を一閃。この肘で鈴木は額を大きくカットし、出血が激しいために一旦試合はストップ。
ドクターチェックに入ったが、出血が止まらずにTKOが言い渡され、その瞬間鈴木はマットに泣き崩れた。
そんな鈴木に追い打ちをかけるように、同年10月に参戦したKNOCK OUTのトーナメントで大石駿介にKO負けを喫する。
背水の陣
鈴木はこの敗戦を受け「一度背負っているものを置いて自身の最後の可能性を試したい」と長年所属してきたAresを退会。同時にSB協会も退会する事となり、王座も返上した。
そして自身の最後の可能性をかけ、シンガポールを拠点にする、アジア最大の格闘技団体、ONEでの挑戦を開始する。
「もう退路はないです。ここで勝ち上がるしか道はないし、それを臨んでここ(ONE)に来たので勝ち上がります。後はやるだけ。職業格闘家として、人生懸けていきます」という並々ならぬ決意を持って上がったONEのリングで、鈴木は見事にデビュー戦を勝利で飾り、次戦ではモハマド・ビン・マフムードを3R終了間際に右ストレートでKO。
わずか3戦目で、初代ONEバンタム級チャンピオン、ノンオー・ガイヤーンハーダオへのタイトル挑戦まで辿り着いた。
2019年5月10日に試合は行われ、鈴木は必勝の鉢巻を巻いて気合十分で登場。
試合は、鈴木が距離を詰めて打ち合おうとするのに対し、ノンオーは右ミドルを多用して、鈴木を突き放す展開。ノンオーのキレのいいミドルに鈴木は上手く反応できず、度々強烈なミドルが鈴木の脇腹にめり込む。
2R、ノンオーは右ミドル&ロー、右ストレートと上下に揺さぶっていく。鈴木は前に出て行こうとするが、巧みな足さばきに翻弄され距離を詰められない。さらにノンオーは鈴木のヒザに前蹴りを当てて前進を阻む。
3R、鈴木は左右に動き始めるが、ノンオーの右ミドルは的確に鈴木を捉える。右ストレートと右ミドルを織り交ぜ、鈴木を翻弄。強烈な右ミドルを受け続ける鈴木に、ノンオーは右ヒジも見舞う。1、2R以上の激しいミドルに鈴木は苦戦を強いられて試合は終了。
試合は判定に持ち込まれ、0-3でノンオーが勝利し、鈴木の新たなタイトル獲得には至らなかった。
ノンオーはその後も防衛を続け、2022年10月現在でも現役王者の座を守り続けている。
次戦でもONEの大会でトゥカートン・ペットパタヤイに敗れた鈴木は、その後パタリと試合が無くなり、約2年間リングから遠ざかる。
遅咲きのRIZINデビュー
帰って来た“怪物くん”
シュートやキックボクシングのリングで海人やベイノア、野杁等が活躍し、その存在が忘れかけららていった鈴木だったが、2021年に突如、日本の最高峰のリング、RIZINのリングで復活する事を発表。
実は鈴木、このリングに上がるためにあのクレベル・コイケ、ホベルト・サトシ・ソウザらが在籍するボンサイ柔術に出稽古に赴き、鈴木がクレベルらに打撃を教える代わりに、ボンサイ柔術の選手がら柔術を学んでいた。
RIZINデビューの相手は、如何にも悪童といった風貌の奥田啓介。
鈴木の印象を聞かれると「強くないし、小さいね。キン消し(マンガ『キン肉マン』の消しゴム)みたいで、可愛いよな」
と、鈴木の体型を引き合いに出してコケにした。
鈴木は奥田の印象について
「黒いですね(笑)」とだけ話し、奥田が鈴木のことを“キン消し”に似ていると言ったことを聞かれると「それは嫌いじゃないのでいいです(笑)」と気にしなかったが、垂直落下式のブレーンバスターをやってやるとの発言には「やってみろ、コラッ! って感じです。逆にライガーボムをやってやろうかっていうくらいの気持ちですね」と闘争心を見せた。
2021年10月2日に行われた試合では、奥田が時折り右膝をついてタックルのフェイントを見せていく中で、鈴木がハイキックを当てるが、奥田はそのまま組みつきコーナーに押し込む。
だがここで鈴木は持ち前のフィジカルで踏ん張り、奥田を突き放す。鈴木は勢いよくタックルを仕掛けて来る奥田をかわしてコーナーを背負わせ、左右の連打からの左ヒザを奥田の顔面にヒット。崩れ落ちる奥田に、鈴木の真骨頂である本能むき出しのパウンドの連打を浴びせたところで試合はストップ。
一時はリングから姿を消し、フェードアウトしていくかに思われた鈴木が、日本最高峰のリングで”怪物くん” の見事な復活劇を見せた。
新世代との死闘
華々しい復活KO劇を演じた鈴木は、同年のRIZIN大晦日の大舞台へ出場を決める。
迎えるのは、RIZINの“アンダーグラウンドエンペラー” 萩原京平。
危険な雰囲気をもつ同士、試合前から空気がピリついている。
萩原は鈴木に対し
「2年連続大みそか、出場できてうれしく思っています。やりたかった相手とは違った相手になったのですが、ぶっ飛ばしてやろうと思っています。“怪物狩り”をしたい。またキックボクサーにMMAの厳しさを教えようと思っています」と、挑発し
対する鈴木は萩原への印象について「アスリートじゃないなという印象ですね。ファイターなので、願ったりかなったりです。判定じゃダメなんで、KOじゃなきゃダメなんで」と五味隆則の名言をオマージュしつつ、KO決着を宣言した。
萩原も「アスリートじゃないと言われたんですけど、僕も鈴木選手にはそう思っている。ファイター同士の面白い試合になると思う。僕も判定決着で終わるつもりはない。KOで勝っていい年迎えようと思っています」と、鈴木と真っ向から打ち合う意向を示した。
試合直前のフェイスオフでは、萩原がにやけながら鈴木に中指を立てて挑発。すると鈴木はガン決まりしたようなヤバい表情で萩原を凝視。一触即発の空気の中、計量を終えた。
そして、ついに大舞台、大晦日さいたまスーパーアリーナでの試合が始まる。
1R、2Rは非常に拮抗した試合展開で、萩原の攻撃を鈴木が巧みにかわし、グラウンドで上になられても巧みに萩原の攻撃を封じていく。
3R、鈴木の左ハイキックを手ですくい、萩原がテイクダウン。萩原はそこから鈴木をコーナー際まで運んでいき、立ち上がって踏みつけを喰らわせ、起き上がろうとする鈴木を再び寝かせてグラウンドに戻す。その後も萩原が鈴木を抑え込む展開で試合は流れていくが、大きな展開はないまま試合は終了し判定へ。後半グラウンドを支配した萩原に軍配が上がり0-3で鈴木の敗北となった。
鈴木に攻撃をことごとく封じられて苦戦したせいか、勝者のはずの萩原に笑顔は見られなかった。
瞬殺侍相手に負けられない復帰戦
鈴木はRIZINでもハイペースで試合に出続ける。
大晦日から3か月後のRIZIN LANDMARK vol.2に出場し、世界最速KO記録を持つ、同年代の昇侍と対戦。
1Rから猛烈な勢いで昇侍を攻め立てる鈴木。蹴りを織り交ぜた上下のコンビネーションを次々にヒットさせ、昇侍をマットに転がせる。立ち上がった昇侍をコーナーに追い詰め、左右の連打で昇侍がうずくまると、両脇を抱えて顔面に強烈な膝を二発。根性で立ち上がり、死に物狂いで出した昇侍の右に、一撃必殺のカウンター左フック! この一発で昇侍はマットに崩れ落ち、試合は止められた。
怪物 vs. 悪童
勢いに乗る鈴木は4か月後の7月2日、K-1で無類の強さを誇った14歳年下の平本蓮と対戦。
平本はあちらこちらに喧嘩を売っては炎上する悪童としても有名だ。
計量時に互いに磨き上げられた肉体を披露し、フェイスオフの撮影になると約23秒間バチバチの睨み合い。離れ際にも一切視線を離さず、鈴木がグ―タッチを求めるも平本は無視。
その後、コメントを求められ、「フ〇ック!」と叫び、マイクを投げ捨ててその場から立ち去る平本。会場内に驚きの声と失笑が入り混じる中、鈴木が落ち着いた様子でマイクを取ると
「どうも、皆さんご存じ怪物くんです。こういうイレギュラーの起きる大会ほど盛り上がると榊原代表もおっしゃっていましたけれど、そういう時ほどテンション上がってしまうのが私ら格闘家です。そんな選手の生き様を本当に見て欲しいので、出来れば払い戻しせずに大会を見て欲しいと思います」と、大人の余裕を見せかけた後、その表情が一気に獣へと変貌し、
「ぶっ飛ばしてやるぜ おらぁっ!!!」と叫んで、会場を盛り上げた。
試合は、平本が三日月蹴りで鈴木のボディを攻め、鈴木がオーバーハンドフックを出しながらテイクダウンを狙う流れに。グラウンドディフェンスが上達してきた平本は、鈴木のタックルを上手くかわし、自分の土俵である立ち技で、コンビネーションや三日月蹴りを決めていく。2Rですでに鈴木のボディが赤く腫れあがっている。
3R、平本のヒザがローブローとなり試合は一時中断。再開後は一進一退の打撃戦が続くが、残り3分で鈴木がタックルを仕掛け、平本をコーナーに押し込む。
テイクダウンはできずに再び打撃戦になり、残り1分のところで首相撲から鈴木がヒザ蹴りを連打。平本は脇をさして投げ気味に鈴木を振るが、テイクダウンにはならず。平本は最後、コーナーでクリンチしながらそばのカメラに向かって舌を出して余裕をアピールしたところで試合終了のゴング。
前半は平本がリードし、最終Rは鈴木が盛り返したように見えたが、判定は1-2で平本に軍配が上がり、判定が読み上げられた瞬間に鈴木は頭を抱えてマットに崩れ落ちた。
試合後「ギリギリでも、どんな形でも星は落としちゃいけなかったな」と落胆する鈴木。
「ひっ倒して、上になってボコボコにするというのが、今回の作戦だったんですけど、なかなかそれが上手くいかなかった」と、タックルディフェンスが飛躍的に向上した平本に攻めあぐねていた事を明かした。
新しい力に苦戦を強いられている鈴木だが、その狂気すら感じさせる熱いファイトは、しっかりとファンやRIZIN運営の心を掴み、2022年11月6日に行われるRIZIN LANDMARK 4への出場も決まっている。
迎える青井人(あおい じん)は修斗からRIZINに参戦した若手選手だ。今後RIZINのトップファイター達と渡り合っていくためにも、ここは絶対に落とせない試合だ。
37歳という年齢になっても全く衰えを感じさせない、いやそれどころか凄みをましていく”怪物君” 鈴木博昭選手からはまだまだ目が離せない。
鈴木博昭の知りたいトコ!
鈴木博昭選手に彼女は?結婚してる?
鈴木はあまり私生活の事を公にはしないタイプだが、2010年の10月頃に、自身のブログで結婚を報告している。一般人の女性と結婚したとの事で、妻の画像などは公開していない。
また2020年には妻との間に女の子が生まれ、ツイッターで報告をしている。
8.23、女の子が産まれました。
丸一日以上の陣痛からの緊急帝王切開で心配が多かったですが、妻が頑張ってくれたおかげで今ではミルクの飲みっぷりとウンチの量で看護師さんをビックリさせる程なので、おそらく私似かと思うと心配しかありません。
しかし何より産まれてきてくれてありがとう。 pic.twitter.com/gNYzaLqxCy
— 鈴木博昭 hiroaki suzuki (@kaibutsukun1206) August 24, 2020
父親としてはかなり子煩悩なパパで、休みの日には一日中一緒に遊ぶなどしてわが子との時間を大切にしているようだ。
事あるごとに娘の写真をSNSにアップし、幸せな時間をファンとシェアしている。
娘は鈴木そっくり?
鈴木が溺愛する娘だが、どうやらかなりの父親にらしく、鈴木自身が娘と自分を比較した画像をアップしている。
生後50日
やはりパパ似なのかと思った今日この頃 pic.twitter.com/lVeVsYk3hZ
— 鈴木博昭 hiroaki suzuki (@kaibutsukun1206) October 18, 2020
また、顔だけではなく体型も似ているようで、まだ1歳にもかかわらず、既に屈強な肩と背筋を持つ娘の写真もアップしている。
いつか娘が格闘技デビューし“怪物ちゃん”と呼ばれる日が来るかもしれない。
まとめ
ここまで、“怪物くん” 鈴木博昭選手のストーリーを見てきたがいかがだっただろうか。
美術や家庭科が好きなインドアな少年だった鈴木が、空手に憧れて道場に通い始め、高校にもいかずに道場に住み込みで猛稽古。だが格闘技への情熱が再燃しAresに入門、プロリングに上がるとSBの大会で次々に強敵を倒していき、いつしか人々に“怪物くん” と呼ばれ始める。
SB 65kg世界トーナメントで優勝を果たすが、その後幾多の壁や挫折があり、一時リングから姿を消す。2年後にRIZINでリングに復帰すると、かつての“怪物くん”らしいファイトで衝撃の復活劇を見せ、それからもハイペースで試合に出場し、彼らしいファイトで我々を楽しませてくれている。
今、鈴木が主戦としているRIZINフェザー級には、弥益・ドミネーター・聡志、クレベル・コイケ、そしてあの朝倉未来など、とてつもない実力者たちがまだまだひしめいている。未だに成長を見せる鈴木は今後、このトップファイター達と肩を並べる事が出来るのか、非常に楽しみな所である。
デビュー前から幾多の困難を越えてきた鈴木は、今後もあらゆる困難を乗り越え、熱いファイトを見せてくれることだろう。そんな“怪物くん” 鈴木博昭をこれからもみなさんと応援していきたい。
※アイキャッチはRIZINの公式HPより引用