怪物揃いのヘビー級の中でも飛びぬけたパンチ力を武器に、オクタゴン内で数々の衝撃的なKO勝利を見せ“プレデター(捕食者)” と呼ばれたフランシス・ガヌー。
壮絶な幼少期から少年時代を経て、自らの力で夢を掴むためにフランスに渡り、今まさにUFCの頂点に立ち、アメリカンドリームを実現させている。
その想像を絶するパワーとアグレッシブなファイトとは対照的に、温和で常に対戦相手をリスペクトする姿勢は多くの人から支持され、彼の人間性にリスペクトを向けるファイターも多い。
一時はUFC会長、ダナ・ホワイトとの確執もあり、タイトル戦線から退いた事もあったが、常に進化し続け、弱点を克服して勝ち進み、ついにはUFCヘビー級のベルトを手にした。
彼がどのような生い立ち、格闘人生を経てここまで強くなったのか、今回は“ザ・プレデター” フランシス・ガヌーを丸裸にしていこう。
フランシス・ガヌーのプロフィール
名前 : フランシス・ガヌー
生年月日 : 1986年9月5日
出身地 : カメルーン
身長 : 193cm
体重 : 113.4Kg
戦績 : 17勝3敗(12KO 4SUB)
階級 : ヘビー級
所属 : エクストリーム・クートゥア
獲得タイトル : UFCヘビー級王者
入場曲 : Drake 「God’s Plan」
バックボーン : ボクシング、総合格闘技
公式 HP : https://www.francisngannoufoundation.org/
Twitter : @francis_ngannou
Instagram : Francis Ngannou
Youtube ー
アパレル ー
ファンクラブ ー
今年36歳のフランシス・ガヌー。MMAの経験もまだ浅く、ヘビー級の中ではまだまだ通用する年齢なだけに、今後のさらなる成長も期待できる。ここからはガヌーがどのようにしてカメルーンからUFCにたどり着き、成長していったのか、幼少期にまで遡って彼の格闘人生を見ていこう。
幼少時代からプロデビューまで
過酷な生活環境
ガヌーは1986年9月5日、カメルーン人の父と母の間に、カメルーンのバティで5人兄弟の中の3番目の子どもとして生まれた。
ガヌーの父はストリートで日常的に乱闘を起こすトラブルメーカーとして悪名高く、父の事を悪い噂を他人から聞く度に胸を痛めていたと言う。
そんな父と母との結婚生活は長く続かず、ガヌーが6歳の時に両親は離婚。
親戚の家をたらい回しにされる生活の中を、幼いガヌーはまだ受け止めきれずに、次第に心は閉ざされていった。
だが、しばらくしてから、祖母の元に身を寄せ、後に母や他の兄弟もそこに集まってきて、再び母親と暮らすことが出来るようになる。
母一人の手で大所帯を食べさせていくのは当然困難で、ノートやペンを買う事さえままならなかった。
その上ガヌーたちは歩いて2時間もかかる学校に、徒歩で行かざるを得ず、時には空腹に耐えられず、学校が終わる前に走って家まで帰って来る事もあったと言う。
そんな危機的な家計を助けるべく、ガヌーはまだ幼い10歳の頃から、危険を伴う砂の採取上でアルバイトを始める。幼少期からのこの過酷な肉体労働が、ガヌーの人間離れした強靭な肉体を作り上げていく。
このバイトを根気よく7年間も続けたが、それでも学資を賄う事は出来ず、学校を退学。
その後は仕事に専念していたが、ストリートで名を上げた父親を持ち、砂の採取場で鍛え上げられた、立派な体格を持つガヌーを勧誘しようとするギャング達が後を絶たなかった。
だが、父を愛する反面、トラブルばかり起こす父を反面教師としていたガヌーはその誘いをきっぱりと断り続ける。
“夢を叶える為に” 祖国からの脱出
2008年、マイクタイソンに憧れていたガヌーは家族の反対を押し切ってボクシングを始めるが、重い病気にかかり継続を断念。
身体が回復してくるにつれて、ボクシングへの情熱が再燃してきたガヌーは、カメルーンに居ては成功のチャンスは掴めないと、フランスのパリに渡る事を決意する。
家族にさえ何も告げずに家を出たガヌーは、ニジェール、アルジェリアと、国境を越えていき、広大なサハラ砂漠を越え、ジブラルタル海峡まで到達。
サハラ砂漠では喉の渇きに苦しみ、動物の死骸が散乱する、明らかに安全性に問題がある井戸の水を飲んで渇きを凌いだという。
さらに困難は続き、ジブラルタル海峡の越境に6度も国境警備隊や沿岸警備隊に拿捕されて刑務所に送り込まれ、時には食料も水も与えられず西サハラ砂漠に放置される事もあった。
何度も越境を諦めそうになったが、ついに7度目の越境でスペインに到着。難民として認定を受け、カメルーンを出てから実に14か月の歳月を経て、2013年6月9日に、念願のフランス・パリに到着した。
MMAとの出会い
身よりも仕事も無いガヌーは、パリで路上生活を強いられるが、根気強く無料で練習させてもらえるボクシングジムを探しだし、さらに休日もトレーニング出来る場所をと、MMAファクトリーを紹介され、ここで初めて総合格闘技と出会う。
このジムのオーナー、フェルナンド・ロペスは即座にガヌーの才能を見抜き、グローブなどの格闘技用具一式が詰まったバッグを渡し、ガヌーにジムで寝泊まりすることを許可し、さらにガヌーのために住居を探した。
ガヌーとの出会いを、後にロペスはこう語る。
「まさにその日、彼は初心者のためのMMAクラスを受けたんだ。彼はMMAのことを何も知らなかったんだけど、彼の動きや考え方を見ていると……すごく頭が良くて、物覚えが早いし、それにとてつもなく強かったんだ。彼がトレーニングを続ければ、チャンピオンになれると思ったよ」
このロペスのコメントや特例的な対応からも、ガヌーの才能がどれほどずば抜けていたかがうかがい知れる。
こうしてガヌーの格闘人生が、長い長いトンネルを抜けて、ようやく始まりを迎える。
MMAプロデビュー
過酷なバイトや越境を経験し、すでに人間離れしたフィジカルやメンタルを持っていたガヌーは、恐ろしい速さで技術を習得していき、フランスに渡った2013年のうちにフランスの格闘技団体 100%Fightで、ラシッド・ベンジナを相手に迎えてプロデビューを果たす。
格闘技1年未満の、一般的に言えば”遅すぎる新人” であるガヌーだったが、経験不足をその圧倒的なフィジカルとメンタルで克服し、1R1:44、腕ひしぎ十字で一本勝ちで見事な勝利を収め、デビューを飾った。
1ヵ月後に行われた次戦では、経験の差が出て、判定負けを喫するが、急速に成長していくガヌーは2014年4月5日、100% Fightのヘビー級王座決定トーナメントに出場し、全試合でフィニッシュを決め、なんと格闘技歴わずか1年で優勝をかっさらってしまう。
その後も、SHCやKHKといった他の団体のイベントで2戦し、どちらも圧倒的なKOで勝利を重ていく。
UFCデビュー
鮮烈なデビュー戦
圧倒的な強さを持ち、印象深い過去を持つガヌーを、UFCがほっておく訳が無かった。
2015年12月19日、ルイス・エンリケを迎えてのUFCデビューが決定。
エンリケは柔術のバックボーンを持ち、グラウンドを得意とする選手。彼にとってもこの試合がデビュー戦で、お互い負けられない試合だ。
試合ではエンリケが、しつこくグラウンド勝負に持ち込もうとし、テイクダウンを取るが、ガヌーも必至に立ち上がり、2R中盤に左右のラッシュから、強烈なアッパーでエンリケの顎を粉砕し、衝撃KO勝利でデビューを飾った。
4か月後にはカーティス・ブレイズを2RTKOで破り、さらに次戦ではボヤン・ミハイロビッチを終始打撃で圧倒し、最後は地獄のようなパウンドの連打で試合をフィニッシュした。
ガヌーの夢
UFCのヘビー級選手として3連勝、注目度も人気もうなぎ上りのガヌーには、当然これまでとは比べ物にならない程のファイトマネーが入ってくることになる。
ガヌーはこの大金を、自らの欲求よりもまず先に、カメルーンの子ども達の為に使おうと考えた。
自分のように恵まれない境遇に置かれた子どもたちにチャンスを与えたいと、母国でチャリティー活動を始めたのだ。
「格闘家になる事を夢見る、私のような機会に恵まれない子供たちにチャンスを与えたいんだ。前回カメルーンに行ったとき、ジムを開くためにボクシングとMMAに必要なコーチやその他諸々を準備してきた。今、ジムを始めるために大きな土地を購入したところだ」
「カメルーンの子どもたちは、僕が作った施設で格闘技を学び、 MMAでチャンピオンになるんだ。彼らは『MMAのチャンピオンになるんだ!』『フランシスのようにボクシングをやるんだ』と言ってるよ。彼らは僕が若い時にボクシングをやっているのを見てるからね。私は何も持っていなかった。何もなかったし、チャンスもなかった。今 彼らは私を見て 夢を抱いてるんだ。自分にも可能性があるんだと感じている。こんなに貧しくても、人生には何か可能性があるんだ、と。…もちろん簡単な事ではない。難しいことだが、可能性はあるんだ」
と語るガヌー。
この時まだヘビー級15位にも入ってはおらず、巨万の富を持っている、とまでは言えなかったはずだけに、彼の母国への強い愛情が感じられる。
そして同時に自らの夢についても
「以前の僕にとっては遠い夢だったが、今はそのチャンスがすぐそこまで来ている」
「今の目標はヘビー級チャンピオンになることだ」
と語り、ガヌーのビジョンには、既にヘビー級のベルトがしっかりと映し出されていた。
進化するガヌー
その強い想いに比例するように、いやむしろ指数関数的と言っていいほど、急速に進化していくガヌー。
次戦ではアンソニー・ハミルトンを1R1:32、アームロックで破り、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを獲得。
着々と順位を上げて行く中で、2017年1月28日、元UFCヘビー級チャンピオン、アンドレイ・アルロフスキーを迎える。アルロフスキーはここ3戦KOや一本負けで3連敗を喫しているが、サンボ、キックボクシングをバックボーンに持ち、グラウンドと打撃を高いレベルで融合させている、紛れもない強敵だ。
そしてガヌーにとっては、このビッグネームとの対戦は大きなチャンスである。
試合は、互いの一発を警戒しながら単発で手を出し合い、相手の出方を見る展開に。静かな試合展開を切り裂くように、思いっきり踏み込んで大振りの左フックを繰り出すアルロフスキー。しかし、これを冷静に見ていた“ザ・プレデター” の、渾身のカウンター右アッパーがアルロフスキーの顔面に炸裂。その威力は、112Kgもあるアルロフスキー巨体が宙に浮くほどだった。
そのままキャンバスにうずくまるアルロフスキーに、ガヌーが容赦ないパウンドの嵐を浴びせたところで試合はストップ。この強烈なKOで、ガヌーは2戦連続ファイト・オブ・ザ・ナイトを獲得した。
この2戦で、プロモーションの面でも大きな飛躍を見せたガヌーに、いよいよトップコンテンダーとのカードが組まれる。
2000年代の格闘技シーンを知っているものなら誰もが聞いたことあるであろう、その名もアリスター・オーフレイム。
K-1、プライドの全盛期を盛り上げて来た名選手が、UFCでも大活躍していた。
アリスターは2016年9月10日にタイトルをかけて、スティーぺ・ミオシッチに挑戦するもKOで敗れたが、その後は、こちらも日本ではお馴染みのマーク・ハントや、ファブリシオ・ヴェウドムを立て続けに破り、以前好調である。
そして何よりも特筆すべきは、破壊力抜群のパンチ力と、そのパンチに劣らぬ高度なグラウンド技術だ。
このカードは2017年12月2日に行われる予定だったが、その試合の前に、ガヌーはある記録を樹立する。
試合が行われる約1週間前、UFCパフォーマンス・インスティテュートにある、パンチ力を測定するマシーンで、ガヌーが自身のパンチ力を測った結果、なんと96馬力という数値を叩きだし、この測定器での世界記録を更新したのだ。
この数値だけでは分かりにくい部分もあると思うが、例えるとすれば「ファミリーカーとの衝突に等しい衝撃」だそうだ。
もう一度言うがこれは「軽自動車」ではない。「ファミリーカー」との衝突レベルである。
もしこのパンチを無防備な状態で喰らったら、怪我どころの騒ぎではなく大惨事となるのは間違いない。
だが、この記録を耳にしてもアリスターは動じない。それどころか、
「それはただの…フェイクニュースだよ」「アイツが世界記録を樹立できたのは、俺がそのクソマシーンを試してないお陰だからな」と俄然強気だ。
ただアリスターはガヌーの記録には否定的だったが
「彼は間違いなくこの試合に値する」
「彼は獣のような男だ。彼は9連勝中だ。彼は素晴らしいパフォーマンスをしているし、すごいファイターだ。彼がどんな試合をしたかは見ての通り。そう、一撃必殺だ。 彼はここにいるに値するし、とてもエキサイティングな戦いになるだろう」
と、彼の実力は高く評価しているようだ。
そして、今後のタイトルショットに直接関わる、ガヌーにとって非常に重要な試合が始まった。
アリスターは、ガヌーの強力な打撃を警戒し、組み合ってグラウンド勝負に持っていこうとするが、身体能力の高いガヌーは持ちこたえ、互いに膠着したところでレフェリーが2人を引き離す。
両者警戒しながら小刻みに手を出していく中、ガヌーがアリスターの打撃を誘うように前に出てパンチを出していく、このパンチは明らかに腰を入れていない餌だったが、アリスターこの餌に釣られて大振りのカウンターフック。
そしてこのカウンターフックに対し、本命の空を切るように速く重いカウンター左アッパーを繰り出し、アリスターの顎を粉砕。アリスターは魂を抜かれた様にキャンバスに倒れこむと、そこにさらに重いパウンドを一発落とし込んだところで試合はストップ。
この衝撃的かつ芸術的とも言えるKOシーンはその年の、SPNやMMA Junkie等の主要な格闘技メディアのノックアウト・オブ・ザ・イヤーを総なめにし、一躍彼の名を全世界の格闘技ファンに知らしめた。
タイトルショット 〜人類最強の頂きへ〜
偉大なヘビー級ファイター、アリスターを倒し、そして3戦連続ド派手なKO勝利を魅せたガヌーのタイトルショットに異議を唱える者など居るはずもなく、なんとアリスターとの試合から、たった一カ月半後の2018年1月20日。スティーぺ・ミオシッチとのUFCヘビー級タイトルマッチが組まれる。
ミオシッチは身長2mを越える恵まれた体格を持っており、その長いリーチから繰り出されるフックやストレートで20勝中15KOと、破壊力抜群の選手だ。
しかもレスリングのバックボーンがあるだけに、決してグラウンドが苦手な訳ではないし、当然タックルディフェンス能力も高い。
つまり、この試合を立ち技かグラウンドのどちらで展開するかは、ミオシッチがイニシアチブを握っているとも言える。
基本的に謙虚で、これまでも相手選手にほとんど侮辱的な言葉を発した事の無いガヌーは、今回も落ち着いた様子で、試合直前のミオシッチと同席でのESPNインタビューに対し
「僕が一番だと信じている。技術もパワーも、モチベーションでもね」と穏やかに答え、ミオシッチの印象を聞かれると
「彼は素晴らしい、すごいファイターだ。彼も全力で来るだろうから、僕も彼と全力で戦い、この力を証明するよ」
と相手をリスペクトしつつ、試合への意気込みを語る。
それに対しミオシッチも「彼は素晴らしい選手だし、戦いも美しい、そしてとてつもなくタフだ」とにこやかにガヌーを称えると、そのあまりに穏やかな空気に司会者が困惑し、「対戦相手を前に、何でこんなに穏やかでいられるんだ?」と疑問を投げかける。ミオシッチはそれに対し
「だってこれはただの試合の宣伝だからね。土曜の夜にこの素晴らしいタフガイと戦うってだけだよ」と答え、ガヌーも「奇妙に思うかもしれないけど、彼と同席出来た事や試合が出来る事にはとても興奮しているよ。でも彼が言う通りこれはただのプロモーションなんだ」とミオシッチに同意した。
両者最後まで穏やかな空気でインタビューを終え、ある意味非常に珍しい、逆に刺激的なインタビューだったとも言える。
穏やかな2人ではあったが、熱い闘志を内側で燃やしつつ、2018年1月20日、ガヌーにとってはベルトを懸けた、ミオシッチにとっては3連続防衛という記録がかかった、両者にとって負けられない一戦が始まる。
1R序盤から激しく打ち合い、息を呑むような打撃戦となる。ガヌーのヘビーショットが何度かヒットし、確実にミオシッチにダメージを与えていく。打撃では劣勢と見てミオシッチはゲームプランを変更し、ガヌーがパンチを放つたびに、テイクダウンを狙う。ラウンド中盤にテイクダウンを取ると、ミオシッチはサイドポジションから、腕十字を試み、その後チョークを狙った。
2R、3Rとミオシッチは終始テイクダウンを狙い、グラウンドを支配し、パウンドや頭部への膝でダメージを与えていく。
4Rになると、両者とも明らかに疲れていたが、ガヌーはそれ以上だった。これまで殆どの試合を短時間で決めて来たガヌーは長期戦に対応出来ていないようだ。ミオシッチは早い段階でテイクダウンを決め、パウンドの雨を降らせていく。最後までペースを握られ続けるガヌー。過酷な環境で鍛えられたメンタルを持つ彼の闘志は、決して消える事は無かったが、反撃の糸口が掴めず、ただただ耐えるだけだった。
試合は判定となり、明らかに試合を有利に進めていたミオシッチに0-3のスコアで完敗となった。
試合後の会見でガヌーは沈痛な面持ちで「僕は、MMAを始めてからの四年間で、このスポーツの事を何も学んでいなかった」と語りつつも、「これから自分が学ぶべき沢山の事柄を発見したよ。この試合から学んだ事は本当に大きい」とこの敗戦を前向きに捉える姿勢を示した。
UFCとの確執
この試合の後、ガヌーは、自身を拾ってジムに住まわせ、MMAの世界に導いてくれたトレーナー、ロペスと些細な事で仲違いし、MMAファクトリーを離れた。
これを機に、本格的にグラウンド技術を学ぶため、レスリング、柔術の達人が集結するエクストリーム・クートゥアでのトレーニングを始める。
この事実はUFC会長のダナ・ホワイトに非常に悪い印象を与えた。
ホワイトは「ガヌーにエゴが芽生えた」と批判し、彼の恩師に対する態度を諫めた。
半年後、ミオシッチへの再挑戦を懸けてデリック・ルイスと対戦。
ルイスも20勝中17KOという筋金入りのストライカー。そしてその戦歴通りに彼の気性も非常にアグレッシブで、公開計量時にガヌーと向き合ってファイティングポーズを取っている間に興奮し、ガヌーを突き飛ばすというアクシデントも起きた。だがそんな時も、穏やかなガヌーは笑顔で「大丈夫、大丈夫」と両手を挙げてジェスチャーした。
試合前は余裕を見せたガヌーだったが、レスリングを学び始めてまだ日も浅く、実戦への適用が難しかったか、これまでの様になかなかアグレッシブな動きが出来ない。一方のルイスも、ガヌーの一撃必殺のアッパーを恐れてか、前に出てこない。最初から最後まで“様子見”で終わったこの試合は0-3の判定でルイスに軍配が上がり、ガヌーのキャリアで初めての連敗となり、退屈な今回の試合内容も重なって、一気にタイトルショットが遠のいた。
本来、生真面目な性格のガヌーはこの敗戦を深刻に受け止め、試合から3日後、不甲斐ない試合をした事への謝罪文を自身のインスタにアップした。
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「私は前回のパフォーマンスに誇りを持てない。前回の試合での恐怖を引きずってしまった。ファン、コーチ、チームメイト、家族、友人達が感じているフラストレーションや憤る気持ちもよくわかるし、本当に申し訳ないと思っている。もう二度と皆さんを失望させません。今、僕にできることは、試合の中で自分強さを証明し、再び皆さんに誇りに思ってもらうことです」
非常にガヌーらしい謙虚な言い回しで、その想いを表現し、このガヌーの投稿に多くのファンから
「謝る事なんて無いよ」「今でも誇りに想ってる」と励ましのリプライが集まった。
だがこれに追い打ちをかけるように、ダナ・ホワイトがガヌーに対し痛烈な言葉を浴びせる。
「ヘビー級王者になると信じていたのに、彼は完全に自分に負けてしまった。本来の彼なら決してとらないような行動をとってしまったんだ」と、ルイス戦のガヌーの戦いを批判し、
更に「彼が、もう一度タイトルへの道に戻るためには、個人的な事も仕事も、やらなければいけない事が沢山あるようだ。」
と、ロペスとの確執も含めたニュアンスでガヌーを批判し、タイトル戦線から外す事を匂わせる発言まで飛び出した。
絶望の淵に立たされるガヌー。この時期は、かつてフランスに来たばかりで、路上生活を強いられた時よりも辛かったと後にガヌーは語っている。
逆境からの復活、“ザ・プレデター”の再来
苦悩の日々を送るガヌーだったが、いつまでも塞ぎこんでは居られない。
もう一度観客を熱狂させ、自らの強さを証明し、タイトルに挑戦するという強い覚悟を持って、ガヌーは2018年11月25日、カーティス・ブレイズとの再戦に挑む。
この試合で、ガヌーはインスタグラムで宣言した通り、オクタゴンの中で自分の言葉を証明する。
落ち着いた立ち上がりを見せた第1R。ブレイズが不用意に出した左ジャブに、ガヌーの稲妻の様なカウンターオーバーハンドフックが一閃。「ゴツン!!」という音と共に、キャンバスに倒れこむブレイズに追撃に向かうが「コイツ、大丈夫か?」思ったのかどうか、一瞬ためらいを見せる。
しかし、レフェリーが止めないと見るや猛追撃を開始。まったく反撃できないブレイズを見てレフェリーが試合をストップし、試合開始わずか45秒で鮮烈な復活KO劇を演じた。
キャリア初の連敗を経験した2018年、ストリートで野宿をしていた時代よりも辛かったと言うこの一年だったが、最高の勝ち方で締めくくる事ができ、ガヌーのタイトル再挑戦への道に光が見えて来た。
次戦では、UFC元ヘビー級チャンピオンで、2年7か月ぶりのUFCでの試合となる、ケイン・ヴェラスケスとのカードが組まれる。
ヴェラスケスもガヌー同様、非常に落ち着いた選手で、試合前のインタビューでも
「彼は手数が多く危険なので、注意しなければならない。まずは彼の感触を確かめたい。無謀なことはできない……」
とガヌーへのリスペクトと警戒を見せ、
「身体が持つ限りは戦うよ。家族を養うためにね」と穏やかに話した。
一方ガヌーも、ヴェラスケスへのトラッシュトークはせず、
「初めての連敗をしたからと言って、自分を疑う必要はない。ただ、自分に厳しくはなったよ」
と、よりハードにトレーニングしている事を明かし、
「この試合に勝って、タイトル再挑戦できたら嬉しいよ。ヘビー級のトップに立つことが常に僕の目標なんだ」
と、タイトルへの変わらぬ想いを語った。
落ち着いたインタビューとは対照的に、試合は壮絶な結末を迎える。
立ち上がりは蹴りを中心に距離をとって戦うヴェラスケス。ガヌーが手を出そうとすると、一瞬タックルに行こうというモーションを見せる。これに素早く反応したガヌーがタックルをいなし、さらに突進してくるヴェラスケスの顔面に、カウンターの左フック。大きなモーションでは無いが、ただでさえ世界最強の拳なのだから、ヴェラスケス自身の突進の勢いも加わると相当な衝撃だろう。ヴェラスケスはキャンバスに倒れこみ、ガヌーがすかさず強烈なパウンドを浴びせたところで試合はストップ。
前回以上の秒殺、試合開始26秒でのKOで会場は阿鼻叫喚となった。
試合後、マイクを取ると
「この勝利は、先日亡くなった叔母に捧げたい。みんなに約束するよ、前に言ったように、僕は戻ってきたんだ。。これからまた沢山会えるだろう。楽しんでくれ。」と“ザ・プレデター” の再来を宣言。そして
「私はこの試合を3年間待っていたんだ。カインのような選手と戦って自分を証明したかったし、その機会を持てて本当によかったよ」とヴェラスケスへのリスペクトも忘れなかった。
届きそうで届かぬタイトルショット
元ヘビー級チャンピオンに完勝し、本来なら次戦でタイトル再挑戦となってもおかしくなかったのだが、事情はやや複雑になっていた。
もし王座に今もスティーぺ・ミオシッチが座っていれば、そのままリマッチとなったかもしれないが、ガヌーがデリック・ルイスに敗れた日と同日の2018年7月7日、ミオシッチはタイトル防衛戦でダニエル・コニーにまさかの1RKOで敗れ、王座陥落していたのだ。
一度ダナ・ホワイトに嫌われると簡単には上に上がれないと言う事情もあるとは思うが、それに加え、ヘビー級タイトル戦線はミオシッチとコニーのリマッチへの期待が大きく、その決着がつくまでガヌーが割って入る隙は無かった。
しかし、そんな状況にもガヌーは不満一つ漏らさず、一つ一つ試合を重ね、観客の支持とダナ・ホワイトの信頼を回復していく。
2019年6月29日に行われた次戦では、ガヌーが敗れたルイスに勝っている、ジュニオール・ドス・サントスと対戦。序盤はサントスの徹底的なロー攻めに苦戦するが、強引に距離を詰めての右フックでサントスをダウンさせ、後ろからの強烈なパウンドでTKO勝利。
この試合でガヌーはパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを獲得した。
“プレデター” 完全復活を決定づけたガヌーだったが、目の前に見えるはずのタイトルが更に遠のいていく。
同年8月に元王者スティーペがコーミエを破り、王座を奪還。非常に拮抗した両者の激戦は大きな盛り上がりを見せ、UFCはこの2人の3戦目を決定し、ガヌーは宙ぶらりんの状態となってしまったのだ。
対戦相手のいないガヌーは、なんと一年近くも放置され、ようやく試合が組まれたのは2020年5月9日。迎えたのはデビューから10連勝9KO、まさに破竹の勢いでUFCでも連勝を続け、しかも全試合ではアリスター・オーフレイムをKOで破ると言う大金星を挙げ、一気にタイトル候補に躍り出た新星ジョルジーニョ・ホーゼンストライクだ。
ジョルジーニョは絶好調の中、試合前のインタビューで
「俺はファイターだ。何年も戦ってきている。大男をノックアウトする事など慣れっこだし、何の不思議も無いよ。ただの血と肉の塊だろ?俺にこれから食われる血と肉の塊がそこにいるだけだ。他に何かあるか?」
と、まさに唯我独尊。“捕食者”を逆に喰ってやると宣言する。
だが、ジョルジーニョの余裕も、チャンピオンへの夢も、一瞬でミネソタ州の夜空に吹き飛ばされてしまう。
試合序盤は、ジュニオール・ドス・サントスのように単発ローキックで攻めて来るジョルジーニョ。そんな落ち着いた試合展開を、ガヌーの一発のオーバーハンドフックが切り裂いて、一気に試合が動き出す。そのオーバーハンドを皮切りにガヌーは猛ラッシュ。
カウンターを狙いたいジョルジーニョだが、ガヌーの圧力に押し負けて後退する。勢いよく前に踏み込みながら放ったガヌーの左フックが、後ろに下がるジョルジーニョに炸裂。ジョルジーニョは金網にもたれかかるように倒れるが、ガヌーはさらに強烈な左フックをジョルジーニョの顎に喰らわせる。
完全に意識がふっとんだジョルジーニョは、金網にもたれたまま、しばらくの間まるで人形のようにピクリとも動けなかった。
試合後、ガヌーは
「タイトルマッチであろうとなかろうと、僕はファイターだし、自分の持つ力を表現するだけだよ。試合は楽しかった。ノックアウトを狙ってた訳じゃないんだ。KOを狙っていてもあまり上手く行かないからね。彼が僕を指名した時、僕は『彼は自分が何をしているのかわかってるのか?』と思ったよ。彼はUFCに来たばかりで、何度かKOはあったけど、印象的なものはなかった。でも、誰が指名しようと気にしないけどね」といつものように淡々と語った。
3年越しのリベンジ
そして3か月後の同年8月15日、スティーぺがコーミエを抑えてタイトルを防衛し、ついにスティーぺvsコーミエ3部作は完結を迎えた。
いよいよスティーぺとのリマッチが実現するかと、ガヌーの胸は高鳴ったが、ミオシッチ陣営からは翌年3月までリマッチは出来ないとの返答が。
さすがのガヌーもこの返答に対し
「8月以降、問題ばかりが続いているよ。12月くらいには戦えるかと思っていたら、どうやらスティーぺは3月まで戦わないそうだ。僕が出来る事は、ただ3月まで試合を待つことだ」
とインタビューで語り、さらに
「僕はとても複雑な立場にいる…今まさに全盛期なのに、戦わずに時間を浪費している、だからちょっとイライラするんだ」
と憤りを露わにした。
紆余曲折ありながら、ようやくミオシッチ陣営の言う通り、2021年3月27日、両者初の対戦から実に3年もの時を経て、ガヌーvsミオシッチの再戦が行われる。
ここに辿り着くまでの長い道のり、乗り越えて来た沢山の壁を思い出しながらガヌーは
「すべての面であの時とは違う」
と語り
「あの試合までは、5ラウンド戦うというのがどんな感じかわからなかった。あの時は経験が足りなかったんだ。スティーぺに負けた夜は、ハッピーではないけど、自分に出来る事が見つかって満足している部分もあったんだ。目的が出来たら、僕はちゃんとそこに辿り着ける」
とあの敗戦の夜を振り返った。
そして「不安はもうないよ。今回、より良い準備ができたし、経験も積んだ。レスリング、柔術、そして打撃にも力を入れてきたので、技術的にはかなり向上したと思うし、このスポーツではまだまだ、出来ることが沢山ある。僕は34歳だけど、このスポーツではまだ若いと思っているし、まだまだ伸びしろはあるはずだ」
と、自身の大きな成長を確認し、今後のさらなる成長への意欲も見せた
そしてついに、3年越しのリマッチが始まる。
試合は落ち着いた立ち上がりを見せたが、開始1分半を過ぎたころ、タックルに来たスティーぺにガヌーは素早く反応して、後ろから組みつき、そのまま倒してパウンドの連打を浴びせる。スティーぺは何とか立ち上がって離れるが、この組み合いで、如何にガヌーのタックルディフェンスが進化したかが身に染みて解り、迂闊にタックルにいく事が出来ない。その後はにらみ合いが続き、1R終了。
2Rも序盤はお互い思い切った攻撃が出来なかったが、40秒過ぎ、一瞬の踏み込みから放ったガヌーの、ヘビー級のパンチとは思えない程の高速ワンツーが、スティーぺに炸裂。スティープは一旦崩れ落ちるも、ガヌーの追撃のラッシュを受けながら根性で立ち上がり、この状況で前に出てパンチを放つ。一瞬ガヌーは後退するが、スティーぺが更にもう一発と前に出ると、ガヌーは絶妙なタイミングで高速左フックを合わせて顎を粉砕。スティーぺが膝から崩れ落ちると、レフェリーが止めに入ろうと飛び込むが、ガヌーは気づかない。もう一発、強烈なヘビーパウンドを叩きつけたところで試合は止められ、ガヌーは3年間、暗闇の中で必死に追いかけ続けた、ヘビー級のベルトをついにその手に掴んだ。
試合後にガヌーは「なんて言ったらいいのか、言葉が見つからない」と言葉を詰まらせ
「僕が若い時に、自分自身と交わした約束を、今果たした」と、短かくとも、重みのある言葉で喜びを語った。
その後、カメルーンにチャンピオンベルトを持ち帰ったガヌーは、母国で熱烈な歓迎と祝福を受ける。首都ドゥアラで開催された歓迎式典では、
「私は皆さんに王者のベルトを持ち帰ると約束しました。このミッションが達成できたのは、皆様の応援のおかげです」
とガヌーらしい、謙虚で心の籠ったスピーチで国民に感謝の気持ちを伝えた。
懐かしい再会や久々のバカンスをゆっくり満喫したガヌーは、約一か月後に帰国し、トレーニングを始める。
新たな脅威
ガヌーが王座の座り心地を満喫している間に、また新たな脅威がヘビー級に生まれていた。
その名もシリル・ガーヌ。フランス人では珍しい、ムエタイをバックボーンに持つ選手で、ムエタイ13戦全勝、そしてMMA9戦全勝という、とんでもない戦績を引っ提げて、ヘビー級のベルトに急接近している男だ。
UFCは元々、同年8月にガヌーとデリック・ルイスを再戦させたかったようだが、ガヌーは帰郷から時間が経っておらず、準備期間が短すぎるとして断った。
するとなんとUFCは、ガヌーが王者になってわずか数ヵ月しか経ってないうちに、ヘビー級暫定王座のタイトルを作り、8月にデリック・ルイスと前述したシリル・ガーヌのヘビー級暫定王者決定戦を強行した。
この試合で鮮烈なKOで勝利したガーヌがUFCヘビー級暫定王者となり、2022年1月22日、名目上は2人のチャンピオンが戦う「王座統一戦」が行われる事になった。
実は元チームメイトだというガヌーとシリル。試合前会見でもお互い再会をにこやかに喜んで向き合い、拳を軽く合わせる。
インタビューでシリルは
「これは本当にクレイジーなことなんだ。MMAを始めてわずか3年で、自分がやってきた事の結果を出し、元チームメイトのフランシスと対戦できるなんて、明日が待ちきれないよ」と穏やかに話し
ガヌーは
「自分の王座を守る事、そして僕がチャンピオンだって事を、衝撃的なノックアウトによって皆に思い出させることが大事だ」と短く語った。
シリルはヘビー級ながら、ムエタイ仕込みの軽やかなフットワークを使い、相手の攻撃やタックルをいなすのが得意な選手で、なんとタックルディフェンス率はこの日まで100%。いくら一撃必殺の拳があるとはいえ、それが当たらなければ勝利には繋がらない。ガヌーはシリルを捕まえる事が出来るのか。
そして元チームメイトの、ヘビー級チャンピオン同士が拳を交える、注目の統一王座決定戦が始まった。
開始早々、シリルはタックルに行くが、ガヌーはビクともしない。立ち技での戦いとなったが、シリルはまるで蝶のようにオクタゴン内を飛び回り、ガヌーの攻撃をひらひらとかわしていく。
2Rに入っても、縦横無尽に駆け巡ってガヌーを翻弄するシリル。ガヌーはグイグイ距離を詰めようとするが、射程外から変則的に繰り出される前蹴りやミドルキック、鋭い踏み込みから出されるワンツーをコンスタントに喰らってしまい、なかなか距離が詰められない。
だが、3Rに入り、ガヌーが勝機を見出す。シリルが放った右ハイキックをすくい上げ、強烈なボディスラムでテイクダウン。サイド、マウントポジションからバックを取ってパウンドの連打。しかしシリルも並大抵の選手ではない、激しいガヌーの圧力の中で強引に立ち上がる。ガヌーはラウンド後半にもテイクダウンを取り、初めて有利にラウンドを進めた。
完全に試合のプランを変更したガヌーは、4Rでも身体を器用に回転させてシリルを寝かせ、なんとか立ち上がったところを強引に持ち上げて再びテイクダウン。“ザ・プレデター”の怪力にシリルは全く太刀打ちができない。
だが最終Rでシリルはガヌーの足をロックし、最後の抵抗を見せる。ガヌーは辛くもこの危機を脱し、そこからはグラウンドを支配し続け試合は終了。勝負の行方は判定に委ねられる。
前半はシリルがリードしていたが、後半はガヌーがテイクダウンを何度も取り、グラウンドを支配していた事も評価され、3-0でガヌーが勝利。
激戦を制したガヌーは
「彼がタフな相手であることは間違いないと思っていた」
と語り
「彼が最後まで持ちこたえたのには驚いた、すばらしい選手だ。コーチがいつも言っていたように、落ち着きを保つことに集中したよ。自分を信じて、彼を深追いしないようにね」
と、いつものように対戦相手にリスペクトを示し、冷静に今回の勝因を語った。
さらに、実はこの試合直前に流れていた「ガヌーは怪我をしているのでは?」という噂についても言及する
「この試合前にヒザを痛め、靱帯が完全に断裂した。一度はこの試合を諦めたいとも思ったが、やはりそれは出来なかった。この試合は、僕が王者であることを皆に思い出させるチャンスだったからだ」
かなり重度な膝の怪我で医者からも試合のキャンセルを勧められていたほどだったという。その状態でこれだけ壮絶なファイトをするのだから、この男の底力は想像を遥に超えているようだ。
その世界最強の拳に全てを懸けて戦っていると思われた“ザ・プレデター”の思わぬ進化に、観客もアナリストも驚かされた結果となったが、実質まだ数年しかMMAを経験していないガヌーは、これからまだまだ成長し、我々を驚かせてくれそうだ。
次は一体誰がこの男に挑戦するのか。
実はミオシッチ戦の後、ライトヘビー級の絶対王者、ジョン・ジョーンズが「レッツゴーベイビー(やり合おうぜ)」とツイートし、新王者ガヌーとのヘビー級デビュー戦を希望していることを示唆した。
それに対してガヌーは「いいね、やろうよ」と返事を返している事から、今後この夢のカードが実現する可能性もある。
これからも“ザ・プレデター” フランシス・ガヌーからはまだまだ目が離せない。
フランシス・ガヌー選手の知りたいトコ!
ガヌーに彼女は?
ガヌーのカメルーン時代やフランスへ渡った頃の情報は星の数ほどあれど、彼の恋愛や結婚に関する記事は全くと言っていいほど出てこない。ガヌーは自分の私生活を殆ど公にしない事から、実は交際相手はいるが一切公表せず、イスラエル・アデサニヤのように、結婚と同時に公表するのでは無いか?との見方もある。常に発言にも気を配り、関わる人にリスペクトを示すガヌーならば、彼女のプライベートを尊重して秘密を厳重に守っているとしても何ら不思議ではない。
いずれにしろ、ファイターとしてだけではなく、人間としても多くの尊敬を集める彼のハッピーな姿をいつか見届けたいと思う人も少なくないだろう。これからも彼の動向に注目していきたい。
映画出演で共演者が大興奮!
2021年5月19日公開の映画「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」に敵の兵士役で出演し、同映画に出演したサン・カンと激しいアクションシーンを演じている。サンカンは「僕はUFCのファンで、本物のファイターと一緒に撮影して、彼の動きを目の当たりにでき、彼からいろいろ学ぶことができる機会にとても興奮した。実際には1秒で僕を倒すことができるようなファイターと1対1で喧嘩できる機会に恵まれて大喜びだった」と、その時の興奮と喜びを語っている。
憧れのタイソンと対面
元々はマイクタイソンに憧れて、ボクシング選手を夢見ていたガヌー。ミオシッチとのタイトル戦で勝利後にそのレジェンドと対面。
直々にボクシングのテクニックを伝授される動画がアップされている。
ガヌーのボクシングへの憧れは未だに色あせていないようで
「いずれはボクシングをやる。僕のキャリアで必ずやらなければならないんだ」
とこの対面中に語り、
「僕の本当の夢は有効な芸術にあって、MMAが大好きではあるが、ボクシングじゃないと満たせないものがあるんだ」とボクシングへの情熱を語る。
前述したジョン・ジョーンズがローカルリングとは言え、元ライトヘビー級王者である事から、いずれ彼と試合をしたいという思いは強いようだ。だが、肝心のジョーンズがUFCと折り合いが合わず、すぐにそのカードが実現とはいかなそうだ。
まとめ
壮絶な幼少期、そしてフランスへの越境を経てMMAの世界に降臨した“ザ・プレデター”。 彼の生真面目で、驕らぬ性格から見ても、今後も弛まず鍛錬を続け、さらなる進化を遂げる事は間違いないだろう。
チャンピオンの入れ替わりが非常に速いこのヘビー級で、どこまで防衛記録を伸ばしていけるのか、彼にはミオシッチの持つ防衛記録を塗り替え、レジェンドになる素質は充分にある。
最強の拳と実績、そしてすばらしい人間性を兼ね備えたレジェンドはきっとカメルーンの、いやアフリカ全土の英雄となるだろう。
いつか自分も大舞台へと、夢を描くアフリカの子ども達のためにも、これからも“ザ・プレデター” フランシス・ガヌーをみなさんと一緒に応援していきたい。
※アイキャッチはUFCの公式HPより引用